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初めてマネージャーになるときに知っておきたいマネジメントの定義と5つの業務内容

組織の人数が30人を超えてくると、社長1人の目が全員に行き届くことが難しくなってきます。そこで、権限移譲をしてマネージャーを立てて...という動きが進んでいくのですが、マネジメントの定義が人によって異なることがあり、「せっかくマネジメントを権限移譲したのに思うように動いてくれない」「マネジメントを頑張っているのに全然評価してもらえない」と、経営者とマネージャーの間で期待値のギャップが生まれてしまうことは珍しくありません。

COMPASSでも事業成長に合わせて組織が拡大しており、業務委託のメンバーを合わせると100名近い規模の会社になってきました。上述のような期待値のギャップを防ぐために、権限移譲の際には私が考えるマネジメントの定義と期待している業務内容について説明するようにしています。その内容は他の会社でマネジメントをしている方にも参考になるところもあると思ったので、このnoteで紹介させてください。


マネジメントの定義

マネジメントの定義について話すには、戦略・作戦・戦術・兵站の理解が欠かせないと私は考えています。戦略や戦術の違いについて明瞭に答えられる人は実は少ないのではないでしょうか。2012年にshi3z氏による「戦略(Strategy)、作戦(Operation)、戦術(Tactics)、そして兵站(Logistics)」という名エントリーがあって、私はそこで初めてこれらの概念について学びました。今は残念ながらそのエントリーは削除されているのですが、以下に再編再掲されていましたので紹介させてください。

氏のエントリーでは戦略・作戦・戦術・兵站の定義は次のようになっています。

戦略(Strategy)、作戦(Operation)、戦術(Tactics)の順にマクロからミクロへと視点が移って行く。そして戦術に行くほど繰り返し用いる回数が多くなるはずで、戦略は滅多に動かしてはいけない。

たとえば「今人気のあるこのWebサイトのデザインをもっと改良します」というのは戦略ではなく戦術である。「先日の展示会であつめた名刺リストに上から順番にアタックしていきます」というのはひとつの作戦に過ぎない。

戦略とは幾多もの作戦から成り立つもので、単一の作戦に依るものは戦略とは言えない。また、作戦を実際する現場では、無数の戦術が用いられることになる。そして作戦、戦術を支えるのが兵站だ。兵站とは、兵士の食料や武器弾薬の調達、新兵の徴集と教育、各基地間の通信や補給など、具体的な攻撃以外の全てを意味する。

さて、ここでマネジメントの定義の話に戻ります。マネジメントを権限移譲する際に期待値のギャップが生まれてしまう原因は、戦略・作戦・戦術・兵站のいずれをもマネジメントと呼んでしまうことにあると私は考えています。

私は認識の齟齬を防ぐため、戦略・作戦を「経営計画」、兵站を「組織作り」、戦術を「現場指示」と日本語で改めて定義をし、マネージャーと会話をするようにしました。これによって、私がマネージャーに対して何を期待しているかを明確に言語化できたと感じています。
※以下は歴史好きな私が作成した時代感が滅茶苦茶なイラスト

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もし経営者とマネージャーの間で期待値が揃っていないと感じるときは、あえてマネジメントという言葉を使わず、経営計画・組織作り・現場指示の何に注力することが求められているのかを話してみることをお薦めします。


マネジメント(組織作り)を行う上で実行すべき5つのこと

権限移譲の対象として、まず間違いなく挙がるのは現場指示でしょう。組織が拡大していくなかで、経営者が真っ先に手放すのがここです。逆に最後まで手放さいのが経営計画ではないでしょうか。PL責任とイコールと言っても良いところであり、ここを権限移譲するときは、事業が多角化し、事業そのものを権限移譲する時だと思います。

そして、実は見落とされやすいのが組織作りだと私は考えています。スタートアップやベンチャーは生きるか死ぬかの戦いをしており、組織をいかに健全に保つか?に意識がいかないことは珍しくありません。しかし、組織作りは経営計画を実行するために必要な資源(人的・物的問わず)を整える役割です。ここを疎かにしていては中長期の戦いに勝つことはできません。マネージャーが期待されていることに組織作りが含まれているかどうかを明確にし(含まれていなければ含めて)、この5つの業務を一つずつ着実に実行していきましょう。

