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時代の車窓から見える、デザインとCGの風景

カズおじいが見た、昔々のグラフィック・デザインの風景。

そう、1970年代初等、グラフィック・デザイン界はどんな風景だったでしょうか。そんな時代の車窓を流れる風景を、少し見ていきましょう。

プレゼン用に使うコンテ・デザイン画は、主にポスターカラーで描いてました。厚手ケント紙かデザインボードです。

竹製の溝引き定規とガラス棒アシスト、面相筆によるレタリングで文字を描いてました。この「溝引き」というテクニックは、たぶんもう世間に残ってないでしょうね。

ネットで「竹の定規」を見ても、いま売っている定規には溝がない。
定規の両側に目盛りが刻まれてます。
本来その片側には、昔は「溝」があったんです。その溝にガラス棒を宛がい、面相筆で直線などを描いていきます。それが「溝引き」です。

そもそも書道でない限り、もう筆で文字を描くこともないですし……。でも、明朝体・ゴシック体(勘亭流や髭文字までも)、全部筆で描いていたんです。

パース図はマーカーを使ってましたが、ウインドウ・デザインとかはポスターカラーが多かったかな。書泉とか岩波とか三省堂とかの店頭ウインドウ・ディスプレイのデザインも沢山やりました。

描いたデザインを見ながら、また職人さんが原寸で実際に描くん(作る?)ですけどね。店頭のウインドウは、工事現場です。
デザインはデザイナー、現場は職人さん。餅は、餅屋です。

当時、グラフィック・デザイナーとしては、ポスターカラーを如何に上手く塗れるかが勝負でした。すべてがアナログの時代です。長~いデザイナー修行生活?(でもないか笑)。

社会の状況では、そろそろ世間に写真植字が出始めていました。
グラフィック・デザイン界にも、少しずつ技術革新の波が来てたんです。
アナログ社会からデジタル社会へ、その序章の時代。

そんな時代から20年くらい経った頃、ようやくデジタル時代が訪れます。
バブルが弾けて大分経ち、大震災とサリン事件を経た頃です。暗~い時代が明けるように、時は進んで行きます。太陽が昇り始めた…。
気がつくと、Windows95と共にインターネット元年と呼ばれる時代になっていました。

小生の経歴としては、本業のグラフィック・デザイナーとして割と早くから、DTPでパソコンを使ってました。
ある意味、草創期です。この時代の話なら少し出来ます。

使用したソフトは、主にMACによるQuarkXPress・Illustrator・Photoshop・InDesign・Dreamweaver・Strata3dが主戦力でした。

それ以前にRayTrekというソフトで、Ray Tracingによる3dCG画像作成をPC98で始めていました。
デザインとは少し離れますが、コンピュータオタクの絵描きです。
パソコンで絵を描いてみたかった。それもなんらかコンピュータ的手法で。

98環境は当然GUI(グラフィック・ユーザー・インターフェイス)ではなく、すべてコード入力での操作・作業です。
C言語をエディタで文字入力し、コンパイラーに掛けてプログラムを作る、と言った方法と同じです。

3dのモデリングは、方眼紙に設計図(平面図と立面図)を描いてました。それを元にモデルの寸法と視点からの距離・画角を、光源の位置・強さなども設定します。

すべてをRayTrekのコードとしてエディタで書きます。そのコードをRayTrekに読み込ませ、レンダリングし画像を作っていくのです。

RayTrekがレンダリング中、ブラウン管には走査線1本づつ画像が描かれて行きます。無力なマシンでしたから、小さい画像でも20分とか30分とか掛かります。

それを無言でじっと見詰めているのです……。だからず~っと仕事する訳です。今思うとこの車窓から見えるのは、ブラックも狂気の沙汰の風景ですよね。

デザイン界は、かつての蒸気機関車「弁慶号」から新幹線「こだま」になり、いまでは最新のN700系。
次はリニアの車窓から風景が見えるはずですが……。

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