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想いの共有から始まる自分事のコミュニティ

挑戦を支える全国各地の皆様に光を当てるSupporter Interview。今回のインタビュー対象は沖縄県石垣島にてコワーキングスペースのコミュニティマネージャーを務める岩倉千花さん。島や地域のPR活動にも従事しつつ、チャレンジする皆様を支える在り方について伺いました。

── 岩倉さんの現在の取り組みについてお聞かせください。

合同会社empty共同代表として「イベント&コワーキングスペースチャレンジ石垣島」にてコミュニティマネージャーを務めています。また他には島や地域のPRやイベントのお手伝いも手掛けています。


── コミュニティと平行してPRやイベントも手掛けられていらっしゃるのですね!具体的にどのようなお仕事でしょうか?

PRでは写真・動画の撮影や、紙媒体やウェブ媒体の企画、編集、デザインなどですね。イベントに関しては子供たちの演劇公演や、島のいろんなイベントの制作や運営に関わっています。

チャレンジ石垣島でご活躍の岩倉さん

── 多彩ですね。コミュニティマネージャーは、どういった経緯で手掛けるようになりましたか?

元々はフリーランスとして活動していた時に、石垣島で小さなコワーキングスペースを始めるので、力を貸して欲しいと言われてコミュニティマネージャーをしていた経験がありました。


── 個人事業主時代から引き合いをいただいていたんですね。

その後、カヤックゼロが石垣島でコワーキングスペースを開設しようとプロジェクトを動かし始めた際、やっぱり島に場を根付かせるためには地元メンバーの力が欲しいとのことでお声掛けいただきました。


── お話を伺っていると、誰かの頑張りを支える裏方のお仕事を中心にご活躍に思われますが、どうして支える側に回ろうと思われたのですか?

実は元々、裏方気質なんです。ずっと学生時代から演劇活動をする中でも、表のステージで立ち回る役割よりも、裏で何かを準備して走り回っていることが大好きだったんです。


── それをお仕事にしようと思ったきっかけはありますか?

石垣島にUターンした時に思いました。石垣島には支える人材が不足していると。


── 支える人材の不足。

表に出てご活躍の皆様はいらっしゃるものの、それを編集したり、世に発信したり、そんな人たちを繋げたりと、もっともっと良い未来に繋げる裏方仕事を担っている方が少ないと。


── 中々に不足してらっしゃったんですね。

もちろん、ゼロというわけではなく、そのような編集や発信を島外のコンサルや広告代理店がサポートしてくれているようなこともありました。ただ、そうなると渡航費や宿泊費が予算の大半を占めてしまったり、継続性に欠けていたり...Uターンしてそんな現状を見て、島内にいる人材をもっと活かせるなということ、島の外へそういった仕事やお金が流れているのが勿体ないなということを強く感じたんです。


── 島の中できちんと人もお金も回るようにしたかったと。

島内にはそのような編集や発信のお仕事をする人材が居ないわけではありません。ただ、そういった人たちをまとめたりする受け皿が居ないなと思いました。そうなると「島での働き方」として定着もしない。会社を設立して、これまで外の方々が担っていたお仕事を自分たちが島内で受け皿を作ることで「島の中でもこんな働き方ができるよ!」と次の世代に背中を見せることにも繋がると考えています。


── 実際に始められてみて如何でしょうか?

勿論やりがいは感じています。ただ、地方あるあると言いますか、最初は新しいものに対するアレルギー反応はやはりありました(笑)けれども根気強く、言葉を変え、見せ方を変え、自分たちの活動を地道に続けています。ちょっとずつ、「こういうことを今度やってみたんだけれど、どうやって準備すればいいか分からない、手伝って欲しい」とか、「ひとまず相談してみた。」とかの頼ってもらえる声が増えてきました。

たくさんの島の相談事に乗られている岩倉さん

── 前例がないものに対するハードルを乗り越えようとしているわけですね。

島の中の誰かが何かを始めたい時に必要とされる存在に、少しはなってきているのではないかと感じています。少し前に島の高校生たちから「そんな働き方が島の中で出来るなら、いつか自分も島に帰ってきてそんな風に生きてみたい」なんてありがたい言葉をもらいました。


── これまでなかった価値を島に根付かせられている証ですね。

まだまだ小さな一歩ですが、島の土壌を変えていく。もっともっと次世代が新しい挑戦を始めやすくなる、そこに貢献していきたいなと思っています。


── コワーキングスペース「チャレンジ」にてStartupWeekend(以下SW)開催を志されたのは、その想いがあってこそでしょうか?