1. 採用

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組織は人の集合体です。従って、組織作りは人を集めること(=採用)から始まります。実際の採用活動は人事のメンバーが担当する範囲も多いと思いますが、戦略・作戦を実行するためにはどういう人材が必要か?を考えて、その人材達に味方となってもらえるよう惹きつけることは組織作りのマネージャーが実施すべき重要な仕事です。

一方で、人材より入社希望の意思表示があった時は冷静に見極めを行いましょう。人材の見極めで決して妥協をしてはいけません。戦略・作戦の実行能力があったとしても、ミッション・ビジョン・バリューへの共感がない人を仲間に迎え入れてはいけません。たとえ強力な戦力であっても異なるベクトルの力は組織崩壊を引き起こします


2. 育成

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組織は人の集合体であるからこそ、組織に所属する人が強くなれば、自然と組織が強くなります。実行すべき戦略・作戦はその時々の外的要因によって変わります。変化に迎合していくため、様々な戦略・作戦に対応できるようメンバーの育成に注力しましょう。

育成はマネージャーがメンバーに対して働きかけをする印象を与える言葉ですが、実際にメンバーが成長していくには、メンバーの取り組む姿勢がもっとも重要です。あくまで主体はメンバー当人でなくてはいけません。「先生と生徒」「師匠と弟子」のような関係性ではなく、マラソンの伴走者のような関係性で、メンバーの成長を支援しましょう。マネージャーとしてメンバーが成長しやすい環境・機会を提供することを心がけてください。


3. 評価

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評価はその組織にとっての信賞必罰の基準を明示することです。この基準が不明瞭であれば、組織の統制を取ることは難しく、メンバーが不公平感を覚えてモチベーションが落ちる、意図した方向にメンバーを導けない、などの問題が発生します。良いことは良い、悪いことは悪いと明確な基準とともにメンバーへフィードバックをしましょう。

フィードバックの場は1on1が適切でしょう。1on1を既に実施している人も多いと思いますが、組織作りという観点では、1on1は業務推進の為ではなく、メンバーの成長支援の為の時間にしてください。業務・組織課題のテーマを扱うときは、緊急度は低いが重要度の高い課題のものにしましょう。こうした課題は中長期的な視点を生み、メンバーの成長へと繋がっていきます。


4. 価値観の浸透

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ここの価値観は、ミッション・ビジョン・バリューを指します。戦略・作戦は外的要因に合わせて柔軟に変化をします。しかし、ミッション・ビジョン・バリューは基本的には変わりません。目的意識の不明瞭な組織は脆く崩れます。繰り返し説き続け、現場のメンバーが同じ気持ちで戦えるようにしましょう。

人間は目先の戦いをしているとどうしても大義を忘れてしまう生き物です。「もうその話は飽きた」と言われるまで、繰り返しミッション・ビジョン・バリューを語りましょう。「何回言うねん」と言われるぐらいがちょうどよいと考えておくとよいです。

5. 配置

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人には強み・弱みがあります。その人の強みが発揮できるような適材適所を考えて配置をしましょう。また、将来を見据えての抜擢人事や、違う領域への配置換えも選択肢として頭に入れておいてください。配置によって人が大きく成長することは珍しくありません。戦略・作戦の実行の為だけでなく、長期的に組織を成長させていく為の配置を考慮できると尚良しです。

配置の際、メンバーに対して何を期待しているのか?を具体的に言語化して伝えるようにしてください。同様に、メンバーがその配置に対して期待することを具体的に聞くようにしましょう。権限に関しても、どこまで本人で決めて、どこから相談して欲しいかの認識合わせをしておくことが肝要です。

終わりに

というわけで、マネジメントの定義とマネジメント(組織作り)を行う上で実行すべき5つのことでした。マネジメントは非常に奥の深い仕事で、決まった答えのない難しいものですが、この定義と業務内容を抑えておくことが一つの指針になるのではと感じています。マネジメントに取り組む皆さんの何かの参考になれば幸いです。

最後に宣伝。COMPASSはミッションである「新しい学びの環境を創り出す」を達成すべく日々奮闘しています。もし教育領域の興味のある人がいればぜひ力を貸してください。採用情報よりご連絡頂けるととても嬉しいです!


おまけ: 参考図書

マネジメントの勉強をするときに読んで良かった本を紹介しておきます。


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