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【コワイの認知科学】誰もがもつ"コワイ"の感情

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆

〜コワイの正体を知るために〜

怖い、という感情は誰にでもある。
そして、怖いという感情について僕らがわかっている事は意外と少ない。

怖いという感情があるから危険から身を守ることができる。
でも、出来れば怖いという感情は克服したい。
そもそも、何が怖いかは人によって違う。

ちなみに僕はどちらかというと怖がりではないと思う。
ホラー映画や小説、遊園地の絶叫系の乗り物などは全然平気だし、虫や爬虫類も割と大丈夫だ。

でも、時々、人の目線が異様に怖い時がある。
機嫌の悪い人が近くにいるとドキドキしてしまうし、周りからの目線集まるといてもたってもいられなくなる。
それが怖いという感情なのかどうかもわからない。

そんなコワイという感情について、科学的にその正体を知ることができれば、それを克服する事も可能なのではないか、と思い本書を読み始めた。

結論から言うと、正直、ボリュームは少なめだが、科学的読み物としては充分面白かった。


〜ヒトの遺伝子に記憶されている"コワイ"〜

ひとつ興味深かったのは、"ヘビ"はヒトやサルなどにとって生まれつき恐怖の対象なのではないかという話だ。

複数の写真の中からヘビの写真を見つける、または様々な写真の中からヘビの写真が表示された時の脳波を調べる、というように、ヘビに対する反応を見る実験においては、大人だけでなく、ヒトの赤ちゃんやヘビを見たことないサルも他の恐怖対象(クモや刃物、銃など)と比べて反応が大きかったというのだ。

そして、"怒った顔"にもヘビと同じ傾向が見られたという。

"コワイ"という感情が生まれるのは、過去に怖い経験をしてその対象を"コワイ"と思うようになる(例えば、犬に噛まれてから犬が怖くなる、刃物で怪我をしてから刃物を怖くなる、など)という、"学習"や"記憶"によるものだと考えられていた。僕もそういうものだと思っていた。

しかしながら、ヒトやサルはヘビや怒った顔などを生まれながらにして"コワイもの"として認識出来る能力を持っていることが実験によりわかったのだ。

ヘビや怒った顔はいわば警戒の対象であり、先祖が学習し記憶したものが遺伝子を通して現代の僕らにも受け継がれていると、推測出来るのだ。
以前読んだ「遺伝子」を思い出すと、時を超えて受け継がれてきたその"コワイ"にはロマンすら感じてしまう。

なお、不思議なのが、本書では同じような危険な生物としてクモを取り上げているのだが、クモはヘビほど"コワイ"という反応が大きくなかったという。さらにトカゲやゴキブリはヘビやクモよりも反応が大きくなかったという。
先祖がどれほどヘビに対して警戒心を持っていたのか、というのを想像して当時の生活など思い描くと楽しくなってしまう。


〜経験から生まれる"コワイ"〜

とはいえ、ヘビを全くコワイと思わない人も世の中には当然いて(かくいう僕もそうだが)、やはり、コワイものは生きる中での体験や経験から生まれるケースが多い。

怪我をしたことがあるから尖ったものがコワイ、食あたりしたことがあるから牡蠣がコワイ、という感情を持つことは想像しやすい。ほかにも、幼い頃に虐待を受けた人は、恐怖を抑制する機能が弱まり、より"怒った顔"に対して恐怖を感じるようになる、という研究結果や、一時的な仲間はずれでもこころにはかなりのストレスがかかってしまいそれだけで対人恐怖症に陥るもあるそうだ。

特に最近では「ケータイ離断恐怖症(nomophobia)」という恐怖症が存在すると主張する学者もいるらしい。ケータイが使えなくなる事に恐怖心を抱いてしまう、というものだそうだ。時代が進むにつれ恐怖の対象も増えていく、という事を考えさせられる面白い例だと思う。


さて、僕が気にしていた、"コワイ"を克服する方法だが、本書で解説されていたのは「怖い体験をする前に大きな声で叫ぶ」というものだ。
ヒトは怖い体験をした後それを抑制するためのメカニズムが働く。いわば、恐怖を感じるとそれを抑える逆の指令を脳が出すという事だ。
大声を出す事で、脳が「恐怖を感じている」と「誤解」して、実際の恐怖を感じる前に抑制機能を働かせることができる、という事だ。

これはいい。仕事で大事な会議やプレゼンを行う前に大声で叫ぶだけで、対人の恐怖をいくらか抑えられるのだから。
しかし、そんな事をしていたら僕が他の人に怖がられてしまうかもしれないが…笑

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