誰もがやりたいことが出来るようにする、という想いがあったからこそですね。ただ驚かれるかもしれませんが、実は「起業」とか「ビジネス」という言葉はとても苦手なんです(笑)


── というと?(笑)

石垣島で何かやりたい、島で挑戦したい、それが当たり前に形になってしまうような島の空気を作っていくことが好きなんです。必ず起業する必要もなく、そしてビジネスである必要もなくて(笑)


── その考え方であるにも関わらず、よくSW開催に辿り着かれましたね(笑)

実は元々、私が言い出したわけじゃなくて、一緒にチャレンジを運営するひろこさんからの提案だったんです。アイデアをカタチにする、やりたいことを実現する仲間を見つける、加えて社会人だけじゃなくて学生も参加できる、という説明を聞いた時になんだかわくわくしました。


── 地元との関わりも深まる機会として魅力的だと。

もし、このチャレンジのコンセプトが、島外からの移住者や、ワーケーションの方々が遊びに来るためだけの施設であったなら、SWを開催したいとは思わなかったかもしれません。地元の人たちも集まれて面白いことを始める場所であるからこそ、この場所で開催したいと思いました。


── SWを石垣島で開催するため、岩倉さんも沖縄本島で参加されていらっしゃいましたが、どのような価値を感じられましたか?

一番は仲間の大切さ…ですかね…。もちろん三日間の怒涛の経験を通じて起業のエッセンスを体感して学び取れたことは間違いないんです。けれども、何か新しいことを生み出そうとき、誰とどのような時間を過ごすかということも大事なのだなと強く感じました。


── 誰かと一緒に何かを進めることこそが大きい。

ぎゅっと圧縮されて濃くて大変な三日間だからこそ、人と人との繋がりが深いところで生まれ、人の温度感を肌で感じられる、それがSWの魅力だと思うんです。ただ知識を学ぶだけだと、そこから何も繋がりは生まれない。


── 薄っぺらくない繋がりが得られると。特にどんなところにそれを感じられましたか?

「きっとこの後もこのメンバーで何かをするだろうな」そんな確信を、SWが終わった後に得られたんです。なので私は知人友人にSWをオススメする時は起業のノウハウが、ということよりも「すっごく面白い人に出会えるよ!ジェットコースターみたいに色んな感情を楽しめるよ!誰かと一緒に何かを形にするプロセスを経験できるよ!」なんて風に紹介しています(笑)

2022年7月に石垣島で初開催を果たしたSW

── これはもう誰もが参加せざるを得ないですね(笑)ちなみに岩倉さんはイベントのみならずコミュニティのマネジメントも手掛けられていらっしゃいますが、コミュニティマネジメントの大切なところはどこにあると考えられますか?

今、実はその壁にまさにぶち当たっている最中なので、これが正解だ!なんて風には語れないんですが、一人で頑張り過ぎない、ことはとても大事だなと感じています。


── その心は?

誰かが真ん中にいて、そこで人が集まってくるコミュニティも良いとは思うんです。むしろ最初はそうでないとコミュニティは始まらない。けれども、コミュニティを大きくしていこうと思うと、属人化していると脆くなって続かなくなってしまう。


── 属人化させないこと。

そうですね(笑)私は、タクトさんがいるからSWしか知らないので、SWといえばタクトさん!ですが、タクトさんがいないと全国のSWが成り立たない!だとまずいと思うんです(笑)誰かをきっかけにして集まった人たちが、想いや心を共有して繋いでいく仕組みを作ること、それが続けるためには大事だと思うんです。


── 耳が痛いです(笑)チャレンジは如何でしょうか?

実はチャレンジも石垣島にオープンしてからこの半年間、中心メンバーだけで基礎をつくり仕組みをつくり、顔となって運営してきました。「この人に会える」が利用者を招く理由にもなっていたと思います。今後のステップとしては、この中心メンバーが作った基盤をもとに、さらに仲間を増やして、これまで目的となっていた「誰か」に加えて、この場所の空気や仕組み、この場所の世界観や便利さを求めて人が訪れてもらうようにしていきたいなと思っています。

中心メンバーとして、コミュニティの顔として活躍の岩倉さん

── どうやって仲間集めを進められますか?

まずは自分たち自身が心の中でなんとなく思い描いている姿を、お互いで共有したり色んなところで伝えることかなと思っています。それに共感して集まってくれた人で、同じ温度感で関わってくれるような人たちと、さらに「この場所を通じて何を成し遂げていきたい?」「何を大切にして関わってみたい?」といった風に想いをプラスアルファしていく。


── 想いを共有した理想作り。

「このコミュニティは自分が作っているんだ」「このコミュニティの中心に自分がいるんだ」そんな風にして一人一人がホームに感じているような環境にしたいなと。


── 他にコミュニティ作りで工夫されていらっしゃることはありますか?

