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⑳強制送還

いま思えば、精神的な不安定さとは対称に、仕事ではそこそこの成果をあげ、信頼を得ることができていたように思う。しかし自己評価は低く、過食はだらだらと止められずにいた。嘔吐はなるべく我慢するようにしていたが、それでも月に1,2回は吐いていた。

過食症が酷かったのは2~3年だっただろうか。私の内臓がついに限界を迎えた。ある日、仕事中に私はひどく咳き込み、その瞬間、胃の裏辺りがひどく痛くなって血を吐いた。気持ち悪い。周りにいた同僚が大声で何かを叫んでいる。しかし私の意識はどんどん遠のいていった。目の前がどんどん暗くなっていき、床に倒れ込む瞬間、私は思った。「あー私死ぬんだ。もう終わりにしてもいいんだ。やっと全てのしがらみから解放されるんだ」

自分に罰を与える感覚だったり、自分の体重をコントロールできる感覚だったり、そういった自分だけの世界の中で生きることに魅了されて始めた過食嘔吐だったのに、いつしか過食嘔吐に支配されるようになっていた。不安になるから食べ、食べた自分を罰するために吐き、吐いてしまった自己嫌悪で食べる。吐くために食べるのか、食べるために吐くのか。もはや終わりなどないのだ。

度重なる嘔吐により、私の食道と胃の境目は裂けた。内視鏡により止血できたが、嘔吐すればまた裂ける可能性があるので、しばらく入院して様子を見ることになった。しかし過食や嘔吐の心配はなかった。目が覚めてもベッドから一歩も動くことができなかったのだ。過食するどころか食事を摂ることもできず、トイレにも行けなかった。もうどうでもいい。張りつめていた糸がプツンと切れた。そんなかんじだった。仕事は続けられなくなり、退院後は実家に帰る以外の選択肢はなかった。

サポートなしでも生きていけるので大丈夫です。もしサポートしていただけるなら、自分へのご褒美として、美味しいものを飲んだり食べたりします(人´3`*)~♪