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ニセ医療

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新刊『日本人のための議論と対話の教科書』「はじめに」を無料公開します。

新刊『日本人のための議論と対話の教科書』「はじめに」を無料公開します。

おかげさまで、無事新刊の発売の日を迎えることができました。

このページでは、新刊の「はじめに」の部分を無料公開しておきます。

もし今後この本を読んで「面白かった、人にも薦めたい!」となった機会などに、このページのリンクなどと一緒に薦めていただけると、「お試し」で序文だけ読めて良いかなと思っています。ご利用いただければ幸いです。

ツイッターなどのSNSでは「社会の逆側にいるあいつらが全部悪い」

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論破と嘲笑のあとに何が残されたのか──陰謀論者対応の実態

論破と嘲笑のあとに何が残されたのか──陰謀論者対応の実態

記事執筆中に能登半島地震が発生しました。人工地震などの陰謀論が、あの人たちによって盛大に語られました。このできごとと重ね合わせて読んでもらえたら幸いです。

はじめに 深みにはまった陰謀論者の家庭は、まるで荒れはてた花壇みたいだった。そこここに残る平穏だった日々の痕跡が、荒廃した家族関係との間に残酷なコントラストを描いている。

 陰謀論者と家族に聞き取りを行い、ネットメディアや論壇誌に記事を寄稿

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神宮外苑/ロッシェル・カップ/社会運動とオリエンタリズム

神宮外苑/ロッシェル・カップ/社会運動とオリエンタリズム


はじめに 大いなる謎があります。神宮外苑再開発に反対する人たちは、一部の樹木が伐採されたあとに改めて植樹される計画を無視して、あたかもコンクリートかアスファルトで満たされた場所になるかのような主張をしています。なぜ事実を歪めるのでしょう。
 また、青山練兵場の踏み固められた広大な土地が、明治神宮創建とともに整備され、施設と道路と通路が並ぶ空間になり、その後GHQによって大きく改変され、さらに手を

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講演中止となった田嶋陽子氏 放射線デマをめぐる福島差別と言論の自由

講演中止となった田嶋陽子氏 放射線デマをめぐる福島差別と言論の自由


はじめに 東京都品川区内で開催される予定だった「男女共同参画推進フォーラム2023」が中止されました。講演予定だった田嶋陽子がテレビ番組で、東京電力福島第一原発の処理水放出を巡って不適切な発言をしていたことを、主催する区が問題視したからです。
 田嶋は、「そこまで言って委員会NP」(読売テレビ)に出演した際、処理水が海洋放出されると「魚の形態が変わってくるんじゃないのか」と発言しました。来日した

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語られてこなかった自主避難/証言で綴る母と子の実態

語られてこなかった自主避難/証言で綴る母と子の実態

整理・タイトル写真
加藤文宏

 筆者と協力者による首都圏からの自主避難者への帰還支援は営利のための活動ではありません。協力者は福島県から神奈川県に避難した震災被災者の女性Hと、この女性の旧友Mでした。MがHに紹介した避難相談が筆者にもたらされて円満解決した実績をもとに、寄せられる事案が増えて第二、第三の相談例になりました。自主避難女性にとって、同性かつ避難者であるHの存在は心を開きやすかったもの

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小保方感ある脳科学者・中野信子さんとニセ科学・創価学会方面の素敵な関係

小保方感ある脳科学者・中野信子さんとニセ科学・創価学会方面の素敵な関係

 先日、東京大学中退を標榜するホリプロ所属の村木風海さんが、文部科学省の原子力関連での有識者会議のメンバーに選ばれて、ただでさえ風当たりの強かった原子力学術界隈では大しけの空模様となりました。

 たまに原子力学会に寄稿したりする私も、まさか足元で「なんだこの人選」と思うようなネタが到来するとは思ってもおりませんでした。

 村木風海さんに関しては、概況を記した別の記事も書いてあって、委員の選考の

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「NEJM論文によればワクチン接種を受けた妊婦の流産率が82%」は誤り

「NEJM論文によればワクチン接種を受けた妊婦の流産率が82%」は誤り

「NEJM論文によればワクチン接種を受けた妊婦の流産率が82%」は誤り。Simon Thornley氏がNEJM論文の数値を誤用して82%とでっち上げた論文を発表したもの。引用元のNEJM論文の流産率は12.6%で通常の流産率と変わらない。その後所属大学から強制撤回された。

