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内部スタッフからみた「ここがヘンだよ!」拓匠開発(3) ~ ぶっちぎりな感性と個性で住宅を設計する古橋和希さんの場合 ~

 拓匠開発から依頼をうけた外部ライターが、“遠慮なし!でいいところだけじゃなくて悪いところも紹介する”をテーマに取材をしていく本ブログ。その1連載で、社内で働くスタッフに、内部の人からみた拓匠開発の「ここがヘンだよ!」な部分を、掘り下げていくのが本インタビューです。

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 第3回は、設計デザイン課に所属し、ひとつとして同じ間取りがないと言われる拓匠開発の物件の設計を手掛けている、古橋和希さんです。

●「ひとつとして同じ設計の住宅がない!」の裏側で

――古橋さんはなんでも、新卒2年目のときに海外出張で、英語が話せないのにも関わらずポートランドの企業に自社をプレゼン。アメリカンジョークで笑いも取ったという伝説で、一目置かれているそうですね。

古橋 とにかく英語を話せるようになりたくて。立候補して、ポートランドの会社の人に拓匠開発の会社案内をしたんです。分譲地の案内や弊社の活動コンセプトについて紹介しつつ、先方で学びたいことなどについてもプレゼンしました。そのほかにもインドやインドネシアなど海外に行かせていただいて、自分のちっぽけさと世界の大きさを知りました。

――普段は住宅の設計をされているわけですが、その中で日本に持って帰ってきたものってありましたか。

古橋:「アラ・ラ若葉桜木」のランドスケープデザインを担当したのは自分で、そこには自分の持てるすべてを注ぎ込む、という感じでしたね。全体の街並みをどうやって作るかや、モニュメントのデザインなどを手掛けました。でも社長から「まだ足りない」って言われまして、最終的に街並みにペイントが入ったり、道路を色々いじったりしました。

――社長も追い詰めますね。拓匠開発って、「一区画に一軒建てます」って杓子定規な宅地開発をするのではなくって、造成した宅地の中で居心地がいいように家をどう配置していくかを考えながら、配置・設計していくのが“売り”ですよね。どんなプロセスでやっていくんですか?

古橋:自分は主に戸建ての設計を担当しています。まずはコンセプト作りから始まって、それから実際に建物のプランを書いていってパーツを作って、上長や営業などに意見をもらい、最終的に社長に説明をして決定。それが決まると今度は詳細の設計、例えば窓のサイズでも現場がそれで収まるのかなどを調べながら、実施図面の作成から確認申請、工務店との金額の取りまとめ、現場の打ち合わせなども行っています。

――例えば、あちらの家とこちらの家のバランスを考えたりとかは、どうやってするんですか?

古橋:そうですね…。一般的な開発された新興住宅地のように、家がたくさん並んでいて、縦に並べるとリビングに光が入ってこない恐れのある家が出てきてしまいます。そういう時はリビングを二階に持ってきたりしています。そのほかにも、隣の家同士の空きを大きくするとか高さを抑えるとか、吹き抜けを持ってきて吹き抜けから光を持ってくるとか、屋根の上に窓をつけてそこから光を入れたりします。一棟の住宅を大きくすることもできるけど、限られた予算の中でできる空間でベストを尽くさないといけないので、間取りの空間の使いかたとかを常に考えています。それとこの設計については、かならず社長に一件ずつ承認をもらうことになっています。

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――お客さんやほかの部署から否定的な意見があがることもありますよね。例えば販売的にはもっと一区画の中にたくさん住宅を詰め込んだほうがいいケースもあったり。そんな意見が上がってきたときはどうしていますか?

古橋:ご意見を聞くところは聞いて、どうしてもそれで行きたいところは価格帯的にも納得して調整するしか無いですね。まあ、条件がたくさんあったほうが楽しめるじゃないですか。あまり人の為に何かをやるっていうのは好きではないんですけど、自分は自分のベストを尽くすことが、自分の使命だと思っているので、与えられた条件の中でのベストを尽くすっていうのをやり続けています。

――先程、社長から「もっとこうして」という意見があってさらにやり込んだというお話をされていましたが、そういうことは結構あるんですか?

