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2020年度診断士1次試験の結果でびっくりしたこと

2020年度中小企業診断士1次試験の結果が8/25に発表されました。合格された方、おめでとうございます。
さて、今年の結果でなんといっても目を引くのが、合格率が42.5%と非常に高かったことです。一昔前は20%台だったので約2倍ですね。

でも私がびっくりしたのは、辞退率の高さです。

診断協会では試験結果の統計資料を2013年度から公開しています。ここから1科目も受験せず、完全に辞退した人数が計算できます。
では、過去から振り返って、申込者に対する辞退率を見てみましょう。

(注)辞退率とは受験を申し込んだものの1科目も受験しなかった人の割合とします。また、診断協会の統計資料上の「1科目でも受験した方の人数」とは、免除申請した科目は受験した科目とカウントしない、と考えました。

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上のグラフの通り、2020年は辞退率が突出して高くなっています。

今年の1次試験は柔軟な運用がされていて、試験を完全に辞退すると、受験手数料が返還されます。また現状で科目合格している場合は、1年間、科目合格の有効期間が延長されます。


対象者は、感染者や濃厚接触者だけで無く、自分の所属する組織等からの自宅待機指示があった方など、条件は緩いものになっています。医師の診断書や各種証明書はなどは必要ありません。
以上の施策が辞退率の多さにつながっているのでしょう。

さてここで、どんな人が辞退したのか、辞退があったことによって、合格者の構成はどう変わったのか、気になってきましたので調べてみました。

診断協会から統計情報として、受験者の属性毎の合格数が公表されています。具体的には、性別・年齢・受験地区、勤務先別の申込者数と合格者数が公表されています。今回はこれを利用しました。

本当は属性毎に辞退後の人数が出ていればどんな人が辞退したのか分かるのですが、今回は属性ごとの合格者のシェアの変化から状況を推測することにしました。

もし特定の属性の方の辞退が多いとすると、合格者シェアにも影響を与えるはずです。

では、結果を見てみましょう。

合格者シェア

(1)男女別

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女性のシェアが上昇し、7%になりました。女性のシェア上昇は今年に限った話ではなく最近の傾向で、コロナの影響は少ないと考えます。

(2)年齢別

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最近の合格者シェアは、20代と30代で低下傾向、40代と50代で上昇傾向、だったのですが、2020年度は逆になっています。40代以上で不安を感じて受験を辞退する人が多かったのかもしれません。

(3)受験地区別

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2020年度は東京地区のシェアが低下し、その分、大阪、仙台、札幌のシェアが上昇しているように見えます。東京地区のシェアは去年から低下傾向ですので確定的なことは言えないですが、東京は辞退する人が多かったのかもしれません。
札幌のシェアは約2割増加しており、目立ちますね。

(4)勤務先別

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2020年度はシェア上位の傾向は変化がありませんが、学生のシェアが1.3%から2.2%に上昇しています。学生はいつも1%台だったのでこれは明らかに何かあったものと思います。コロナ禍で学校に行けない学生さんが診断士試験の勉強をしていて、かつ辞退をあまりしなかったのかもしれません。
一方でリモートワークと言っておいて試験勉強する会社員が増えるかなと思いましたがそうでもないようです。

ところで、勤務先別の合格者シェアは科目の難易度も影響すると考えます。勤務先によって得意な試験科目がありえるからです。例えば「財務・会計」が難しかったと言われる2014年と2018年は「税理士・公認会計士等自営業」のシェアが上昇しているように見えます。

このあたりも突き詰めて考えると面白いことが分かるかもしれません。

以上です。
コロナ禍による試験辞退が、合格者シェアに与えた影響は多少あるように見えました。

次回(があるなら)もう少し統計的に何か分かることが無いか探ってみたいと思います。

IT系企業に所属する企業内診断士です。