【解説】
以下に図示して解説する。

①妊娠完了時の自然流産率=A/B≒12.6%
②妊娠第20週以下で接種した妊娠者の自

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「FDAが開示したPfizer資料に1,291種もの副反応が隠されていた」は誤り

「FDAが開示したPfizer資料に1,291種もの副反応が隠されていた」は誤り

[2023/7/15更新]
「FDAが開示したPfizer資料に1,291種もの副反応が隠されていた」は誤り。それは事前の観測対象リスト(AESI)であって副反応リストではない。これは寧ろ厳密に検証された証左。

【解説】
 米国の非営利団体PHMPTがFDAに勝訴し、Pfizer社が提出した全資料32.9万ページの開示を約束させた。順次開示され現時点で10万ページ相当が開示されているが、これがネ

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「厚労省職員の9割が未接種」は根拠不明

「厚労省職員の9割が未接種」は根拠不明

「厚労省職員の9割が未接種」は根拠不明。F川氏の厚労省問合せのツイートが発信源。厚生労働省の職員数は約32,000人だから全職員の90%が6,300人では計算が合わない。この情報を元に厚労省を騙る悪質な偽画像も出回った。毎日新聞がファクトチェックで根拠不明と判定。

【解説】
厚労省職員数(2021/7/1内閣官房が公表)常勤31,953、非常勤49,349。90%の計算が合わない。職域接種と総接

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通院がいやになったとき 主治医が信じられなくなったとき 読んでほしい患者11人の証言

通院がいやになったとき 主治医が信じられなくなったとき 読んでほしい患者11人の証言

この記事は無料のまま『ニセ医療の入り口と実態』前半まで読めます。有料読者へは記事の改定や情報の追加などがあったときお知らせが届きます。また有料部分の末尾に期間限定で専用の連絡先を用意しました。

心が折れて寛解するまえに治療を投げ出した数多くの人を長期にわたり聞き取りの専門家として取材してきました。このうち11名が経験したことや医療に対しての意見を紹介します。あなたが求めているのは思い通りの治療法

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K医師との想い出

K医師との想い出

まずお断りですが、私は「現在の」K氏の主張は全く賛同しておりません。また、彼の著書について、特に(ワクチンについて事実と異なる発信を行い不安を煽る)反ワクチンの姿勢については苦々しく思ってます。

でも、私が研修医のときには、確かに彼は、尊敬すべき点が多い医師でした。最初の著書も本文を読めば概ね主張は正しく、むしろ現代の医学では当たり前となったことの記載も多いです。

しかし外科至上主義の、医師と

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大量のサプリを摂取。メガビタミン治療でうつが治ると言われた。だが苦痛と後悔だけが残った──ニセ医療問題3

大量のサプリを摂取。メガビタミン治療でうつが治ると言われた。だが苦痛と後悔だけが残った──ニセ医療問題3

メガビタミン健康法でうつ病が治る、がんも治るとされ、しかも自分で治せるとされています。しかし病気が治らず体調が悪化した人がいました。今回は第一回概説編としてメガビタミン健康法とは何か、いまメガビタミン健康法で何が起こっているのかあきらかにします。
なお当連載ではニセ医療を「科学的・医学的根拠に基づかないか検証のしようがない概念で構成される標準治療ではない医療」と定義しています。

メガビタミン健康

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あの人ががんを放置する理由とあの医師が放置を勧める理由──ニセ医療問題1

あの人ががんを放置する理由とあの医師が放置を勧める理由──ニセ医療問題1

がんを放置したままでいたほうが積極的に治療するより生活の質や生存率が高いと主張する医師がいる。だが私たちはがん放置療法を採用して後悔の言葉とともに亡くなった人が少なくないのを知っている。妹を亡くした小林麻耶さんが「麻央は標準治療を受けたがっていた」と語ったのも聞いた。それでもがんを放置したいと願う人があとを絶たず、放置を推奨して患者にエビデンスのない治療と称した行為を続ける医師も相変わらずである。

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ママ友から陰謀論を介して浸透するニセ医療──ニセ医療問題2

ママ友から陰謀論を介して浸透するニセ医療──ニセ医療問題2

ニセ医療をめぐる言論は、ニセ医療とされる行為とこれを行う医師や施術者を語ることに費やされてきた。そこにはニセ医療に騙されないための啓発もあったが、騙される人々の5W1H(誰が、いつ、どこで、なにを、なぜ、どのように)が注目されることは少なかった。今回は、ニセ医療がママ友を介して深く浸透している問題を、騙される人の側から考えることにする。

■前回の記事

脱ステロイドはインスタグラムから

「キラ

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