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ワークショップ作りで気をつけたい3つの罠と対処法

こんにちは、クラウドワークスでチーフエクスペリエンスデザイナーをしている八尾です。

4月からチーフエクスペリエンスデザイナーになりまして、3ヶ月が経ちました。

役割を一言で言うと、「全社のデザイン戦略の策定と推進に責任を持つ人」なのですが、ビジネスとデザインの中間地点がメインフィールドで既存事業の推進/新規事業の創出をしています。

そのため、「課題は何か」「目標は何か」「作るべきモノは何か」といった、比較的抽象的な議論のファシリテーションや、ワークショップをすることが増えています。

そこで、このnoteでは、自分がワークショップを設計する上であるあるだと感じる問題と予防法を紹介します。
(内容としてはいわゆるワークショップだけでなく普段の議論でも使えるような内容にしています。)

1.前提条件がずれている問題

ワークショップを設計する上で最初に抑えたいのは前提条件です。

どこまで決まっているのか
制約条件は何か
参加者は誰か
スケジュールは決まっているか

というように、観点が多くて意外と大変なんですが、あらかじめ洗い出しておかないと、いざ議論を始めたときに、

参加者:「そもそもここから考えませんか?」
主催者:「いや、そこはもう一回決めたしそろそろ動かないとスケジュール間に合わないので、、」
参加者:「え、そうでしたっけ。。てか、スケジュールそんなにパツパツなんですか!」

ということになったりします。

また、前提条件を整理し、参加者全員で合意を取れるような状態を作らないと、ある人はモヤモヤしたまま、だけどちゃぶ台返しになるから言えず議論が進んでしまっているという状況が発生しかねません。

設計のタイミングでしっかりと整理しておき、議論の最初には全員で確認することが大切です。

確認の仕方のコツは、

最初のワークショップや議論の場合
・可能な限り具体的に言語化して共有する
・暗黙的な前提がないかどうか始める前に確認する
継続的なワークショップや議論の場合
・前回までの決定事項や前提条件を言語化して共有する
・プロセスも思い出せるように前回使った付箋などをそのまま見直す

というように、とにかく言語化して確認することです。

とはいえ、暗黙知的な前提は出てこないから暗黙知でもありますよね。
その際は、

「目的の部分だけを前提とするなら例えばプロダクト開発をやめて営業に力をいれるという結論はOKということになりますが問題ないですか?」

と、出ている前提条件にのっとった範囲で極端な例を提示することで違和感を作ります。
そうすることで、

「いや、それでいうと、プロダクトベースでやるべきことを考えるという点は決まってた気がします。」

というような声が出てきやすくなるのでおすすめです。

2.ゴール設定が実はできていない問題

ワークショップの設計の際には、当然ゴール設定をします。
ゴールに基づいて考えるべきことは何かを逆算していくというのが一般的ではないでしょうか。

抽象的な議論ほど、このゴール設定が重要です。
しかし、実はこのゴール設定には落とし穴があり、落とし穴にはまるとゴールが達成されたかどうかがわからない状態になってしまいます。

