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事業再構築補助金の都道府県別の採択率は、なぜ差があるのか、迫ってみた

前回に引き続き、今回もV-RESASネタになります。

事業再構築補助金は、企業の思い切った事業再構築に対して支援を行う中小企業庁の施策です。

特に今年はポストコロナ・ウィズコロナ時代を強く意識したものになっています。
中小企業診断士として、この施策に関わっている人も多いかと思います。

先日、事業再構築補助金の第1回公募結果が発表されました。

報告資料を見て、採択率(=採択件数÷申請件数)が都道府県毎にだいぶ異なることが気になりました

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都道府県でこれほどの差が生じた原因は何でしょうか。

都道府県別にコロナ禍における経済への影響を調べるといえば、なんと言ってもV-RESASの出番です。

そこで、V-RESASの数値データと採択率とを比較してみました。

なお、結果については、因果関係が逆だったり、無理矢理適用している面もあるかもしれませんが、ものは試しで挑戦してみます。

データを取る範囲は、2020年4月第一週から2021年3月最終週を対象として、その期間の平均値を比較対象としています。

V-RESASからダウンロードして集計したデータは以下の通りです。
数値データがとれるものに限定しています。

では、採択率と各種データの比較をしてみたいと思います。

緊急事態宣言下の地域から当該地域への訪問者の変化

前回のnoteでご紹介した指標です。
具体的には、緊急事態宣言があった以下の地域
栃木県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県
から当該地域への訪問者数について、
・2020年2月第1週の全訪問者に対する割合(コロナの影響が少なかった週)
・2020年4月から2021年3月までの全訪問者数に対する割合
この2つの増減(ポイント)を見てみます。
例えば、緊急事態宣言下の地域から訪問者が80%から70%に減った場合は、「-10」と表現されます。
なお、沖縄は緊急事態宣言下の印象が強いですが、2020年度だと対象ではなかったりします。

事業再構築補助金の採択率とともにプロットしたグラフは以下の通りです。

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縦軸は採択率、横軸は構成比の増減です。
一つの点が一つの都道府県に対応します。
横軸左に行くほど緊急事態宣言下の地域からの訪問者が減ったことになります。

採択率との相関係数は-0.02で、ほとんど相関はありませんでした。
事業再構築補助金の採択率は、人の移動状況と無関係のようです。


飲食店情報の閲覧数

「Retty」の飲食店情報のPV数について、2019年と2020年で週ごとに比較した情報です。具体的には、2019年と2020年の同じ週でPVが2割減ると、-20と表現されます。
今回は2020年度を通した平均値を取っています。

採択率とプロットしたグラフは以下の通りです。

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相関係数は0.47弱い相関がありました。
つまり、2019年からPV数が減少しなかった地域の採択率が高くなっています。
一見、不思議な結果です。仮説としては、
・「Retty」にアクセスが多い店舗は、テイクアウト、デリバリー、ECサイト活用などの下地が整っている。テイクアウトなどは事業再構築として認定されるため提案に具体性があった。
・コロナ禍でもPV減少を防ぐような飲食店は、よく練られている新規事業を提案しやすい傾向にあった
・そもそもPVは始めから少なくて減少分も少ない地域が、たまたま採択率が高かった
などが考えられます。

もちろん事業再構築補助金の申請企業は飲食店だけとは限りませんので確定的なことはいえません。
とはいえ、PVを減らした事業者が多い地域こそ事業再構築補助金で何とか回復してもらいたいと思うのですが、実際は逆になっているように見えて、なんともいえない気分です。

イベントチケット販売数

「チケットぴあ」の販売実績データから、イベントチケット販売数について2019年の同週比を求めています。
採択率とプロットしたグラフは以下の通りです。

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相関は-0.04ほとんどありませんでした。
グラフの横軸を見ても分かるとおり、チケット販売数は軒並み減少しています。100%近い減の都道府県もあり、悲惨な状況です。
そんな中、高知県と徳島県が検討しています。

求人情報数

エン転職、マイナビ、リクナビなどの求人情報数の2019年同週比です。
採択率とプロットしたグラフは以下の通りです。

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こちらの相関は-0.1でした。ほんの少しだけですが、求人が減った地域の採択率が高くなっているように見えます。

さいごに

今回は事業再構築補助金の採択率とコロナ禍の経済への影響をざっくり比較してみましたが、意外に相関がなかったり思っていたのと違う相関をしていたり興味深い結果でした。
まだモヤモヤしていますが、飲食店のPV数を落とさないことがコロナ禍の事業再構築に何の良い影響を与えているのか、引き続き考えています。

IT系企業に所属する企業内診断士です。