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1116,まだ空虚

 頭の中だけで計画したせいで制作方法の手順をまちがえてしまったり、なかなかバイトが始められなかったりすることに対する嫌悪感が上昇していた日だった。自分から何かを話す気になれずごはんを食べるときも無口になってしまった。カツカレーセットのサラダのドレッシングが空虚な味に感じられた。

 午後の授業でアントニオーニの「欲望」が取り上げられた。ぼくはとても気に入っている作品で、2度目の鑑賞だったがやはりやばいな、と思った。何がやばいのかというと、脈絡のないように見えるそれぞれの謎のシーンにちゃんと込められたコンセプトが読み取れるということ、また最後のシーンにかけての没入感、目を見張る緊張感のうつくしさがだ。

 教室を出て、絵を描いていたちがう棟の教室に戻って、イヤフォンをして少し作業の続きをした。誰かが入ってきて喋っているようだけれど何も聞こえない。音量を大きくすると、その曲で今まで聞こえたことのなかった新しい音を発見した。

 そして図書館でロベール・ブレッソンの「たぶん悪魔が」を見た。何か、沸々とした静かな怒りが感じられる作品だった。映像がとてもきれいで、手元や足元しか映していないカットが印象的だった。「欲望」も「たぶん悪魔が」もなんとなく今日を過ごす気分に当てはまるものだったかもしれない。

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