アートシンキングが生み出すイノベーションとは何か?

勘の良い人は既に気づいていると思うけれど、「アートシンキング(アート思考)」が話題になっている。雑誌や書籍はもちろん、NHKにも特集されていることを考えると、そろそろブレイクしても良い頃かもしれない。

今主流かつ話題なのは、デザインシンキング(デザイン思考)で、取り入れる企業も増えているけれど、なんちゃってコンサルタントやらファシリテーターやらが跋扈して、結局何を生み出したんですかっていう状況をそこかしこで目にしていて辛い。

これは、デザイン思考の性質によるところもあるのではないかと思っている。というのもデザイン思考は、「デザイナー以外のための『ユーザー中心のデザイン』」をするための方法であるから、そもそもがニーズ始点の改善・改良で成果をあげるものなのだ。

この本質を理解しないで、デザイン思考はイノベーションを生むだのなんだという人たちは、そもそも疑ってかかったほうが良いくらいに思っている。

まとめると、デザイン思考=ユーザー中心のデザインの方法=ニーズ始点の改善・改良で成果をあげる方法であるから、既存のプロダクトやサービスの改善に力を発揮するものなのだ。

では、イノベーションを生む方法として注目される「アート思考」とは何だろうか。

アート思考を説明するときに「アーティストの思考方法を使う」ということが言われるが、その本質的な意味は、「存在論をふまえた思考」だということだ。存在論とは、「世界はそもそもどうなっているか」ということで、それを踏まえるとは、システムとか制度とかを介して間接的に世界に対峙するのではなく、「世界はそもそもどうなっているか」の通り、全体性に向かい、間接性を除去し、世界と対峙することを示す。

これがどう活かされるのかというと、既存のシステムやバイヤスやフレームワークや障壁を崩してしまうことにある。アート思考は決して、アーティストのように自由に絵を書いてそれが発想の起点になってかっこいい何かしらのアウトプットができるよ、みたいなものではなく、既存のシステムが破綻したり機能しなくなったり信用できなくなったときに、「世界はそもそもどうなっているか」から発想していこうということなのだ。

そんなたいそうなものを、それを当たり前に使えない人のために使えるようにしたのが「アート思考」だといえる。

具体的にどういうことかといえば、アート思考が注目するのは「自分のオリジン=起源」だ。性質や属性や価値観といった自分を自分足らしめている自己意識をはがし、その由来を明らかにし、言語化する。自分を世界の中に位置づけるプロセスだ。

そして次に、オリジンから発想が始まる。既存の思い込み(システムやバイヤスやフレームワークや障壁)と、自分自身のオリジンを対峙させ、自分のオリジンで突破する。世界から間接化された自分ではなく、自分自身を世界に持ち出して、発想を生むのがアート思考なのだ。

抽象的すぎる?

そう、抽象的だ。ここで、現代社会は完全にシステムエラーを起こしつつあるし、いろいろな頼れると思っていたものごとへの信頼が低下し続けていることを思い出してほしい。

つまり、社会の前提が覆っている時代になっていて、その中でイノベーションを起こそうというのは、「そもそも」に向き合っていくことからしか始まらない。前提という足場がなくなっていく以上、そもそもから始めないと土台がどんどん崩れていってしまうのだ。

だからこそ、抽象的にならざるを得ない。万人が正解とわかる答えではなく、自分自身を通じた世界の理解からしか始まらないからだ。

このような認識は広まりつつあり、アート思考を名乗っていなくても、いろいろな人たちが、いろいろなアプローチで、オリジンを起点とするような発想を訴え始めている。

その中の一例で、ぼくが応援しているのは、尾和恵美加さんの「オリジンベースド・アートシンキング」だ。

なぜ応援しているかといえば、「抽象的でわかりにくい」という批判に、モバイルハウスというアートシンキングを体験できる場所の具現化で回答したことをとてもとてもすごいことだと感じているのだ。

抽象的だという批判は、批判した方を「無理解だ」と指摘することは簡単だ。そして多くの場合、それで終わる。けれど、尾和さんは「具体的に体験できる場を作る」ことで答えた。こんなに誠実なことはないと思うのだ。

そして実際に、アート思考を活用した、企業の新規事業開発がスタートしていることも大いに注目したい。そう、オリジンを活用できるのは個人だけではない。企業も、団体も、何かの思いから始まったものは、オリジンを見出すことが武器になる。

さて、そんな今後数年の間に大いに話題になりそうな「アート思考」に興味をもっていただいた方は、こちらのクラウドファンディングに注目してほしい。

この抽象的な内容を、誰もが体験するには信頼できるワークショップが一番だ。個人も企業も、手っ取り早く成果を出すという発想ではなく、そもそもに向き合いながら、自分たちを世界に位置づけ出発するきっかけになれるのではないかと思う。

アート思考を体験してみたり、使ってみたりといったことからスタートすると、世界の見方が変わる。

6月29日(土)23時59分まで支援を受け付けているクラウドファンディングはこちら


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社会課題を解決するサービスや取り組み作りをしています。 方法的に人文知を動かしながら、世界に対する新しい見方を検討し、提示します。 多拠点生活(宮崎・東京・山梨)しながら仕事し暮らす実験中。株式会社ande代表