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さんぽする 【95/1096】

ひまがあれば さんぽする
天気が良ければ
道はどこでも
なるべく長く歩けるところがいい
延々と 無になれるくらいの
距離が必要だ

たいてい出かけた先から
歩いて帰る
なにも考えず ただ歩く
そのうち自分の心の中から
悲しい気持ちがわいてくる
カツカツと歩く振動にゆさぶられ
じわじわと現れてくる
湯気がのぼるような
淡い儚さで
ふわふわ揺れてきれぎれに
感情が湧いてくる

誰かそばにいると
出てこられない感情
誰かのそばにいると
役割を果たすために
ほんとの自分の気持ちはフタをされる

ひとりの時間
ひとりでどこか
家でないところにいる時間が大事だ

コツコツあるく 進む
マスクのおかげで
泣いていても恥ずかしさはない
すれ違う人に みな
興味なんてない

空がきれいで空気が澄んで
気持ちがいい 
自然も
悲しみに寄り添ってくれる
夕暮れの川面に映る街頭がゆれる
濃い碧の川 
グラデーションの夜空に
馴染んでいく

しずかに悲しみを感じることが
いまは大事なんだと思う
日常を取り戻すことに
月日が力を貸してくれた
普通に暮らせるありがたさ
日々は進んでいく
自分の気持ちは薄く儚くしずんで
まるでないような気持ちになる

きみのいたことが夢のようだよ
ふしぎなほど記憶が淡い
あの日々が本当だったと
しずかな気持ちでないと感じられない
本当のことは自分の中にしまってある
たくさんたくさん
大切にしまってあるよ
家族の前では取り出せない
それぞれに受け取りや回復がちがうから
むやみに共有できないと学んだ

みんなそれぞれの進み方で
いろんな関わりを通して
自分なりに解釈していくのだろうね

わたしはあるくよ
あるいて少しずつ昇華してみてる
思い出して涙する
浄化する
それ以外は普通にすごすけど
忘れたって思わないでね
大切にしまってあるから
ずっとみんなきみを愛しているんだよ

今日もありがとう
冬さんぽ 新らたな趣味
きみのおかげだ