信念と執念に勝る秘訣はない『成功はゴミ箱の中に』~マクドナルド創業者の自伝~

❝やり遂げろ ― この世界で継続ほど価値があるものはない。才能は違う ― 才能があっても失敗している人はたくさんいる。天才も違う ― 恵まれなかった天才はことわざになるほどこの世にいる。教育も違う ― 世界には教育を受けた落伍者があふれている。信念と継続だけが全能である❞ p.321

本書は、52歳にしてマクドナルドという世界的なファストフードチェーンを作り上げたスーパーパワフルな男の成功物語である。成功者の自伝である故、過去の出来事にはどこまでが事実か疑問が浮かぶ箇所もあるが、泥臭く成功に向けて力強く邁進する姿からは、資本主義の世界での生き様を学び取ることができる。


行動が成功への一歩になる

ペーパーカップの営業、ピアノを弾くアルバイト、ミキサーの販売会社経営、そして52歳には飲食業界に挑戦をする。そんな男の信条は「チャンスを逃すな」。儲かると思った時の行動の速さが彼を大成功へと導いたということだろう。ミキサーのセールスをしていた際に出会ったマクドナルドだが、その噂を聞きつけると真っ先に現地の店へ飛んでいき、一日中店を観察し続けた。50歳という年に加え、経営していた会社も順調だったにもかかわらず、全てをこの魅力的なハンバーガーの店に費やした。彼はビジネスチャンスを逃さなかった。

ホリエモンの『多動力』という本が話題となったが、レイ・クロックの教えもそれに近い。チャンスだと思った時の素早さが成功を決める。それでは、何がここまでの行動力を生み出すのだろうか。本書を読んで読み取れたことは、常に謙虚であること、そして貪欲であることだ。謙虚であるがゆえに自らが未熟であることを知り、成長に向けて努力を続けることができる。そして、貪欲であるがゆえに成功への努力を惜しまないのである。

敵のゴミ箱を漁るほど必死に相手を研究し、自らの強みを鍛える

彼は競争相手の不平不満を認めない。それよりも、相手のことを知り尽くし自らの強みを鍛えることを求める。マクドナルドのビジネスモデルで画期的だったものは、ノウハウを売るということであった。これがチェーン店の成功のもとでもある。普通は、ノウハウを関係の薄いパートナーに提供するなど考えない。なぜなら、それを持ち出されて真似をされれば、自社の強みが消されてしまうからだ。しかし、マクドナルドはそのオペレーションノウハウを惜しげもなく提供し、パートナーとともに繁栄をしたのである。レイ・クロックが自己研鑽に重点を置いていたからこそ、このようなビジネスモデルの発想ができたのではないだろうか。

夢中になって仕事をしろ

彼は典型的なストリート・スマートだ。ストリート・スマートとは経験や実践をもとに学びを得ていく人を意味する。そして、結果を何よりも大切にしていた。どうやって金を儲けるかを教えない大学は意味がないとさえ言う。しかし、学びを軽んじているわけではない。実践を伴わない学びは実世界では、意味がないことを知っていたのだと思う。

これは変化の激しい現代においても、良い教訓となるかもしれない。昨日の正解は、今日の正解ではない。そうであれば、失敗を通して、実践から「自分だけの正解」を見つけることに価値があるといえる。ここでもまた、先回取り上げた『失敗』との付き合い方(=失敗の科学)が重要ということが分かる。レイ・クロックは失敗とうまく付き合う方法を、楽しんで仕事をすることだと教えてくれている。

アメリカン・ドリームを象徴するようなスーパーパワフルビジネスマンであったレイ・クロック 

ここまで突き抜けられないとしても、毎日の仕事を楽しんでやっていれば、自ずと彼に少しだけ近づけるかもしれない。


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