ワークショップや議論のゴールの中には、「富士山に登る」というように明らかな到達点で設定しづらいこともあります。

例えば、

「ユーザーの課題を決める」

というゴールはそれっぽくて考えられそうですが実は不十分です。
このゴール設定で議論をしてしまうと、

「〇〇な状況で△△をしているときに、××が原因で、□□できない」

という答えも、

「〇〇画面が使いづらい」

という答えも、どちらでもゴールを達成できているように感じてしまうからです。

この問題を解決するには、ゴールがmeasurable(測定可能)であることがもちろん理想ではあるものの、抽象的な議論だと難しい場面もありますよね。

そこで、自分は、具体的な答えのイメージを頭の中で作ってしまうということをよくします。

「ユーザーの課題を決めるという課題に対して、例えばどんな答えが出れば良い議論ができたと言えるのだろう?」

と自分の中で考え、出すべき答えを言語化してみます。
言語化された答えが、例えば、

「〇〇な状況で△△をしているときに、××が原因で、□□できない」

であれば、「〇〇画面が使いづらい」という答えは出したい答えではないので、議論の仕方について、

「プロダクトの画面ベースではなく、ユーザーの行動ベースで考えるように設計しよう」

と考えることができます。
ここでの答えは間違っている内容でも全く問題なく、イメージをつけるために具体例として機能することが重要です。

可能な限り具体的なアウトプットイメージを持つことで、上記の例のような振れ幅が抑えられ、議論プロセスが考えやすくなり、参加者もイメージがしやすくなります。

3.問いの設定があいまい問題

ワークショップの参加者は多くの場合、ファシリテーターが間違った問いを設定していても、間違った問いに答えようと努力します。
与えられた枠組みそのものに疑問を持つのは難しいからです。

なので、最初に良い問いを設定することは非常に重要です。

問いの設定で重要なのは、抽象度と制約条件です。
この2つが適切に設定されていないと、答えが出しづらい、もしくは適切ではない答えが出る可能性が高くなります。

抽象度は、高すぎると、議論が空中戦になったり、進め方で迷子になったりしやすく、具体的すぎると、議論の幅が出ず、観点の不足に気づけないまま答えを出してしまうことに繋がります。

制約条件については、例題を出してみます。
まず、以下の質問に答えてみてください。

以下の中で一番欲しいものはどれですか?
A.最新MacbookPro
B.スタバのコーヒー
C.別荘


答えは出ましたか?


次に、こちらの質問に答えてみてください。

以下の中で今一番自分で買いたいものはどれですか?
A.最新MacbookPro
B.スタバのコーヒー
C.別荘

2つの質問の答えは同じになったでしょうか?
社内のメンバーに出してみると、多くのメンバーが1つ目の質問にはC(別荘)と、二つ目の質問にはB(スタバのコーヒー)と答えました。

この違いは、2つ目の質問には、「今」という時間軸、「自分で買いたい」という主体の制約条件を加えたことです。
こうやってみると当たり前の話ですが制約条件の設定の仕方によって答えは大きく変わります。

この変化に対して敏感になって適切な制約条件を加えることが重要です。

制約条件は、多すぎると、発想の幅が出なくなり、少なすぎると、議論のとっかかりが掴みづらくなります。

この、抽象度と、制約条件を適切にするためには、プロトタイピングで検証するのがおすすめです。
以下のような流れで実施します。

思考のプロトタイピング
1.出したいアウトプットのイメージを固める(2.ゴール設定が実はできていない問題参照)
2.そこに対して適切な問いを考えてみる
3.その問いに対して自分の頭の中か、誰かに考えてみてもらう
4.出てきた答えがアウトプットのイメージにあっているか検証する(答えの質ではなく、それっぽい答えが出てくるかどうか)
5.イメージにあっていなければ、ずれた要因を探り、最初に設定した問いを修正する
6.2~5を繰り返す

2.がプロトタイプにあたり、3.~4.がユーザーテストにあたります。

問いの設定も本番前に試作して検証して改善して、、というだけで、かなり精度は上がります。

まとめ

簡単に言うと、

・前提条件を揃える
・適切なゴールを設定する
・ゴールに適切な問いを設定する

というすごく当たり前なことに落ち着いてしまいますが、意外と奥が深く、工夫のしがいが多くあり、面白いところです。

個人的には、UXデザイナーの役割の1つにチームのクリエイティビティの最大化があると思っており、そのためにワークショップは有効な手段だと捉えています。

ワークショップの設計(議論プロセスの設計)はチームで施策を考えるときも、新規事業を考えるときも、あらゆる場面で使えるのでぜひ参考にしてもらえると嬉しいです。

あと、ワークショップなどは、作る人が一番得られるものが多く、深く考えられるので面倒くさがらずやってみるのがおすすめです!

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