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「ローカルガストロノミー」イベントレポートno7

最終日は「発酵と味覚のワークショップ」を開催した。また「発酵と酵母の可能性」についてゲストに話していただいた。秋田県は日本随一の発酵文化を誇っているため、発酵文化が根付く湯沢市から日本の発酵の価値を見出す試みをした。


最終日は160年もの歴史を誇る石孫本店で開催した。石孫本店の離れを見学し、離れの歴史について石孫さんに説明いただいた。その後、石孫本店で作られている味噌の特徴についてお話いただき、食べ比べを通して味噌の味の違いを体験してもらった。歴史ある石孫本店で開催したことに意義があったと思う。店に入った瞬間味噌や醤油の香りが漂っていたこと、また歴史ある建物の作りから異空間を感じたことから参加者一同圧倒されていたと感じた。

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石孫本店:
石孫は安政二年の創業以来、正真正銘の手造りを続けるために、現在も明治・大正期に建造された蔵を仕込の場として使い続けております。伝統を後世に残すことも仕事のひとつと考え、古来の手法にこだわって参りました。正直、効率は良くありません。早く・大量に…という時代の流れにも逆行しておりますが、最先端の機械とは違う不思議を、蔵人が五感を研ぎ澄まし、肌で感じ、自然の力を借りながらも直接手を掛けて育ててこそ「手造り」の良さ、美味しさをお伝えできると信じ、日々努力しております。


そんな石孫本店さんで発酵食の可能性を追求する「味覚と発酵のワークショップ」を開催した。

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立命館大学食マネジメント学部で味覚の研究を行う和田教授とコラボレーションをしてワークショップを行った。はじめに味覚についてレクチャーしていただいた。「味蕾ではどう味を感じているのか?」「基本味の定義とは?」「うま味の歴史」など、味覚の基本情報とうま味について様々な専門知識を学んだ。

その上で、うま味の相乗効果を体験してもらうために、実験を行いながらレクチャーを行った。

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7つのカップと1つの食材を準備し、それぞれのカップに「1グルタミン酸 2イノシン酸 3塩 4鹿スープと塩 5鹿スープと味噌 6シナモン 7レモン」を注ぎ、和田教授のレクチャーに沿って順番に味見をしていった。最初に、カップに入ったうま味(グルタミン酸・イノシン酸)の液をそれぞれ味見した後、ふたつを混ぜて味見をすると、うま味の相乗効果によって味が変化した。また4番と5番はそれぞれ鼻をつまんで味見をした後、その後に香りをかぎながら味見をした。鼻をつまむことで香りを遮っていたのだが、香りがあると無いとでは味に大きな影響を与えていたことから、「味わう」ためには香りが必須であるように味覚は複合的であることを発見した。このことから、食事は五感を通して行われるものだと実感したことが印象的であった。同様に、チョコレートを鼻を摘みながら食べるとチョコレートの味はしないが、鼻を塞がずに食べるとチョコレートの味がすることを体験したことは、舌で感じる味覚と鼻の奥で感じる嗅覚は別の感覚であることを実感させられた。様々な感覚を同時に働かせて味わうことで風味が増すという体験をしたことが印象に残っている。
これらのレクチャーを踏まえて、この後「味噌+〇〇で新しい匂いを作る」ワークショップを行った。食材は、「石孫本店の味噌8種類、サクラフレーバー、スパイス(コリアンダー、クミン、ターメリック)、ヒノキ香料、ペッパー」などを準備し、これらの食材を自由に組み合わせることによって新しい匂いを創り出そうというものだ。ゲストの方たちに食材と香りを調合してもらい、作った新しい匂いの中で一番革新的な匂いを発表してもらった。

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発表後、作った匂いを参加者で匂いを嗅ぎ合った。参加者のシェフからは、「このワークショップを行うことで新しい香りを発見できて大変有意義だった。匂いと同様、新しい味を作るプロセスにも役立つ。」と好評をいただいた。
発酵食の風味が新しい匂いを作り出すのではないか?また新しい味覚体験を作る材料となるのではないか?と、大いに期待が高まった。
同じ味でも香りのある時とない時では味の感じ方が違うように、一つのものだけでなく複数の味や香りが組み合わさった時の新しい発見を純粋に楽しむことができた。私たちは普段の食事でも、香りを楽しんだり、調味料の組み合わせでを変えることで調合を楽しむことを行っている。ただ普段では香りや見た目、味などを別物と捉えるのではなく、すべて重なった状態を見ている。その状態では「美味しくなった」という現象はどこから来ているのか、またそれは何が一番の理由なのか、などが曖昧なままだ。今回はそれを純粋に一つずつ分けて感じることで、新たなものを発見することができた。




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