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ワーケーションから始まる地域理解を通じたファンの育成

挑戦を支える全国各地の皆様に光を当てるSupporter Interview。今回のインタビュー対象は伊豆高原にてワーケーション施設の運営を手掛ける清水 隆志さん。関係人口創出の取り組みや地方への飛び込み方について伺いました。


── 清水さんの現在の取り組みについてお聞かせください。

伊豆高原で『ISOLA伊豆高原』というワーケーション施設を運営しています。他には、東京の浅草にて、外国人向けゲストハウスや、日本と中国の架け橋となることを目指した日中交流シェアハウス『ぱんだハウス』を運営しています。インバウンドをメインターゲットとした事業展開を行っていましたが、コロナをきっかけに新たな領域にもチャレンジしはじめました。

『ISOLA伊豆高原』外観の様子


── コロナをきっかけにして始められたのは、ワーケーション施設の方でしょうか?

仰る通りです。コロナの水際対策のためインバウンド需要が全滅、加えて人と人との交流そのものがネガティブな空気に包まれてしまって、旅行や人々の交流を軸にしていた事業が大打撃を受けてしまったんですね。そこで世の中の流れにそって何か出来ることがないかと模索した結果、ワーケーション施設の立ち上げに辿り着いたんです。


── 既存事業が止まって危機感からのスタートだったんですね。ちなみにコロナをきっかけに業態転換をされる方々は世の中に数多いらっしゃったかと思うものの、どうして清水さんはワーケーションを選ばれましたか?

理由は大きく分けて二つあって、一つ目は大都市における空間の狭さに対する課題感です。僕は岡山県の田舎出身ですが、東京に住み、空間や場を提供する仕事をする中で、東京の狭さというか圧迫感を感じていて、もっと広々とした空間に贅沢さを感じるようになってきました。

東京で日中交流をテーマとした場(シェアハウス)を提供される清水さん


── 自分も和歌山のド田舎出身なので共感しかありません。 

例えば僕の父は実家で、庭に色々なものを作ったり、DIYやガーデニングなど敷地に余裕がないとできないようなことを自由にやっていました。


── 広大なスペースがあってこそ、ですね。

東京の土地は地方に比べてはるかに地価が高く、高価なのですが、その分ゆとりがない。シェアハウスやゲストハウスを運営していると、やっぱり狭さに悩まされるんです。浅草の街中には所狭しと建物が立ち並び、物件の敷地の中に車はおろか自転車1台ぶんの駐輪スペースすら確保できません。家と隣の家の隙間なんて30センチほどで人の体が入らないほどです(笑)


── 浅草でシェアハウスを運営していた身として共感しかありません(笑)

隣の家との距離が近すぎて屋内であったとしても騒ぐと近所迷惑になっちゃうとか、狭苦しさを感じない日はありませんでした。けれども地方だと一つ一つの敷地は広大で、建物の側に自転車どころか、車でも何台も置けます。庭でかくれんぼだってできそうです。空き家や空地を含めて、スペースはむしろ有り余っています(笑)

狭苦しさを感じない地方のスペース


── 住宅が密集する都市部だからこそ、スペースはいつだって課題ですよね。ワーケーション事業に着目された二つ目の理由は如何でしょうか?

今、国を挙げて地方創生に力点を置いていることが大きいです。以前、文部科学省で働いていて、留学促進の政策に携わった経験があるので、国がリーダーシップを持って取り組む内容で、共感できるものについては、そのビジョンを後押しするような事業を展開できればなと考えています。


── 冒頭でお伝えいただいた日中交流シェアハウスも正にそれだったのですね。

かつて日本がクールジャパン戦略で日本のブランドを高め、訪日外国人を増やす動きを国をあげて取り組んだ際には、自分は国際交流シェアハウスや外国人用ゲストハウスのビジネスを行うことでその流れを後押ししてきました。結果としてインバウンドが盛り上がった際には、当事者意識を持って大きな達成感を感じることができました。なので次は地方創生という流れを後押ししたいなと。


── 世の流れに沿うことで、事業を成長へと繋げていく。

国の施策にも貢献できて、成長分野に身を置くことで事業としても成功する。そんな淡い期待がありますね(笑)ただ、地方創生はまだまだ道半ばで、成功事例が少ないので工夫は必要そうではありますが。

コロナ前、成長分野に身を置いて事業展開されていた清水さん


── 国の政策にも携わった経験を持ち、民間事業者としてもご活躍の清水さんにお尋ねしたいのですが、地方創生の鍵は何だと考えますか?

