銀座でマーケティングを考える:芸術的なユニクロ TOKYO①
2020年6月19日にオープンしたユニクロTOKYO
ユニクロの思想が思いっきり込められた、ユニークで、クリエイティブで、ダイナミックな店舗でした。
HPはこちら↓
ユニクロTOKYO場所は「無印良品 銀座」の向かい側。
ユニクロと無印はコンセプトは違うものの、一部の商品がかぶっており客層も一部重なる競合でもありますね。
【入り口の前にフラワーショップ】
ユニクロTOKYOでまず目に入るのは、入り口にあるフラワーショップです。
季節の生花を10種類以上ご用意。大切な人と過ごす空間に、自分自身へのご褒美にも。あらゆる人の生活を、より華やかに。ーユニクロTOKYO HPより
普段は花を買う機会がない人でも、こんな場所にあったらちょっと手にとってみたくなります。
ユニクロはただ服を売るだけの服屋ではなく、「LifeWear」というコンセプトのもと「衣服はあらゆる人の生活をより豊かにするもの。」ととらえています。
そう考えれば、ユニクロが売っているのは「服」ではなく「生活の豊かさ」であると考えることができますね。
一束¥390(+税)から気軽に買える花は、生活をより美しく、きれいに、そして気持ちを豊かにしてくれますね。
ただ売り上げや利益という表面的、短期的視点だけで考えると、ここで花を売る必要はないでしょう。
でも、「生活を豊かにする」というビジョンで考えた時、入り口にフラワーショップがあるのはとても素敵なことですね。
機能性やファッション性だけで服を選ぶのではなく、「企業の目指すものへの共感」で服を選ぶのも楽しいですね。
【入ってすぐBrillo Box(ブリロ・ボックス)】
そして、入り口を入ってすぐのところにはBrillo Box(ブリロ・ボックス:アメリカの食器洗いパッド)の展示がありました。
Brillo Boxといえば、アメリカの芸術家アンディ・ウォーホルが思い起こされます。キャンベルのスープ缶も有名ですね。
アンディ・ウォーホル キャンベルのスープ缶
芸術とは一つ一つユニークな唯一のものである、というそれまでの常識を覆して、食器洗いの箱のような大量生産されるものも芸術としてもいいではないか、という思想の転換をはかったのがアンディ・ウォーホルの特徴です。
食器洗いやスープ缶は物としては同じですが、それを使う人の生活は一人一人違います。
同じ物でも誰の手に渡るかで、その人その人の使われ方があり、その人その人の生活の喜びにつながる「唯一性」を秘めているのです。
それと同じで、ユニクロが作る服も大量生産品です。しかし、たとえユニクロの同じTシャツを着ていたとしてもそれを着ている人の生活は一人一人違います。
他のメーカーの服と合わせて楽しむため、家でのんびりするため、友人と遊びに行くため、家族のために買ったりすることもあるでしょう。
物としての服は同じでも、それを買った人の使い方、生活はすべて違う「唯一性」があるのです。
音楽も一緒で、作曲家が作った曲は一緒でも、それを演奏する人や聴く人が変われば全く別の音楽が生まれます。
そもそもユニクロの元の名前は「UNIQUE CLOTHING WAREHOUSE:ユニークな服屋」です。他のどこにもないユニーク(ただ一つ、独自のもの)を販売する服屋ですね。
大量生産品を芸術としたアンディ・ウォーホルの思想に近いのです。
アンディ・ウォーホルの思想を通してユニクロの「LifeWear」の思想を伝えているようで、展示に込められた思いを感じました。
もちろん、入り口入ってすぐ、という「一等地」に商品ではないものを展示しても短期的な売り上げUPにはつながりません。
でも、企業としての思想、考え方、ビジョンを伝えることで長期的に多くの人から愛されて、長期的には大きな利益へとつながっていくかもしれません。
短期的なマーケティングというより、長期的に利益を生み出す「ブランディング」に大きな力を入れていますね。
芸術もそうですが、短期的、直接的に何かの役に立つかどうか、だけが判断基準ではありません。
そういう表面的、短期的な考えではなく、もっと心の底から深い喜びや楽しみ、心が満たされるような本当の豊かさへとつながるのが芸術です。
ユニクロTOKYOはユニクロの企業としての深さを感じられる、とても面白い店舗ですね。
まだまだユニクロTOKYOにはユニクロの思想が溢れているので、また別の機会で書いていきます。
ありがとうございました。
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