見出し画像

空想お散歩紀行 悪の造花が咲き乱れる夜

今宵は祭りの夜。
祭りとは、非日常を楽しむ一夜の夢のようなものである。
通りは色とりどりの光で溢れ、夜を昼よりも明るく照らそうとしている。
しかしそんな光とは裏腹に、道を歩く人々はどこか異彩を放っている。
男は黒のスーツやコートに黒の帽子を身に付け、まるで光を吸収しているかのようだ。
女達も、黒や赤のタイトなドレスに身を包み、こちらは光を浴びてより輝いて見える。
そんな怪しくも妖艶な表通りから少し離れると、そこは一気に暗闇。
そこからは何かがぶつかる鈍い音や、何かが
弾ける音がわずかに表通りにも聞こえてくるが、それを気にする者はいない。
表通りに並ぶ建物の中はさらに荘厳な世界が広がっていた。
どこもかしこも、豪華な食事や酒が山のように積まれ、男も女もギャンブルに興じている。むしろ酒よりもギャンブルの方で酔っているかのようだ。
一回のカードゲームで札束が宙を舞う。
中には金ではもはや満足できず、自らの命すらチップに換えて、狂った賭けのテーブルに乗せていた。
ここでは、一枚の紙幣よりも命の方が軽い場所。
それが、今宵ヴィラン・フィスティバル、悪役祭りの夜。
そう、「悪役」祭りなのだ。
ここに集まっているのは皆、普通の一般人だ。
ギャングの大物、そしてその女、という設定。
ファミリー同士の抗争が行われている、という設定。
ギャンブルで大金が舞い、負けた者は命で支払う、という設定。
誰もが悪役を演じ、楽しむ夜。されど互いに気を遣って、この悪の夜の雰囲気を壊すことなかれ。非日常の一夜限りの祭典はまだこれから深まっていく。

その他の物語
https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

この記事が参加している募集

私の作品紹介

つくってみた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?