そうやって集まってくださった人々に、渡していく、ことをやっています。一人一人の得意不得意、出来る出来ない、やりたいことやりたくないこと、そういったのを大切に見極めた上で、小さな役割分担から取り組んでいっています。


── 小さな役割分担。

ほどよくプレッシャーを持ってもらえるような、小さなお願い事のことです。やっぱり責任感を感じることで、より愛着も湧きますし、頑張ろうって気持ちになれますし。何より一人一人が自分事にしてもらうことでこそ、コミュニティは大きくなっていくと思うんです。


── コミュニティを育てるために工夫を重ねられている岩倉さん自身は、これからどんな挑戦を重ねたいでしょうか?

実は私、現場が大好きなんです。誰かが実現したいことのために駆け回っていたいんです。ひたすら走っていくことが性に合ってるんです。けれども年齢や組織とか立場とか様々なものが複雑に絡み合って、それだけをし続けることは残念ながらできないのだとも感じています(笑)。だからこそ、自分らしい働き方を見つけたいなと感じています。


── 現場だけに限らない働き方。

後輩を育成したり、仲間に加わってくれた皆様に指揮を出したりといった風な、これまでとは違った役割が今私がしている挑戦ですけれども、だからといってそれだけをすることは私の好きな生き方から外れてしまうので、両方のバランスがとれた新しい働き方を探っていきたいなと思います。


── 働き方以外に、挑戦してみたいことはありますか?

駆け込み寺と言いますか、縁の下の力持ちを担える人を増やしたい、と思っています。ありがたいことに、今たくさんの相談が届きます。岩倉さんにお願いしたら、なんとかして解決してくれるよね。もし岩倉さんの手に負えなくても、どなたか素敵な方を紹介してくれるよね、といった風に思ってくださっているみたいで、取り敢えず私の元に相談が入るんです。


── 石垣島の駆け込み寺ですね。

すごくありがたいんです。けれども自分一人では島で何か挑戦したい人、事業を作っていきたい皆様を全員支えることは出来ないし、一人でしたいとも思っていません。だからこそ、もっともっと「支える人」を増やしていきたいんです。そんな風にして支える人が増えることで島はもっと豊かになると思うので、支える人がもっと増える場作りや仕掛け作りに挑戦したいなと。


── 「支える人」を育成するには何が有効だと考えていらっしゃいますか?

凄く小さな取り組みになるんですが、まずは人と人とが繋がれる機会をもっともっと増やすことに尽きるなと思うんです。石垣島には大学がないので、10代後半から20代後半の若い世代がぽっかり空いてしまっているんですね。それもあってか、都市部であれば若手が率先して企画運営している異業種交流会とか、同世代が語り合う機会が少な目なんです。


── 若手の島外流出で出会う場の喪失が起こっている。

人と人とが出会わないことには、お互いが求めていることや困っていること、やりたいことも出てこないと思うんです。そこで想いを分かち合えるからこそ、どうやってお互いに手助け出来るかが分かってくる。なのでまずはコーヒーやお酒を飲みながら気軽に出会える機会を増やすことを、目の前のチャレンジも活用しつつ、増やしていきたいですね。

時にはコワーキング前の蕎麦屋で想いを分かち合う岩倉さん

── そんな風にして支える人を増やしていくことが島の活性化に繋がっていきそうですね。逆にそうやって支えられ、挑戦を重ねる皆様が持つべき力はなんでしょうか?

すごくプラスの意味での、プライドを捨てる勇気を持つべきではないでしょうか。


── プライドを捨てる勇気。

もし本当に、誰の力も借りずに何かを成し得る人は、支えられることを求めることもしないと思うんです。一人でなんでも出来ちゃう人なので。けれども、自身の挑戦をみんなに支えて欲しかったり、周りに影響力を持ちたい、と願う人には、自分が正解だという考え方を一度、捨てるタイミングっていうのが大事だと思っています。


── 具体的に聞かせていただけますか?

自分の考え方やプランに対して違う意見に対して聞く耳も持てないプライドを持ち続けていると、客観的なアドバイスを受け取れなくなっちゃいます。プライドは言い換えれば、自分が正しいと信じる力。もちろんその力は必要なのですが、あまりにその力が強すぎると、もっと物事をよくするための声を受け取れなくなっちゃうんです。アイデアをカタチにする上で必要な意見を伝えたとしても、自分の事業案を潰そうとしている悪いヤツだ、なんて風に思われちゃうこともあると、悲しいなと思います。


── より良いものを生み出すためには、自分が否定される勇気を持たなければならない、ということですね。プライドが高まり過ぎた皆様を見分ける方法はありますか?

あくまで私個人の経験値からでしかないのですが、率直にフィードバックをお伝えした時に、相槌が「んーーーーー」という場合は、コミュニケーションが難航する場合が多いですね(笑)「いや、それは…」「でも、これは…」という風に何もかもに対して否定から入るお返事をされる方も、サポートしてくれそうな方を誰を紹介してもなかなか良いマッチングにならないことが多いです。


── 中々に勿体ないですね。どんな風に対処をされていますか?

続きは下記よりご覧ください。


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