オープン半年で潰れかけたシェアオフィス、3年続いてます。
僕が2018年1月28日にオープンした京都のシェアオフィスGROVING BASE。記事を書いているのは2021年5月です。なんとか3年以上事業を継続出来ています。
今、GROVING BASEに訪れた方は、当たり前に上手くいっている場所だと感じると思います。雰囲気の良い施設、充実した設備、24時間利用やスペシャルティコーヒー無料などのサービス。利用者もそれなりに目に付きます。
しかし、「家族がつながる」というコンセプトでスタートしたシェアオフィスGROVING BASEは、同じ施設、サービスを持っていたにも関わらず、開業後の半年は経営が火の車でした。
ぶっちゃけてしまうと、毎月預貯金が100万円以上減っていき、子供の将来のためにコツコツ貯金していた口座から50万円を引き出して補填しても2ヶ月半後には会社と家の貯金を合わせても20万円しか残らない、翌月にはまた100万円無くなるのでマイナス80万円・・・どこかから借りてくるか、オープン半年で事業を畳むかしかないという状況まで追い込まれました。
GROVING BASEオープン前〜オープン直後
GROVING BASEをオープンする前の一年くらいは色々な場所に足を運び、たくさん名刺を配り、事業の概要を話して回りました。そんな中で出来た知人たちに声をかけ、「完成したら絶対入居するよ！」と言っていただける方を何名か見つけることが出来ました。
そして、オープン直前には、事前見学会を開催しました。そこまで多くはないですが50名くらいの方が見に来てくれました。入居してくれる知人と、見学会の開催、これで個室20室のうち10室は埋められるんじゃないか、と期待していました。
オープン直後にも、見学に来る人はたくさんいましたし、さらにNHKから取材をうけ、GROVING BASEが全国で放送されることに。
話題性は十分。人とのつながりもたくさん作ったし、戦略もバッチリ作ってやることはやったぞ・・・そんな感覚でいましたがフタをあけてみると、見学会後の入居はゼロ。
「絶対入居する！」と言ってくれた方たちは一人も入居しませんでした。
知識だけで固めた「マーケティング戦略」
多くの方が見学に来てくれましたが、契約には至りません。「面白そう！新しい！ちょっと見に行っておこう！」という感覚で来てくれていました。
しかし、「オフィスを探してます！！」と明確な意思を持って来る人はほとんどいなかったのです。オープン前から反響があったので甘く見ていました。「共感と購入は別物」ということを理解していなかったためです。
マーケティングとブランディングのターゲット設定にズレがあったんです。
それから、「絶対入居します！」と言ってくれていたのは、スーツを着たビジネスマンタイプの方が多かったです。完成したGROVING BASEを見て「おとなりの声が結構聞こえちゃうね」「もっとパキっとした感じが好み」などの意見。
「自由で自分らしく働けるオフィス」というコンセプトのもとつくられた、場所をシェアし、となりにいる他人が他人ではなくなるような空間。ここは借りている場所ではなく自分の場所だ、と認知しやすいよう触って汚しても気にならないよう構造材むき出しのデザイン。自由な働き方が出来るようにと子供を含む家族が入ってもOKというルール。
ビジネスマンタイプの方には響かなかったのです。商品と顧客ニーズの不一致が起こっていました。
利用を想定した人に、メッセージがきちんと届いていませんでした。キャッチコピーは「家族がつながるオフィス」。
僕の中での想定利用者は、日中バリバリ働いていて家族との時間が満足にとれていない方。生活の中心が仕事なので、月7万〜10万程度をオフィスのために払うことは容易です。
しかし、世間からの見え方は、子育てしながら働きたい人が働ける場所でした。
子連れで見学に来てくれた女性は月7万〜10万円の利用料を見て絶句します。
見に来てくれる人は、誰一人GROVING BASEとマッチしませんでした。
GROVING BASEオープン直後〜オープン3ヶ月目
最初の数ヶ月は、オフィスに人は来ないものの、２階に併設したカフェは大繁盛でした。しかし、カフェの利益はほぼ無く、オフィスの赤字がゴリゴリと資金を削ります。
オープン当初、僕は多くのタスクを抱えていました。
・カフェの業務（コーヒーの焙煎をはじめとするドリンク関係は僕のしごと）
・イベントの企画（シェアオフィスなどの人が集まる場所には必須と思っていました）
・SNSの発信（お金のかからない広報ツールと認識し、必須と考えていました）
・交流会への参加（人脈作りはとても大事だと思っていました。）
資金繰りを改善するには、まずは個室オフィスに入居してもらうことが第一でした。僕は、上記のタスクを全て放棄しました。カフェは1歳と4歳の子育て中の妻一人に任せ、イベントやSNSの更新はストップ。交流会に参加して出来た繋がりをしっかり信頼しあえるまでにするには時間がかかるの交流会にも参加しないように。