複雑に絡み合い過ぎていて言い切ることは難しいと思うのですが、「若い人材」が鍵だと感じています。


── もう少し深掘りしてお聞かせいただけますか?

問題は地方に若い人や元気のある人が行く流れが出来ていないことです。現状、若者や活気のある人が目指す場所は東京などの都市部になっています。都市部への人口の集中が顕著ですが、若年層においてその傾向は一層強いです。一方地方の高齢化は深刻です。私は今40歳手前ですが、伊豆では周りから若い若いとチヤホヤされます。東京だと「若い」というのは30歳くらいまでで、40歳手前だとそろそろオジさんの仲間入りですよね(笑)

若者や活気のある人が、完全に地方に移住するとまでは行かなくても、地方に片足だけでも置いていただければいいのですが、その流れがまだまだなんです。


── 地方に足を置く。

居住やメインの活動の場は都市部にあったとしても、特定の地方に頻繁に行き来したり、愛着を持って関わり続けるようなイメージですね。関係人口という言葉で表現されたりします。


── 地方に関わる人を増やすと一口に言っても、様々なパターンがありそうですね。

大学など若者が集う場所が地方にあれば、そこにいる学生たちに関わってもらう方法を考えればいいのですが、残念ながら全国どこでも大学があるわけじゃない。伊豆には大学をはじめとした高等教育機関が皆無なため、進学をきっかけとして無条件で毎年若者が流入してくるというメカニズムがありません。だからこそ興味を持ってわざわざ来てもらう、その施策を考えて実践していく必要があります。

地方に来てもらうきっかけとしての伊東市発祥のスポーツ枕投げ


── 清水さん自身はどうやって人を地方へと巻き込んでいらっしゃいますか?

一つ目は自分自身が東京で培った繋がりですね。シェアハウスの仲間や友人達を中心に声掛けをし、「伊豆高原に是非遊びに来てよ」と半ば強引に来てもらうよう仕向けました。その結果、頻繁に伊豆高原に来るようになった友人もいるし、伊豆に家を買ったりビジネスを始めた友人もいます。二つ目は行政とのタイアップです。地元の観光協会や市役所の皆様と一緒に、東京の企業向けに伊豆高原へのワーケーションツアーを企画、実施させていただいています。


── そうやって伊豆高原へ人を呼び込む際に、特に心掛けていらっしゃる工夫はありますか?

地域理解を通じたファンの育成を大事にしています。もし仮に伊豆高原での滞在がただの旅行になってしまっては「あぁ楽しかった。さぁ次はどこへ行こう?」で終わってしまう。繰り返し来てもらうには、その方に取って特別な場所であると愛着を育むことが重要です。


── 具体的にはどのような取り組みを?

いろいろな手段を用いているんですが、実はStartupWeekend(以下SW)伊豆高原もその一つなんです。タクトさんに来てもらって始まったアイデアをカタチにするスタートアップ体験の機会が、そこに一役買っています(笑)


── 愛着を生むスタートアップ(笑)

まずSWは3日間と長いじゃないですか。人によっては前入りしたり延泊したりして4日以上滞在する人もいる。そこで私はISOLAへの宿泊を無償提供させていただいて、泊まり込みで過ごしてもらうようにしているんです。普通の旅行だとひとつの街に1泊や2泊程度の急ぎ足な滞在になることが多いものの、時間をかけることで地域への興味や愛着が湧いてくる。

加えて地域課題からビジネスを生み出そうと本気でコミットするじゃないですか。結果的に地元の方々と関わりを持ち、チームで駆け抜けた思い出が出来上がって、自然と「伊豆高原にまた来たいな」という気持ちが生まれるわけです(笑)

『ISOLA伊豆高原』にて開催されたSW


── 今後は関係人口創出のソリューションとしてSWをご紹介させていただきますね(笑)アイデアをカタチに、という言葉が出てきたので少し話題を変えてお伺いしたいのですが、その要点はなんだと思われますか?

続きは下記よりお読みください。


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