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【ストリートバー開業記⑥:メンバー】最も重要で難しい、お店を作る人の集め方

こんにちは。井澤卓です。

仲間とデザイン会社を経営しながら、会社のメンバーで飲食店"LOBBY"と"nephew"を経営しています。

このnoteは、僕達が2021年4月に立ち上げた新店舗"nephew"を立ち上げるに当たり、構想段階から作り上げる過程を書き連ねるシリーズです。

第一章〜第五章はこちらをご覧ください。

第六章の今回は、nephewのメンバーの集まり方について。

何を始めるにしても、一緒に取り組む仲間集めは最も重要なパート。
同時に、最も難しいパートでもあります。

nephewの場合は、本当に奇跡的に、昼と夜それぞれで信頼できるマネージャーがジョインしてくれ、彼等にお店を任せています。

今回の章では、実際にお店に立つ彼等とどの様に出会い、なぜチームにジョインしてくれたのかを書いてみます。

個人店では特に人が重要

飲食店をやる上で重要な要素は複数ありますが、一番大事なことを挙げるとすると、やはり「人」だと思います。

特に僕達の様に、飲食店というよりも、飲食の目的だけに限らず「空間を総合的に楽しむ場」を提供したいチームにとっては、「属人的な人の魅力」に頼る側面はやはり大きくなります。

もちろん料理や飲物の提供物や内装も大事で、集客のフックになり得ますが、根幹で経営を支えるのはその場所に立つ人の存在です。

二年半に渡る二店舗の経営を振り返って、改めてこの結論に行き着きました。

飲食店では、その日の顧客層の70%以上がリピーターであることが理想と言われています。
バーやカフェの様に気軽に毎日行ける業態ほど、常連客が経営を支えてくれます。

その常連客を作るには、お店を体現する人が店頭にいることが不可欠です。

一号店のLOBBYでは、このnoteを書く僕自身を始め、デザインチームのメンバー等作り手自身がお店に立っています。

でも、新店であるnephewではそれが出来ません。
だからこそ、自分達と同じ価値観を持ち、店頭の最前線に立ちお店を作り上げてくれる人との出会いはとても重要。
そして、やはりとても難しいです。

技術があれば良いわけでもなく、仕事を確実にこなせれば良いわけでもない。発起人達の考えに共感し、その上で個を発揮し、お店を進化させる存在が必要になります。そうなるとなかなか出会えないですよね。

この存在を見つけることは、経営が店主に依存する個人店であればあるほど難しいので、新規店舗の出店を躊躇しているオーナーは多いです。

カフェマネージャー:ケイミとの出会い

nephewでは昼と夜で業態が異なるため、それぞれの時間帯でマネージャーがいます。

カフェタイムのマネージャーを務めるケイミは、お店の看板である焼き菓子を始め、現場のオペレーションを1から構築し店舗を切り盛りしています。

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僕達がカフェ経営もお菓子作りも全くの未経験だったので、お店作りの大部分を彼女に任せています。

ケイミとは、一号店であるLOBBYの常連客という形で友人関係がスタートしました。

LOBBYメンバーの一人の親友だったケイミは、職場からの帰り道にお店があったこともあり、一人でも通ってくれる常連さんに。

持ち前の明るい性格でメンバー全員と仲良くなり、活動するフィールドが似ていたこともあり友達のような関係になりました。

そんな彼女から、一年少し前のある時、お店をやりたいと相談を受けました。
詳しく聞くと、「LOBBYが営業していない昼の時間帯でカフェをやりたい」と。

そのときに初めて、昔からの趣味でお菓子作りに熱中していて、将来お店を出すことが夢だと知りました。

当時の彼女は週5でアパレルショップに勤務していたので、退勤後にお菓子を仕込んで休日の2日間を使ってお店をやるつもりだと。

「休みなくなっちゃうじゃん」と聞くと「やりたいことだからチャレンジしたいんです!」と言うので、そんなに本気ならやってみよう!と二つ返事で承諾しました。

僕達自身、「経験は無くてもやりたいことを実現する」チャレンジをしていることもあり、その熱意に共感したし、アクションを起こす人に貢献したいので、嬉しい打診でした。

そうして、2020年10月から、「CHECK IN LOBBY」というカフェ営業が始まります。

とはいえLOBBYはバーとしての認知しかないお店。カフェを始めた当初は中々人が来ず、お菓子が余ってしまう等悔しい思いをすることも。

それでもめげずに、小さな改善を繰り返し、徐々に来店数が増加していきます。
ケイミの明るく人懐っこい性格も相まって、気付けば繁盛店に。

自分が焼いた焼き菓子をイキイキと振る舞い、どんどん新しいファンを作っていくケイミを見ているのは、空間の作り手としても嬉しく、自分達の空間でやりたいことを形にする人の存在は刺激にもなりました。

