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だれにとっての便利?

便利さっていうことに対しては、よく考える。この前はこんな話を聞いた。コンビニ払いである支払いをしようとしたら、コンビニの端末が暗くて、文字がよく見えなくて大変だった、と。高齢者が近くにいるとあるあるだったりするんだけど、コンビニという場所で、非コンビニエントなことが起こっているというのもなんだか、不思議な感じがする。
コンビニなんてまさに、便利さの極みを追求したような空間なのに、その便利さを享受できなかったら、だれがコンビニを使うのだろうか、と。でも、日本の高齢化は進んでいて、これから3人に1人が高齢者になり、小さな子どもだとか、買い物しない層をそれに加えると、ほんと人口の半分くらいになってしまうのではないかと思ってしまう。2人1人がコンビニを利用できないって、どうなんだろうか? もちろん、それはコンビニに限らないのだけれども、2人1人が利用できない場所って、決して便利とは言えないよね、っと思ってしまうのは僕だけではないだろう。

たしかに、コンビニも24時間やっているところもあり(最近減ってきたけど)、夜中に仕事をしたり、買い物する人にとってはとても便利だ。あのコンパクトの空間の中に最低限の生活必需品がある。遠くのスーパーまで買いに行かなくてもいい。お金だっておろせるし、各種チケットが購入できたり、いまは、行政サービスの一部を利用したりできるところもある。ひとつの場所にまとまって、徒歩圏にあったりするととても便利であることは間違いないのであるが、でも、これからどんどん無人化が進むのに、端末が利用できないとなると、更なる便利さには、進んでいかないどころか、不便な場所になってしまう。

それはスマホやパソコンもそうで、本当は便利だから使い始めたはずなのに、スマホなんてうちの両親は、ガラケーからの機種変更の手続きだけで何時間もかかって、結局1日で終わらずに2日間もかかってしまった。もうそんだけ時間を取られたらうんざりだろう。もう行きたくないと思ってしまってもおかしくはない。もちろん、対応する店員もしんどい。でも、対応するしかないのだ。

さらに、そもそもスマホの文字は小さくて読めなかったりするから、それも問題だ。そもそも文字が読めなければ始まらないのに(もちろん、ボイスオーバーのような機能はあるけれども)、それってどうなの? と思ってしまう。そんな文字サイズの設定から始めなければならないし、それでも、あの小さな端末で文字を大きくしても、読みやすさにも限度がある。

これらの製品はだれのための便利さを追求したものか? と考えると、やっぱり高齢者向きではないな、と思ってしまう。でも、日本はこれからも何十年間も高齢者が増え続けるので、高齢者マーケットは大きな市場だし、その人たちに使ってもらわないと、ケータイ会社も困ってしまうだろう。そもそも、電話はライフラインのひとつでもあるのだし。

でも、現状そういうことが、僕の家庭だけではなく、世の中で頻発しているのだ。銀行のATMは無人で便利なはずなのに、使えない人のために係の人が立っている(パンデミックになってからは、僕の会社の近くの銀行ではいなくなってしまったけど)とか、不思議だなって思う。そもそもの設計がもう対応できなくなっているのだ。高齢者にわかりにくい端末はどんどん廃れていくか、もう、わかる人にだけわかればいい、というものになっていくだろう。

もちろん、製品やサービスを提供する側もターゲットを考えるので、どういうターゲットに向けて製品やサービスをつくっていくか、というのは、その会社次第だ。でも、行政なんかは高齢者だろうが、子どもだろうが、みんなに対応しなければならない。そういう意味では行政のサービスはなんだかんだ、そのノウハウを溜め込んでいる。うまく改善できているところもあれば、そうでないところもあるけれども、だれもに便利な場所にならなければ、利用する側、利用される側どちらもしんどいので、現場は変わらざるを得ないだろう。たとえ、ゆっくりとしか進まなくても。

便利さを追求した、超効率を目指した社会が高齢化、少子化なんかでだれが機能不全を起こすと想像しただろうか。きっとテクノロジーの力によって、もっともっと歳をとっても便利になるとみんな思っていたのではないだろうか。それはテクノロジーの進化が追いつかなかったのか、それとも、便利さというのは消費者や利用者のためではなく、他のだれかのためだったのか、と思ってしまうこともある。

僕は面倒くさがり屋なので、効率や便利さは嫌いではないのだけれども、この空回りしている世界がとても気になるのである。これからさらに世界が大きく変わっていくなかで、世界はだれにとって便利になっていくのだろうか、と。

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