ニッポンの社長単独ライブツアー「ロキソニカ」
舞台監督としてツアーに帯同させて頂きました。ハッキリ言って、これまで様々なツアーや公演を担当してきましたが、こんなに不安を抱えて公演をするのは初めてでした。
公演を観て下さった方はお分かりだと思いますが、最後のコントのオチ!!
あ、ネタバレを含みますので配信を視聴される方はまた視聴後に読んで頂ければ😊
と、言うわけで最後のオチですよ。
綱渡り
これ、本当に実現出来ない可能性大きかったです。時系列を遡ることGW。札幌公演まで1週間前に最終の打ち合わせが終わり、綱渡りをオチですることが決定して、北海道の劇場に概要を伝えて、劇場にある資材や備品などを借りて綱渡りの支柱を作ろうと目論んでいました。
数日後劇場さんから連絡があり
要は、劇場の備品や資材は老朽化しており、綱渡りの負荷に耐えられない可能性が高いのと、事前にそれを検証出来ないので、危険だと。
確かに僕も劇場の備品の老朽化などについては考えていなかったので、この劇場側の判断は間違えていないと思いました。
教育文化会館という公館として、事故や怪我は絶対に避けたいでしょうし、この善悪を毅然とこちらに伝えて下さったことは同じ裏方として、責務を全うされていると感じました。改めて強度などについてもっと深く取り組む必要があると思えましたし、その時は戸惑いましたが、この部分は本当に感謝しています。
さぁこれで綱渡りが出来るかどうか振り出しに戻りました。
劇場の備品借りれない中で、強烈な負荷の掛かる支柱を仮設で作ることが出来るのか。北海道公演では大道具さんもいないので、僕一人で組み上げる必要があります。
劇場さんに、とにかく一度現地で試させて下さい。それで危険と判断されるなら、この演出は不可にします。
どうか我々に現場で検証することだけは許可してください、とお願いをして、それが叶ったのでまた動き出しました。
マネージャーさんに連絡して、当日の朝ホームセンターに行く時間を捻出してもらい、設計図を作り、ある程度の強度を算出しましたが、全然自信無かったです(笑)
これは北海道公演が終わって知った事実なのですが、力学上80キロの荷重には480キロの力で引っ張らないと釣り合わないんです😳
なので両サイドから240キロ以上の力や抵抗が必要になります。
しかし初めての試みだし、事前の検証をすることがスケジュール上で不可能なくらい、公演日間際の変更だったので。
資材を選んで寸法で切って、軽トラに積んで劇場に入り支柱を組み上げ、ウエイト(重り)を120キロくらい積んで、さらに土台になる板を釘で打って固定。
綱渡り用の「スラックライン」を締め上げて、自分で負荷を掛けてみる。
全然ダメ!支柱が土台ごと浮き上がってしまいました。ウエイトの量を増やして、さらに人が乗って重さを追加すると、今度は木材の方に負荷が掛かりミシミシ鈍い音がする🤔
劇場の備品を借りれたらこういう、しっかりとした土台が作れたのですが、それは叶わなかったので、買ってきた資材を追加補強して、なんとかケツが乗っても耐えれる状態は出来ましたが、やはり仮設ですし、ずっと大丈夫かなぁという心配はありました。
もし本番で壊れたら、オチをぶち壊すし、危険だし。。。
本番が無事終わった時は達成感より安心感、安堵感の方が強くて、少しフワッと脱力するくらいの感覚でした(笑)
しかしこの綱渡りは、東京公演でも僕を苦しめます。
東京ではトラスというアルミ製の支柱を用いました。これで木材の脆弱さをカバー。袖に置けるスペースが無いので、舞台にセットとしてレイアウトして無機質だしロキソニカの世界観を損なわないように考えてみました。
トラスは頑丈だし大丈夫ー!!
という安心感は一切無かったです。
というのも、この草月ホールは舞台に釘打ちが出来ないので、舞台に固定する事が出来ません。とにかく重くして摩擦係数を上げるしかないのですが、それぞれの支柱に人やウエイトで約300キロの重さを与えても、舞台面がフローリング的な素材なので、内側に少しずつ滑っていってしまう。。。
本来はワイヤーとかでトラスをどこかに固定など出来たら良いのですが、そんな都合の良い躯体もないので、ワイヤーは持ってきてましたが、もうトラスの摩擦力を上げるしかなくて、下面に両面テープを貼ったり、ウエイトの位置やスラックラインの結び目位置を変えたり試行錯誤の上での実施でした。
何度もシミュレーションはしたので大丈夫だとは思いましたが、本番が終わるまではやはり不安しかないです(笑)1センチでも滑り出したらもう人の力では止められませんので。
最後の漫才劇場が最も安心して綱渡りを実施することが出来ましたが、漫才劇場はとにかく仕込む時間がない!!!
前の公演が終わって、30分後には開場という恐ろしいスピード感。
前日に仕込みはするけど、あんな支柱を組んだままでは他の公演に支障をきたすので、一度外してまた開場前に設置する。
設置だけではなくて、当然ケツも含めて強度チェックする。携わってる人、みんな倍速か?くらいのスピードで仕込み替えしてました(笑)
まぁそんなこんなで、無事3公演ともあの絶妙なオチが出来て、本当にホッとしました。
出来る出来ないの判断で「出来る」と言った瞬間から発生する責任や劇場劇場によってもたらされる多くの懸念から一気に解放された時の、肺の奥から出た安堵のため息は忘れられないです(笑)
そして、この綱渡りという演出を考えた辻は北海道でも漫才劇場でも裏では舞台に一番近いところでスラックラインを自分の手で抑えてケツが渡りやすいよう安定感を増す作業を手伝ってくれていました。
どのスタッフよりも舞台に近い所で、、、
それはこの演出を考えた責任を感じているのか、ケツが転落してケガしないか、様々な事を案じてなのか・・・
答えは簡単です。
辻はケツが毎回踏み外して落下する所を見るのが好き過ぎるのです。
強度チェックやシミュレーションの時からケツが踏み外す度に手を叩いて誰よりも爆笑していました(笑)
コンビって良いなぁ😊
というわけで、綱渡りの部分で自分の頑張りばかりを綴りましたが、各劇場で本当に色んな方の手助けを受けて成立した公演です。北海道の現地スタッフの方や北海道の若手芸人さん、東京ではトラスのアイデアをくれた大道具さんや手伝いに来てくれたYCAの生徒さん(吉本のスタッフ養成所)、全劇場で裏を奔走してこっちが足らない部分や手が回らない所をケアし続けてくれた進行ちゃん。
着替えや転換を自ら買って出てくれた作家陣
そして自ら小道具を組み立てたり、タイツを着て転換にも参加してくれたマネージャーの浅野くん
ここまで中身の部分にまで動いてくれるマネージャー初めてみました。
素晴らしい人たちと共に素晴らしいツアーに携われて本当に良かったです!!
またもっと大きなツアーが出来る日が来ることを願っております!
ご来場、ご視聴誠にありがとうございました!!
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