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 目を覚ますと、ミケは、さも、はじめから、そこに居たみたいに、ソファの上に、陣取っていた。
「おはようございます。今回で、お会いするのは、3回目ですね。拙者が、現れるのは、これで、最後になります。あなたの旅が、どこまで、続くのかは、存じませんが、物語には、必ず、最後があります。命が、有限であるように。どうか、楽しんでください。」
「ありがとう。つぼみを、呼んでくるよ。どうも、3人じゃないと、落ち着かない気がして。」
 同じ階の、別の部屋を、ノックする。つぼみは、まだ、寝ているようだった。少しして、眠そうな顔をして、扉から、でてきた。寝起きの顔は、なんだか、いつもと違う柔和な雰囲気で、僕は少し、ドキッと、してしまう。
「おはよう。ミケが来てるんだ。」
「ミケさんは、いつも、前触れがないのね。少しは、タイミングを、よんでほしいわ。すぐ、いく。」
 僕の部屋に、つぼみと戻ると、ミケは、窓の外を見ていた。なんだか、異世界を眺めるみたいに。
「この世界は、美しいですね。それぞれに色があって、個性があって、ひとつのまとまりになって、調和している。空からは、日光が降り注ぎ、果てからは、風が吹いてくる。そこに、人間がつくった人工物が、アクセントを加える。不思議な味わいです。
 さあ、最後の行く先は、未来です。でも、ただの、未来とは違います。両親が、事故に遭遇しなかった、もうひとつの世界。すなわち、そこには、もう、あなたはいません。以前、申したように、すでに、自ら命を絶ってしまっている。」
 僕らは、息を飲む。鼓動が、早くなっていくのを感じる。死というものは、多かれ、少なかれ、心や脳の波長を、狂わす。まして、自分の死んだあとの、世界というものが、想像がつかない。その未来への旅立ちを、予期するみたいに、黒い雲が、もくもくと、空にひろがろうとしている。

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