つまり、「個室オフィスの入居者をすぐに集める」ことだけにしか時間を割かないようにしました。とにかく「いつか実になる行動」よりも「今すぐ実を収穫出来る行動」だけにシフトしました。そのためにやれることを100個書き出して優先順位をつけ、順番にやっていくことに。
オープン後２ヶ月でキャッチコピーを変更
「"家族がつながる"シェアオフィスって、子供と一緒に働くオフィスでしょ？僕はちょっとなぁ・・・」こんな意見がありました。
「違います。常に一緒に働くのではなくて、急に幼稚園が休みになった時にお子様を連れて来れたり、昼休みに家族を呼んでカフェで一緒に食事できるオフィスです。」と、説明していましたが、世間全体にそれをいちいち説明することはできません。
そこで、オープン後２ヶ月のタイミングで、キャッチコピーを含めWEBサイトの内容を大きく変えました。
・「家族がつながる」→「はたらくカタチを考える」に。
・WEBサイト内の「家族」というキーワードを全て削除。
・ストーリーや価値観を前面に押し出したWEBサイトから、機能や設備を前に出したWEBサイトへ変更。
オープン直後にこの行動を起こすのはとても勇気がいりました。しかし、これを実行することでサービス内容は一切変わらないのに、見え方はかなり変わりました。
ちなみに2021年5月現在のWEBサイトもその当時の流れは残しています。最初はこれよりももっとストーリーや価値観押しのサイトだったんですよ。
20万円、捨てよう。
WEBサイトを修正した後、広告を出すことにしました。
冒頭にも書いた事ですが、2ヶ月半後に資金が残り20万円になり、3ヶ月半後にはマイナス80万円、つまり資金ショートすることが分かっていました。
なら、20万円残しても仕方ないな、と考えました。ということで20万円全額を広告に使いました。
他にも、資金の優先度は当時とても大事にしました。完成時出来ていなかった看板は発注をストップしてもらい、1年間つけませんでした。部屋番号などのサインも後回し。色々なものを後回しにし、全て広告に回しました。
当時は必死なので、頭のネジが飛んでいたと思いますが、それが幸運に繋がりました。20万円の広告を出した直後から驚くほどの見学と入居が決まっていき、広告を出した3ヶ月程で20室中の15室を利用いただけるようになり、事業は最初の軌道に乗ったのです。
広告の他にやったこと
「すぐに実を結ぶ行動」を100個書き出し、実行していきました。広告はその中でも優先度の高いものでしたが、他にも色々なことをやりました。
新設法人宛に手書きで、コーヒー豆いりの手紙を毎晩妻と夜中まで書きました。まったく反応がなかったので600通くらいでやめましたが、半年後くらいにその手紙を持った方が見学に来て、個室に入居していただきました。
知り合いの中小企業の社長に新規事業部を会社の外に作らないか、と営業してみました。こちらは行動量も中途半端で形にはならなかったですが、これからまた取り組みたいですね。
色々な不動産屋に集客をお願いしてみましたが、門前払いをたくさんくらいました。大きな実は結びませんでしたが、1社だけ話を聞いていただくことが出来ました。
僕が使っている備品をかき集めて、モデルルームを作りました。今はコーヒーの発送備品でとても散らかってしまったので、またきれいにしたいです。
他にも小さい取り組みを色々したように思いますが、100個出したうちの10個も行動していないと思います。たった10個で結果が出せました。
その後とこれから
この最初の厳しい時期を支えてくれたのは、まずはGROVING BASEを見つけてくれた会員や元会員の皆さん。本当にありがとうございます。
そしてこんな環境の中でも文句一つ言わずに頑張ってくれた妻と子供達。
それから、こちらから相談するまで何も言わず黙って応援してくれていた両親や兄弟。本当にありがとう。
さて、1年ちょっとが過ぎた2019年には、GROVING BASEの個室はほぼ満室となり、きちんと利益が出るようになりました。2020年から仲間が増え、これからさらに頑張るぞ！という局面で新型コロナウイルスの感染拡大。
2020年はかなりのダメージを負いました。サテライトオフィスとして利用していた大手企業数社が全てテレワーク移行に伴い撤退。毎週土日はほぼ予約で埋まっていたイベントスペースは稼働率ゼロに。利益率の高い事業が大打撃を受けたため、売上の減少以上に利益が減り、オープン当初のように死物狂いでこの冬を過ごしました。
でも、実は今もまだ個室が何部屋か空いています（見学お待ちしてます！）。また個室を埋めることに集中しようとした時期もありましたが、状況が毎週変わるような環境に翻弄され、去年は本当に上手く行きませんでした。
その分、今年はまた新たな仕込みを色々としています。GROVING BASEが大きく生まれ変わり、他にはない素敵な場所になる予定です。
また、新しい挑戦についてnoteや他のSNSでも情報発信をしていこうと思います。楽しみにしていてください！
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