鳩と金曜

朝、雨が降っていた。
すべてのアラームを無視して、結局昼過ぎまで寝てしまった。
網戸にカナブンが張り付いていた。
午後は晴れた。
頭痛がする。
気分は悪くない。

夕方、スーパーの帰り道で、道路の脇に鳩の死骸を見た。
車に轢かれたようで、無惨な形をしていた。
ピンク色の足だけが上を向いて固まっていた。
昨晩ちょうど川端康成の『禽獣』を読んだところだ。
極めて雑に言えば、小鳥がたくさん死ぬ話。
だから遺骸に余計に驚いた。
この作品は何度か読み返している。
好きと言えば好きだ。

日中はいよいよ夏の蒸し暑さに似てきた。
この家は海風が入るから多少涼しい。
夜はきれいな三日月。
玄関出たところの雑草があっという間に日陰を作る勢いで伸びていた。
散歩も暗くなってからが増えそうだ。
フナムシはどういう気持ちで生きているのか。
もしかするとゴキブリより気持ち悪いけれど、これにそこまで嫌悪感は覚えない。
臆病な生物だから捕まえるのも一苦労だろうが、捕まえたところで気持ち悪いし、いくら観察したり解剖したりしても、生きているフナムシの気持ちも死んだフナムシの気持ちも取り出せない。
だから結局踏み潰してみようかなくらいにしか思わない。
でも、踏み潰したりしない(というより素早すぎて踏めない)。
それに百歩譲れば、ごく微量の愛嬌があるし、さらに私には、どんなみみっちい生き物も妄りに殺す勇気はない。
夜間に口笛を吹けないのと同じに。
そういえば夕飯に食べたアジの漬け丼が美味しかった。
向こう岸の家の明かりに人影が動いているのが見える。
明日は土曜日。