カフェの運営を経て、僕達もカフェ営業の魅力を再認識しました。
バーと異なり間口が広いカフェなら、お酒に興味がない方や子供がいる方も利用できます。

元々デザイン会社としてのショーケースのためにお店を始めた僕達にとって、カフェをやることでもっと自分達を知ってもらえる。

チームの認知を広げるためには、カフェはまさにうってつけ。そしてそれを最前線で実現するために必要なものを、ケイミは全て持っていました。

自分達にない魅力を持っている彼女となら、お互い刺激しあい、補完し合ってお店を成功させられると感じ、次のお店ではケイミとカフェをやりたいと考えるように。

そしてnephewの物件が決まったタイミングで、一緒にお店を出そうと誘い、本格的にチームにジョインしてもらうことになりました。

その過程はフーディンというメディアの記事にもまとめられています。

そうして新店であるnephewがオープンして半年。
ケイミは期待を大幅に超える結果を残しながら、日々お店運営してくれています。

今では、7時間のカフェ営業でバーを上回る売上を叩き出し、メンバー達を逞しく育て上げお店を牽引。

nephewのカフェ営業の売上は、LOBBYの売上よりも圧倒的に大きく、開始半年で一気に抜かれてしまったほど。

日々悩みながらも試行錯誤を繰り返しチーム作りに挑戦するケイミの姿を見て、やっぱり責任ある立場になった時、人って成長するんだなあとしみじみ実感しています。

僕自身もこの経験を通して、事業を任せた人が成長していく瞬間を目の当たりにするのは、経営者の喜びであると気付かされました。

バーマネージャー:安部ナオナリとの出会い

バーマネージャーの安部は、ケイミとは対象的に、繋がりがない中で自らお店に来て働きたいと志願してくれました。

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安部は元々恵比寿や日本橋のバーで働いていて、バーテンダーとして経験を持った人物です。

次に働くお店を探していたところ、僕のnoteを読み共感したとのことで、直接instagramでDMをくれました。

僕らのような我流の店に、本流の店で技術を習得した技術者が志願して来てくれることは非常に稀です。

当時はちょうど新店を企画していたタイミング。
新店をやるなら絶対にバーテンダーが必要だと考えていたので、断る理由はありません。

早速話をしてみると、以前は住宅の営業マンをしていて、数年前に飲食業界に転身した経歴の持ち主であることや、既存のバー業界の先行きへの考え方等、僕達との類似点を多く持っていることがわかりました。

「柔軟で、常に変わり続けることを怖れない人であれば一緒にできる」と考え、nephewのバーマネージャーを打診しました。

▲hanakoに特集して頂いた記事も是非!

もちろんそれまで繋がりがなかった人物をチームの主要ポジションに据えるというのは勇気がいることです。
ただ、誰もバー業界を経験していない僕達にとって、今後の事業継続を考えた上で、チーム内にバーテンダーがいることは必要不可欠。

現場で技術を磨いてきた彼と、技術力ではない強みで勝負してきた僕達では、お互い起こりうる軋轢はもちろんあるはず。

それでも、その困難を乗り越えて一緒にお店を作り上げることができたら、チーム力は一気にアップする。

オープンから半年がたった今では、お互いに決意を持ちチャレンジして、本当に良かったと思っています。

彼は現在nephewの運営はもちろん、LOBBYのカクテル監修等、幅広い役割を担ってくれています。

▲安部考案のカクテルメニュー

昼と夜を横断し、良いサービスの考え方や衛生管理等、「飲食店のあるべき姿」のベースを作ってくれたことも大きな貢献でした。

飲食店経験が不足していた僕達にとって、こうあるべきという基礎を認識していないことは常に課題にありました。

耳が痛い指摘を含めて、安部のように言いづらいことをチーム全体に言い続けてくれる存在はとても貴重です。

経験豊富な彼がチームにいることで、アルバイトスタッフ含めたチーム全体のプロ意識が向上したと実感しています。

安部は年明けからイギリスへバーテンダー修行に飛び立つことになりnephewの運営からは離れますが、在籍してくれた数ヶ月で多くのことを残してくれました。

小さな個人店だからこそ、発信は超大事

お店のメンバーを始め、僕達の会社に応募してくれる方々は、このnoteをきっかけに興味を持って頂くことが非常に多いです。

採用に限らず、noteを読んで来店してくれるお客様も非常に多いので、想像した以上に経営の助けになっています。

飲食店のスタッフ採用でよくある問題は、とにかくスタッフの離脱が激しいこと。

「バックレ」という言葉をよく聞くように、働く障壁が低い飲食店では、その日の気分で出勤しなくなるなんて話をよく聞きます。

幸い僕達はまだ経験したことないですが、歴が長い先輩経営者達に聞くと、しょっちゅうバックレが起きるらしいです。

バックレって、本当に悲しい気持ちになりますよね。
一方で、それが起こる背景もわかります。

飲食店は星の数程あるからこそ、すぐ別のお店で働ける。
「なんかだるいし、もう行かなくて良いや」と思ってしまうのは理解できます。

だからこそ、事前に経営者の考え方を知ってもらうことが大事。
僕達のお店では、応募フローの中で、必ず立ち上げ当初のnoteを読んだ上で応募してもらう流れにしています。

noteを読んでもらい、経営者の考え方や、お店のコンセプトへ共感していることを立脚点にすれば、入社後のミスマッチを減らせるはず。

ただ正直なところ、それでも短期で辞めてしまうことも非常に多いので、今後も悩みが尽きることはなさそうです。

色々な考え方の人がいて、それが尊重されるべき時代でもあるので、人事は工夫し続けないといけません。

それでもやっぱりチームが大きくなって、新しいことが出来るようになり、関わるメンバーが成長していく姿を見ることは、何ものにも代え難い喜びなのも事実。

今後も悩みながら最適解を探していきたいと思います。

次回は先延ばしにしていた実際の営業状況について書くつもりです。
緊急事態宣言中にオープンしたことによる工夫や、直面している課題について触れていくので、ぜひまた読んでくださると嬉しいです。

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