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【隷属なき道】ユートピアを現実のものにするために歩む

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜夢物語を膨大なデータで語る〜

ベーシックインカム、1日3時間労働、開かれた国境。
帯にはこんな文言が書かれていた。

どれも、実現すれば世界中の人々は豊かな人生を歩むことが出来るだろう。そんなものの実現は不可能だ、非現実的だと思う人がほとんどだと思う。

しかし、本書では膨大な量の調査とデータからこの夢物語を現実的なものに感じさせてくれる。目から鱗な話もたくさんあるだろう。
もちろん、すぐにベーシックインカムや1日3時間労働が実現されるワケは無いし、曖昧な部分や不安視される面は多々ある。しかし、かつての人々が思い描いていたユートピアに到達してしまった僕らには新たに目指すべきユートピアが必要なのだ。そうでなければ、人々は歩みを止めてしまうのだから。

〜ベーシックインカムとは?〜

そもそも、ベーシックインカムとは?という事から説明すると、
全ての福祉を無くして、一定額のお金を全ての人々に支給する、というものだ。

日本で言えば、生活保護や奨学金などの学費援助制度、母子家庭に対しての福祉プログラムなどを全て廃止して、一人一人に年間150万円程度を直接支給する、といったものになる。

実現すれば素晴らしい制度だが、もちろん不安視される点は多々ある。

まず、何もせずにお金を支給する事で、怠惰な人たちが増えて働かない人々が増えるのでは無いか?という点だ。
その点については、イギリスで実施された実験で否定されている。ホームレス13人に現金(日本円で約45万円)を渡して、一体何に使うか?という実験だ。多くの人が酒やタバコやドラッグに使うと予想していたが、それに反して彼らは電話や辞書など自分が必要としているものを購入したのだ。数人はそこから仕事を始め見事社会復帰したものもいたという。

その他、同じような調査・実験が行われているが、いずれにおいても現金を与えたからといって人々が働かなくなる、という結果は得られていないのだ。

貧困者はそもそもお金が無いから社会復帰出来ないのだ。貧困者は、日々貧困に頭を悩ませているから、用意されている福祉制度があっても申し込まない。という事実がそれらの実験から明らかになったのである。
ベーシックインカムを導入する事で、結果的には働き手が増え、何倍かになり社会に還元される、と著者は述べている。



〜実現されるまでは狂人と見られてしまう〜

とまぁ、本書を読んでいればベーシックインカムが夢物語ではなく現実味を帯びてくる感覚になる。

実際のところ、まだまだ曖昧だったり不安な点はある。
個人的には財源はどうするのか?という疑問があるが、正直明確に本書でその部分は語られていないように思う。まぁ、福祉制度を廃止するのだからそこにかかる経費や制度を処理するための人件費が削減されるわけだし、後半では国境を開く事でタックスヘイブン(租税回避地)となる国や地域を無くし富裕層からしっかりと税金を徴収することが出来るので、そういった形で財源は確保出来るんだろうな…というのは僕の感想である。

ベーシックインカムで、生活の不安は無くなり、価値のある仕事を見つけ、AIに仕事を奪われてしまう不安を無くし、週15時間労働で、豊かな人生を送る。
そんなユートピアを思い描く事で、人類が前進出来れば、そんな素晴らしい事はない。

本書の最後で著者は締めている。

思い出そう。奴隷制度の廃止、女性参政権、同性婚の容認を求めた人々が狂人とみなされていたことを。だがそれは、彼らが正しかったことを歴史が証明するまでの話だった。

著者はベーシックインカムの導入について、理解されない事を認識しながら、それでも実現する事が可能であると信じている。

いいじゃないか。理想の世界を夢見る事で僕らは歩き続けられるのだ。

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