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さあ、おたまとそしてフライパン

恋をすると食欲が落ちるらしい。
最近運動を本気でへとへとにするまでしているので、おなかが空いて仕方がない。
しかし、豆腐だのこんにゃくだのレタスだの可愛らしいものでおなかを満たすのは結構つらい。
皮付きのからあげや大盛のじゃこごはん、野菜ならさつまいもやじゃがいも、デザートにはパフェとよもぎ餅をいただきたい。
その欲望をひたすら我慢してオニオンスライスやサラダチキンをかじる。
きっとそんなことは長続きしない。我慢の限界になったら、わたしはみはしと千疋屋とモスバーガーをはしごしてしまうだろう。
根本の欲求の矛先を変えられるならば、恋愛は悪くない手段だ。
問題は『恋を何年休んでますか?(古いドラマのタイトル)』状態であることだ。
大学生のうちに気の合う人と結婚し、生活が合わなくて最近別れ、その後はパートナーはいない。
そもそも付き合う理由は「お互い結婚をしたい」からであって、惚れた腫れたではない。
一人で生きると死にそうな二人が気も合うし、一緒に暮らしはじめたわけでそこに恋愛感情はない。
今までも告白されて、趣味が合うから付き合っただけであって、恋愛というより「性行為する特別親しい友人」としてパートナーを見ていた。
つまり「休んでますか?」ではなく「起きてください」という状態である。

高校生くらいからずっと恋愛マンガや恋愛ソングをきいてきたし、丁度多感な時期は純愛ブーム。
いつか私も素敵な殿方と出会って恋愛するものだと、美容室で「セカチュー」を読み、オカッパにされながら思春期にありがちな素敵な想像していた。
初めて男性と付き合うにあたり、三十冊近く恋愛に関する本を読み、その後も恋愛コラムやエッセイをネットで読んだり(彼を喜ばせる7つの方法とか、彼女に幻滅!10の瞬間とか)、恋愛する準備に余念がなかった。

しかし、お付き合いというのは始めてみると「喜ばせる7つの方法」より「パートナーがあげっぱなしにした便座に気がつかず、おしりがはまったときの正しい脱出法」や「バレンタインにもらったチョコをみせてきた時の良い反応(未だに正解が分からない)」など、喜ばせるために、手料理やマッサージするみたいな小手先のスキルではなく、目の前の様々な問題を解決する能力を必要とされる人間関係の場であり、無給感情労働だった。

婚活に関する本に「女性は減点方式だからいけない」と書いてあった。
しかし、恋愛感情がない場合、問題解決と無給感情労働を繰り返すと「まじだりー(ぐでたまボイス)」になるのは時間の問題であり、その精神状態の時に「加点しろ」とか「減点はだめ」といわれてもぐでたまフェイスになることしかできない。
成人した人間というのは、わたしにとって存在するだけで全て許せるほど可愛いものではなかった。

ああ、ハムスターなんてそこらへんでフンするけど可愛いからペットとして流行ったんだね、ハム太郎。
と、ろこちゃん(ハム太郎の飼い主)のようにひとりごちて、いくつかのお付き合いをやめた。
みんな良い人だった。ただ、恋愛感情というものが私にはなかったから、パートナーとしてやっていくのは無理だった。

恋愛をまずはフライパンとお玉を持って起こさなくてはならない。
その二つを使ってパンケーキを薄く焼いて「ほぼクラペット」「ほぼクレープ」と楽しんで、体重増やしてはいけない。

『いつかティファニーで朝食を』に書いてあった、周りにいる男性を既婚未婚パートナー有無を考えず、パートナーとしてどうか考えてみよ、というのをスクワットしながら試してみた。

私の方がうまくやれる可能性が多少あるとか、付き合った場合ステータスになるとか、趣味は合わなそうだがそれはお互いの範囲ですれば良く……のような「人付き合い」として考えてしまった。

だめだめだめだめ。

多分性行為の最中に問題はなさそう、この身長差はお付き合い中に何か問題あるかもしれない、そもそもこの人は女性に興味あるのかわからない、と次は「多分デートでするであろうこと」をクリアする条件で考えてしまった。

寮やシェアハウスや結婚生活など「違う環境からきた他者」と生活することが多かったので「共生」を考えることはできるが、ときめいたりキュンとしたりすることはできなかった。
なにか他に「恋愛を起こす」いい方法があれば教えて欲しい。

止まらない食欲を「きゅん」とする痛みで抑えたい。
そんな痛みも嫌いじゃないってnoteに書きたい。

今日のBGM『ペディキュアday』

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