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補助金の棘たち

 補助金や助成金は、一見すると魅力的。中には100%補助金もあり、ついつい利用したくなることも。けれども、世の中には「おいしい話」だけでは済まないものが多いように、補助金にも「棘」が存在する。今回は、そんな補助金の「棘」について記載していこう。

 補助金の一つ目の棘は、事後払い。補助金は、プロジェクトが無事に完了し、報告書を提出した後に初めて支払われるもの。つまり、初期費用は企業側が先に負担する必要があり、資金に余裕がない場合や銀行からの融資が受けられない場合、会社に大きな影響を与えてしまう。

 例えば、ミカンジュース工場で搾汁機を新しくするために1,000万円の予算を組んだとする。補助金が50%の場合、最初に1,000万円を支払って購入し、その年度末に500万円が支払われます。中小企業にとってはランニングのお金が消え失せるのは厳しいもの。

 補助金の二つ目の棘は、厳格な要件。補助金は自由に使える資金ではなく、補助金を提供する団体が支援したいと思う取り組みにのみ適用されるもの。言い換えれば、その要件から外れた活動には、補助金は支払われない。そこに合わせに行こうと思うと、事業の本筋からズレてしまうことも。

 例えば、「省人化」をテーマにした設備導入の補助金に申し込もうとすると、AIが要件に入っているようなもの。これまで全く問題なく業務が回っていたミカンジュース工場が、この要件に無理に合わせようとすると、結果的に本来必要のない取り組みが増え、事業全体に余計な負担や方向性のずれが生じることも。

 補助金の三つ目の棘は、履行の義務。補助金は、申請時に提示した予算やスケジュールに従って使うことが原則。残念ながら途中で計画を変更したり、余った予算を他の用途に回すことは基本的に許されていない。

 例えば、新しいミカン搾汁機を導入したものの、期待した成果が得られなかったとする。申請書に記載していた追加の機材調達を取り止め、余った資金を別の用途に回そうか!といったことをしてしまうと、補助金が支払われなくなり絶望することも。

 残念ながら、補助金は手放しで喜べる資金ではない。事後払い、厳格な要件、計画を制約といった三つの棘があると理解した上で、補助金をうまく活用してアイデアをカタチにしていこう。

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