「新型コロナウィルスから障害者を守るために」 −国連人権専門家カタリナ・デバンダスさん(2020年3月17日、ジュネーブより)

「入所施設や精神病院、刑務所にいる障害者たちの状況はとりわけ深刻です。感染のリスクが高く、外部からの監視もありません。…」

現在、日本国内では、重度障害者たちへの支援の必要性が考慮された新型コロナウイルスへの対策が講じられていないため、さしあたり、国連の障害者人権関連の専門家のコメントを以下に翻訳することにしました。

国連の人権サイトのニュース記事より意訳です。
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25725&LangID=E

より逐語訳に近いものに、以下のものがありました。
https://mecfsj.wordpress.com/2020/03/20/20-3-17パンデミックにおける障害者/

以下は、日本語として通りやすいようにだいぶ意訳しているため、じゃっかん原文からは不正確なところもあるかもしれませんが、その点、ご理解、ご容赦ください。

記事に登場するカタリナ・デバンダスさんは、コスタリカの弁護士さん。二分脊椎の障害のある女性の方です。世界銀行や国連で障害者の人権に関して20年にわたり働き、2014年、初代の「障害者人権特別報告者」として任命された方です。

「新型コロナウィルスから障害者を守るために」 −国連人権専門家カタリナ・デバンダスさん(2020年3月17日、ジュネーブより)

「障害者たちの多くが新型コロナウイルスに対してリスクの高いグループに含まれますが、感染拡大から障害者たちを守るのに必要な案内や支援がいまだほとんど行われていません」と、国連障害者特別報告者カタリナ・デバンダスさんは警告する。
「障害のある人たちは、取り残されていると感じています」とデバンダスさんは言う。
「人と一定の距離をとる、あるいは人と会わないようにするなどの一般的な感染予防対策は、食事や着替えやお風呂などに介助を必要とする重度障害者たちにはほとんど不可能と言えます。」
「それらの介助や支援は、障害者たちが生きていくためには必要不可欠です。そのため、各国政府は障害のある人たちへの支援や介助を安全に継続させるため追加の対策を実行しないといけません。」
デバンダスさんは強調する。「不用意な接触などの感染リスクを減らすために障害のある人たちに対して「合理的配慮」を伴う対策が行われなければなりません。そして、所得が保障されるためにも在宅勤務や有給休暇の取得が認められるべきです。また、障害者を支援していくためには家族や介助者・支援者たちもまた合理的配慮を求めていくのがいいです。」
「障害者とその家族たちが、より一層不安定な状況や貧困状態に陥らないためにも、財政的援助を受けられるようにすることが不可欠です。」
「障害者の多くがいろんな社会サービスに頼って暮らしていますが、それらは停止されつつあります。また食料や衣料品を備蓄するためのお金、あるいは余分に宅配サービスを受けるようなお金も、持ち合わせていないことが多いです。」
デバンダスさんはさらに指摘する。「入所施設や精神病院、刑務所にいる障害者たちの状況はとりわけ深刻です。感染のリスクが高く、外部からの監視もありません。対策に伴う強権発動によって状況はさらに悪化するかもしれません。」
「面会や外出などの制限は、それぞれの状況に合わせて、必要最低限に行われるべきです。家族や支援者などの大事な人との接触が禁止されることによって、入所施設などにおいては虐待やネグレクトが深刻化するかもしれません。」
「各国政府には、障害者たちが置かれている現在の社会構造的な差別状況に対して、それに対応するとても大きな責任があります。」
デバンダスさんは語気を強めて言う。「障害者の命が他の人の命よりも軽く扱われることは決してあってはならない、と今の状況だからこそ言われなければならないです。各国政府対しては、たとえ医療資源が稀少な場合であっても、障害者たちが救急措置含めて保健医療から排除されてはならないと要請します。」
「感染拡大(パンデミック)状況においては、コロナウイルスの感染予防と封じ込めのための情報がすべての人にいきわたることがとても大切です。」
「保健機構からの広報などの公共的な情報は、あらゆる障害者が接しやすいように、聴覚障害者向けの手話言語や、電話リレーサービス、字幕、視覚障害者向けのさまざまなアクセシビリティテクノロジー、読み上げ可能なテキストメッセージ、知的障害者向けの読みやすくわかりやすいコトバ、わかりやすい絵をもちいた表現など、さまざまな手段によって提供されねばなりません。」
「今回の新型コロナウイルスへの対応に関しては、すべての段階で障害者団体の声が聞かれるべきであり、障害者団体の参画が不可欠です。」
国連障害者特別報告者のデバンダスさんはそう締めくくった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?