古橋:ありますね。自分たちはモノづくりのプロだけれど、それを上手く伝えられないのもダメだとは思います。ただ逆に、「プレゼンが伝わらなかっただけで、これがベストに決まっている」っていうものもあって。そのときは、「もちろん言われた通りのものもできますよ。ただこうするよりもこうしたらどうですか?」と、押し通すときもあります。

――自信の設計がリジェクトされた具体的なエピソードはありますか?

古橋:土間がある平屋をコンセプトにした「モリニアル小倉」では、5棟全て自分が設計したんです。それをそのまま別の区画に持って行こうと思ったんですが、景観が良いところだったので、「その立地をもっとうまく使えるのでは?」という意見がありまして。自分が思っているベストと社長が思っている建物の理想形が違っていたので、「新しいアイデアをくれ」っていうことだったんでしょう。自分はベストを尽くしたつもりだったんですけど、社長からすると「まだいける」っていうことでした。

 ただ案外、それがエネルギーをくれるんですよね。良いものができたとしても実際にそれが建たなかったら意味がないので、そのあたりは金額的な面も含めて、検証をしながらやっています。

●いつまでも会社にいるつもりはない。

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――そうしたせめぎ合いがあって、個性的な物件が生まれているわけですね。

古橋:やっぱり普通の分譲地で作れないものを作るのが、拓匠開発の良さ、存在価値だと思います。それこそぶっ飛んだ家を作って、世の中をめちゃくちゃにしていかないといけない。設計としてはそれを提案し続けているつもりですし、会社の人たちもそれをわかってくれていて、それを少しでも実現させてくれるような環境が、うちにはあります。今までは、そういう形で自分を育ててくれたので、今度は自分たちが自らの手で作っていかないといけないですね。

――まさに拓匠開発ブランドのこれからを担っていく存在ですね。

古橋:でも、今の拓匠開発の立ち位置では、これから戦っていけないのかなって思ってます。

――何が足りないと思いますか?

古橋:全体的にですかね。自分は基本的に設計の事だけなんですけど、ぶっ飛びが足りないというか……まだまだ枠にはまりすぎていると思います。“二階にリビング”も簡単な逃げなんじゃないかなとか。一階が暗いから二階に持ってきましたといっても、本来ならばやっぱりそれは一階で作らないといけないんじゃないのかって思ったり。ほかのちょっと尖っている会社なら、作れると思うんですよね。下手すると負けるかもしれなくて、自分はそういうレベルでいたくなくて、ぶっちぎりたいんですよね。それ以上の付加価値をつけていきたいなって思いますね。

――おお! ぶっちぎり…。古橋さんのキャラクターにも合っててかっこいい言葉ですね。

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古橋:やっぱり、世の中がなんだこれって思うようなものを作りたい。最終的には、お客さまがそこに住んだ時に、泣いて自分だけに『ありがとう』と言ってもらえるようなものが作りたいんです。いまは、そのために学ばせてもらったり、いい経験をさせてもらっています。

――では、この会社に骨を埋めるつもりなんですか?

古橋:それはあまりないです。入社当時から社長に話はしているんですけど、もともと祖父も父も同じ建築でやっていたので、自分もいつかは独立するつもりです。それもあって自分の力で「世の中がなんだこれ!?」って思うようなものを作りたい。

――ある意味では、会社のためというよりも自分のためにというところなんですね。

古橋:そうですね。なので自分の設計したものを調整されたり、営業から口出しされたりすると少しイラっとしますね。もちろん、行き過ぎも良くないとも思っています。自分たちが作っているものは美術館ではなく住まいなので。

――古橋さんのようにはっきり目標を掲げて、ものが言えるのもすごいですね。

 この会社は、自分にとっては通過点です。自分らしくいられる場所でありつつ、自分が育てられている場所なんですね。ただ、育てられているような気もしつつ、育てているような気もします。今後、この会社の“顔”と言われるようなものを作るのは自分です。


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