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あなたにとっての“当たり前”が、意外と面白かったりする。

米国のクラウドファンディングで、約2,000万円を調達したバックパック。当初は「100% Waterproof」という訴求コピーで、プールにバックパックがぷかぷか浮いている動画が衝撃的だった。

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100% Waterpoof を日本語でわかりやすく伝えるにはどうしたらいいのか。Google で「防水 バックパック」を検索してみると、AdidasやNIKEなど、防水仕様のバッグがごろごろと出てきた。

検索ボリュームもそれなりにあり、安定した需要がありそうだ。よし、防水は防水でも「完全防水」という言葉なら嘘ではないし、強力だ。

いや待てよ。これだけ検索している人がいるのだから、完全防水が売れると分かったら、他のブランドも同じような商品を作ってくるだろうな。

そこで、改めて本品に向き合ってみた。クラウドファンディングではサラッと紹介しているだけだったが「“持ち歩き可能”なラップトップスリーブ」が付属している。なぜバッグ本体から取り外せるスリーブを持ち歩く必要があるのか?

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調べていくと、開発したクリスとチャールズはサーファーであった。イギリス人とスイス人のふたりは香港で出会い、朝はサーフィンをし、濡れたウェットスーツをバックパックに入れ、そのままカフェで仕事をするというライフスタイルだった。

なるほど!これはリアルでいい。サーフィンのある「憧れの生活」ではないか。

このストーリーをズバリ伝えるのが効果的なのではという仮説を立てた。こうして「サーファーが開発した完全防水バックパック」というストーリーが生まれた。

販売開始から6ヶ月で1,023人が購入し、3年経った今でも安定して支持され、購入者リストは5,266名にまで伸びた。

まずはMONOCOでストーリーを伝え、共感購入を増やし、少し時間を置いてから東急ハンズとLOFTに展開していくという綿密な販路設計もあり、東急ハンズとLOFTそれぞれ21店舗でもMONOCOと同じくらいの数量が売れたそうだ。

このストーリーを伝えたかったのは、サーフィンはしないが、カフェで仕事をする客層だった。働く環境は固定せず、クリエティブな発想を大切にするデジタルノマドだ。ミニマムなデザインから、意外とスーツやジャケットにも合うことから、通勤バッグとしても見かけるようになった。

クリスとチャールズが「サーファーである」という事実は、実はブランドサイトでは伝えていなかった。ぼくが取材を重ねて分かったことだった。

人は、意外と客観的になるのは難しいのだなと感じた。ストーリーテリングは、主観と客観を、ひたすら“往復”する作業なのかもしれない。

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