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あすキラLabの第二回トークセッション「海外にいるからこそわかる日本の教育」で聞かれた質問について答えます。

こんにちは!カナダのバンクーバーで数学教師をしている梅木卓也です。

フォローやコメントよろしくお願いします。https://linktr.ee/takuyaumeki

3月6日にデンマーク株式会社の有澤さんの司会で、「海外にいるからこそわかる日本の教育」と題してカナダとシンガポールの教育の観点から日本の教育について考えてみるという試みをしました。ゲストの海外教育アドバイザーの草埜さんと掛け合いで様々な観点からお話ができました。

今日はそのウェビナーで出た質問についてできるかぎりお答えしようと思います。

カナダのジェンダー教育や性教育は?

基本的に性教育は体育のクラスの一環でされています。いわゆるPE(Physical Education)と呼ばれていた体育ですが、最近ではPHE(Physical Health Education)と呼ばれ、スポーツだけではなく広い意味での健康全般について教える科目になってきています。

ジェンダー教育では先生や生徒の間でLGBTQのグループが各学校にあり、生徒を呼ぶさいにも He なのか She なのか見た目で決めずに、学期の最初にどちらがふさわしいのか聞きます。なかにはどちらにも属さない They で呼んでほしいという生徒もいます。

また自分にとってより好ましい名前を聞くこともします。そうすることで生まれつきの名前とは違う自分のジェンダーと合った名前を生徒が自己判断で決めるのです。

カナダに教員採用試験はありますか?教員になる人のそれまでの経験は?

カナダでは州ごとに教育の管轄が違い、先生になる仕組みも少し違います。バンクーバー市のあるBC 州に限って言えば、基本的に4年生の大学を終えた後、教員プログラムを1‐2年で終えます。このプログラム中に教育実習を最低12週間して、見事パスできれば教員資格がおります。

ですので教員資格がある人が、また別の試験を受けるということはありません。一番の山場は教育実習を無事パスできるか。高校サイドと大学サイドから最低一人ずつアドバイザーが付き、アドバイザーから先生になるにふさわしいかどうか判断され、許可が下りないとパスできません。

実際一割くらいの人が落ちます。

教員になる人のバックグラウンドはまちまちで、特に数学科で言えば、もともと科学関連で研究していた人や、エンジニアとして働いていた人など、前職もちの人も多々。

僕が教員プログラムをとったUBC(ブリティッシュコロンビア大学)で数学科希望の人たちは、若い人では23歳くらいから上は60歳くらいまでと、様々な職種を経験してから先生になるために集まった人でいっぱいでした。

カナダの高校に進学するにあたり、薬物などの問題が気になります。

実際大麻が合法化されたカナダの社会の中で、薬物に触れる機会がないわけではありません。ギャングなどの反社会的な組織の影響もないわけではありません。

しかしこれは同じ学区内でもどの学校に行くかや、どの生徒グループと繋がっているかによって大きく変わります。つまりこういった問題には地域性がかなり関係しています。

過度に心配する必要はありませんが、そういった影響が存在することを知っておくのはいいことだと思います。また心配な点などあれば、学区内の留学生担当の方にお話することを勧めます。

日本の教育から得られるものって何だと思いますか?逆に海外で中高大行くことで生じるデメリットは何だと思いますか?

これは僕の独断と偏見をもとに答えました。もともとカナダがあっている身の僕。カナダの教育に対してバイアスがあることはわかってもらったうえで、日本の教育から得られるものは何か?

率直に言って、一般的な公立の教育から得られるものは、詰め込み教育による記憶力の向上と、点数を取るための勉強の効率化、そして言われたことに疑問を持たなくなる姿勢だと思います。

このような能力は高校または大学でもテストの点数を取るという点ではこちらでも有利に働くこともありますが、主体的に考え、さまざまな意見を持った人たちと意見をシェアし協調するという点においては非常に逆効果です。

逆に海外、特に北米で中高に行くと、詰込みとは程遠いゆっくりなペースで、自分の意見をもつこと、つまりアウトプット重視の教育が進んでいきます。主体性は育ち、なんでも自分でまず考えるようになり、周りと比べず、協調する。もちろん大学に入れば、専門的にかなり勉強し続けないとついていけません。

英語で学位がとれるかとれないかという前提を外したとしても、日本で得た教育が実社会とくに日本以外で通用するとは思えません。それは一般的な公立教育で得られるものが実社会では要請されていないものだからです。

カナダの教員の流動性はどんな感じですか?カナダの場合、州ごとにかなり違うという話をされていましたが転勤とか転職はしやすい環境なのでしょうか。そもそも職業としてみた場合魅力的ですか?

州ごとに教員資格がおりますが、基本的に同じようなプログラムなので、他の州の教員資格に切り替えることは手間こそかかれど比較的簡単です。

BC州はとくに組合が強く、先生になりたての数年こそ様々な場所で働くことを求められますが、一度正式なポジションが決まれば自分で変わりたいと言い出さない限りずっと同じ学校で働けます。ですので気に入ってしまえば、何十年も同じ学校で働いている先生ばかりです。

ちなみに管理職は何年かごとに転勤を命じられます。

職業としてみた場合、給料はそこそこです。初任給が500万くらいで最終的に1000万くらいです。そこそこというのは、カナダで最低5年以上大学で学んで給料これだけなのという意見があるからです。

ちなみに最低賃金は1500円くらいです。同じような教育を受けたエンジニアや看護師は初任給から先生より断然もらってます。

ですが一年のうち春休みと冬休み2週間ずつで夏休みが2か月であることを考えると、実質9か月働いてこの給料はいいんじゃないかと思ってます。あと副業どんどんしていいのでその点も加味してください。

まとめ

全体の印象として、教育関係の方と、親御さんからの質問が多かったなと思いました。全体とおして有澤さんの名司会もあいまって、思ったことをズバズバと言った2時間とは思えないあっという間の楽しいひと時でした。いいところも悪いところも含めて、カナダの教育について学んでいただけたのであれば幸いです。またこの機会を通して、日本の教育の世界から見た立ち位置が少しでも明白になったのあれば幸いです。

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