中央最低賃金審議会、2021年10月以降の最低賃金目安を決定!

 ■最低賃金3%上げ930円に!

 厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会は、7月14日、2021年度の最低賃金を全国平均で28円を目安に引き上げ(上げ幅は3.1%)、時給930円とすることを決定しました。

 昨年度(2020年度)は、審議会が目安を示せず、結果的に各都道府県の引上げは全国平均で0.1%(1円)増にとどまりましたが、今回の引き上げが実現すれば、全都道府県で800円を超えることになります。

 従来、最低賃金は、都道府県を物価や経済状況に応じて4つのランクごとに目安を示してきましたが、今回は、ランクに係らずすべての地域で28円の目安を提示しました。その結果、最低額の秋田、鳥取、島根、高知、佐賀、大分、沖縄は、現行の792円から28円引上げられ820円となる可能性があります。すでに1,000円を超えている東京・神奈川では、1,013円から1,041円、1,012円から1,040円になります。

 今後は、中央最低賃金審議会の目安を基に各都道府県が実際の金額を決め、10月に新たな最低賃金が適用されます。

 ■最低賃金の引上げは派遣社員の賃金に影響するか?

 最低賃金が引き上げられたからといって、派遣社員の賃金がそれに連動して引き上げられることはありません。2020年の改正労働者派遣法の施行により、派遣会社の約9割が労使協定方式を採用し、ほとんどの職種では、すでに最低賃金を超える賃金が支給されているからです。

 では、全く影響がないかというとそうでもなさそうです。最低賃金が引き上げられる背景には、政治的な要因が大きいところですが、すでに募集の平均時給も上昇しています。リクルートが7月14日に発表した三大都市圏(首都圏、東海、関西)の6月のアルバイト・パートの募集時平均時給は、全体で前年同期比16円(1.5%)高い1,099円となりました。職種別には、以下の通りです。

アルバイト・パート募集時平均時給(三大都市圏)
職種(大分類) 今月 前年同月比較(2020年6月)
平均時給(円) 平均時給(円) 増減額(円) 増減率
販売・サービス系 1,072 1,052 20   1.9%
フード系        1,022 1,019 3   0.3%
製造・物流・清掃系 1,085 1,072 13   1.2%
事務系        1,176 1,129 47   4.2%
営業系        1,330 1,292 38   2.9%
専門職系        1,209 1,188 21   1.8%

 労使協定対象派遣労働者の賃金は、毎年公開される局長通知による統計資料で決定します。令和3年度の職業安定業務統計の基準年(0年目)と比べると、中には、すでにアルバイト・パートの募集時平均時給(小分類)の方が派遣労働者の賃金を上回っている職種があります。

 例えば、一般事務を比較してみると、6月のアルバイト・パートの募集時平均時給では、1,178円ですが、令和3年度の職業安定業務統計の基準年は1,041円です。この数字に地域指数を掛け合わせると実際の地域別の派遣労働者の最低賃金が算出されますが、東京の地域指数である114.5を掛け合わせると1,192円と労使協定を締結している派遣社員の最低賃金の方が高いことがわかります。しかし、その差は、14円しかありません。

 もっとも、同じくリクルートの派遣社員の募集時平均時給調査を見ると、事務職では、1,517円とかなり高くなっていますが、おそらく中小派遣会社では、局長通知の時給額と同等か、多少上回る程度で推移していると思われます。その場合は、派遣労働者とパート・アルバイトの間の賃金差があまりないため、派遣就業を選択しない求職者が増える恐れがあります。

 ■最低賃金の引き上げが、派遣会社にどのように影響を与えるか?

 最低賃金の引き上げは、新規の登録労働者が増加する可能性につながります。給与の上昇が理由です。前述のように、最低賃金が引き上げられると、アルバイト・パートの募集時給が上昇します。それに伴い、派遣労働者の募集時給も上昇する傾向にあります。給与が上昇することで派遣求人の魅力が高まります。それによって派遣求人に興味を持った求職者が集まるため、人材派遣会社としては新規派遣労働者の獲得ができる可能性が高まります。派遣会社としては、営業が魅力のある求人を開拓し、求人に反映させることが求められます。

 しかし、いいことばかりではありません。最低賃金の引き上げによるデメリットとしては、「人件費が増大する」、「稼働率が低下する可能性がある」の2点が考えられます。

 1点目ですが、最低賃金の引き上げそのものが人材派遣会社の人件費増大に直結するわけではありません。しかし、募集時給が上昇することで、新規の派遣社員の賃金があがります。またすでに稼働している派遣社員の満足度を高めるために、給与の引き上げにつながり、派遣会社としては人件費が増加するという問題があります。

 2点目については、最低賃金の引き上げによって派遣労働者の稼働率が低下する可能性があげられます。最低賃金が引きあがることで人材派遣会社の人件費が増大します。従って、人材派遣会社が収益を確保するためには、求人企業との派遣料金を高くする必要があります。しかし、収益を確保するという目的のために派遣料金を引き上げると、求人企業との契約が破棄され登録している労働者を派遣できないという事態につながってしまうと考えられます。そこで、派遣会社は、売上の減少を防ぐ手段を講じなければならないのです。

 ■派遣料金の交渉を有利に進めるためには自社の営業社員のスキルアップが不可欠

 人材派遣の営業は、派遣労働者の労働力を派遣先に提供するサービスを売り込むことです。労働力を提供するには、報酬つまり給与という労働条件が必要不可欠です。最低賃金の引き上げは、給与を引き上げることに直結します。つまり派遣料金を引き上げる交渉を有利に進められるかどうかがポイントになるのです。しかし、派遣会社の営業は、派遣料金の引き上げ交渉を苦手とする方が多いようです。

 では、どうすればよいのでしょうか。これから求められるのは「営業のプロ」です。派遣会社の営業マン派遣料金を抑えることで数字を積み重ねてきた時代は終わりました。従来のスタイルが通用しなくなった今こそ、「営業活動の本質」を見つめ直すときなのです。

 さらに、これからは終身雇用という前提が成り立たなくなります。自分のキャリアは自分でつくる。そういう意味でも、「営業のプロ化」が避けられません。要するに、顧客ニーズが変容しても、顧客の満足、成功のために最善を尽くすことができる「プロ」こそ、これから求められる営業マンの姿なのです。

 会社としては、御用聞きスタイル(人材を売り込む)の営業ではなく、派遣先に提案できるスタイル(派遣社員を活用するメリットを売り込む)のスキルを身につけさせたいところです。

 それに加えて、これからの営業は組織戦であることを踏まえ、組織としても「売ることは営業の仕事」と丸投げするのではなく、あらゆる部門が営業マインドを持って全社でビジネスに取り組む必要があります。そういう意味では、会社は、営業だけでなく管理部門も含めてスキルアップを図る必要があるのです。

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 マイナビが発表した、「中途採用状況調査(2021年版)」では、6割以上の企業は正社員不足を感じており、約8割の企業は経験者採用に積極的ということがわかりました。コロナ禍でも、今後の人手不足を考慮して企業の採用意欲は決して衰えているわけではないことがわかります。

 これに派遣会社が応えるためには、正社員の採用手段を提案する必要があります。派遣社員を正社員に転換した企業は、キャリアアップ助成金を利用して、最大85万5千円が助成されます。そのキャリアアップ助成金が令和3年度から変更され、使いやすくなっています。

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