売れる本って何だ?

こんにちは。滝口です。

今回は「売れる本」について。
受け売りの部分もありますが、いろんな方の話を聞いて、自分なりに噛み砕いで自分の言葉で書いてみようと思います。

きっかけは質問箱

このテーマについて僕が考えるきっかけになったのは質問箱に投稿された一つの質問でした。

「あなたが編集者なら、好きだけど売れなさそうな本と、好きじゃないけど売れる本の、どちらを担当しますか?

意地悪な質問ですよねぇ。いやありがたいんですけどね?
その時はとっさに
「好きな本を作りたい」っていってしまいましたが、まあ、立て続けにそのあと質問でまくしたてられまして、
「自分は売れる本だと思う」
「プロとしてそれはどうかと思う」
とか、まあ匿名の誰かわからんやつにボコボコに言われたわけですよ笑笑

お陰でしっかりとその問題について考えるきっかけになりました。今となってはありがたい限りです。

まあ1人で考えてても仕方ないので、お得意の図々しさを活かしていろんな人に聞いて見たんです。

意見がめちゃくちゃ分かれる

最初に断っておくと、この話に正解も結論もございません。
なぜなら聞く人によって面白いほど意見が分かれるからです。
つまり僕の「好きな本を作りたい」も間違っていないわけです。
ですが話を聞いていくうちに「好きな本を作る」ということに対する覚悟や思考の浅さを痛感しました。

まず前提として「好きで売れるもの」という選択肢はないとおもってください。それができるのが1番だし、みんなそれを目指すのはあたり前なので。

それでは、そんな僕の考え方を改めさせてくれた大先輩方のご意見、まとめましたのでどうぞ!

プロならば売れるものを作るべき

出版社は営利企業。
慈善事業をしているわけでもサークル活動でもない。
ならば最優先で考えるべきは「自分の好み」よりも「会社の売り上げ」なのは当然だろう。

という意見です。
もうほんと、ぐう正論って感じですよね。

ただ問題なのは「何が売れるか確信を持って言えない」ということなんですよね。

「これは売れるぞ!」と確信を持って言える作品を、自分があんまり好きじゃないってことはあるんでしょうか?
僕的にはこの辺に違和感が残ります。

ですがこの意見には続きがあって
「敏腕編集者」になってヒット出しまくれば好きな本も作っていいということらしいです。
要するに説得力、影響力の問題ですね。
ラブコメ好きだからってジャンプでウケなさそうなラブコメ企画ばっかり書いていても誰も耳を貸してくれないけれど
ワンピースとナルトとブリーチ立ち上げて十分会社に利益出していたら一個ぐらい自分の大好きなラブコメ作っても誰も文句言わないよなってことですね。
確かに「好きなことやりたければ結果出せ」という理屈には納得できますね。

誰が作っても売れる本は作らない

例えばヘイト本。良し悪しは別として、売れる。でも自分は別にヘイト本が好きなわけでも、作りたいわけでもない。
誰が作っても売れてしまう本は、自分じゃなくても作れる。だったらその本の企画はほかの人に回して、自分は自分にしか作れない本作りに専念したい。どの組織にも「結果が出れば何でもいい」みたいな人はいて、そういう人はヘイト本でも何も言わずに作れる。自分が回した企画が売れたらあとでその人に焼き肉おごってもらえばいいかな。

とのこと。

ヘイト本を引き合いに出されると確かになって気になりますよね。作りたくない本、確かにある。それを売れるからといって割り切って考えるのは簡単なことじゃないということもわかる。

でも多分これも、全く売れない本ばっかり作っていいという免罪符にはならにですよね。「自分しか作れない本」に売れる見込みがあるという前提の話な気がします。

ちなみにこの回答をしてくださったのは就活の時の面接官の方だったのですが、隣に座っていたもう一人の面接官はこの人の意見に対して「うーん。。。そうかなぁ。。。」って終始首をかしげていました。
多分その人は売れる本作るべきだって思っていたのでしょう。
社内でも1枚岩にはなれないぐらい微妙な問題なんですね。

前提条件が足りない

こちらは某社の最終面接で役員の方がおっしゃっていたことです。

「売れる本」という言葉は非常に危険で、例えばシリーズ本。複数冊出てからじんわりと売れが伸びてくる場合もある。旅行雑誌なんかはある程度冊数がそろってからでないとまず勝負にならない。
だからその二択には簡単にこたえられない。
「いつまでの期間で」売れる本なのかがわからないから。

とのことでした。

もうほんと、すみませんこんなポンコツな質問してしまって。
おっしゃる通り。初速がものすごくよくても1週間で鮮度が落ちて1か月後にはどこにも置かれていない本だってある。逆にじわじわと売れ続けて何年間も棚に残っているロングセラーもある。英会話の本やパソコンスキル、資格の本などは初速こそ出にくいけど内容が良ければ元棚でしっかりと売れ続けるものも多いですよね。
どちらも「売れる本」なので「いつの時点での売り上げを見て判断するか」の視点が抜けた意見に意味はないんですね。

そうとわかっていてもほかの人にも聞いちゃいますけど。

簡単に「売れる」っていうな

こちらもなかなか厳しいお言葉でした。

自分は元営業部の出身で、新卒の時の部長に言われたことをいまだに覚えている。
「この本、売れると思うか?」
「はい!絶対売れますよ!」
「簡単に売れるっていうな!!!!」
といわれた。
例えば想定読者層が100万人いるビッグテーマの書籍を作って、20万部しか売れなかったらそれは全く売れていない。
逆に想定読者が1000人しかいないニッチな本を3000部売ったらそれは快挙になる。「ここまで売れたらいい」というボーダーは書籍によって違うから簡単にうれると口にしてはいけない。
君がやるべきは自分が本当に作るべき本を想定読者全員に届けること。それができるのならたとえ100部でも売れたことになるし、できなければ50万部売っても褒められたりはしないよ。

しびれますね。。。
どちらかというと「好きな本作るべき」の意見に近いのですが、深さが全然違う。聞けて良かった。この面接落ちたんですけどね笑
ただ想定読者が100人しかいない本を100人に届けても会社には全然利益が入らない。組織人ならその先、届いた100人にどうアプローチをして今後のマネタイズにつなげるか考えられないといけないのかもしれません。

自分の能力の低さ

まず、前提として
「売れる」=「世間、多くの人々が面白いと感じている作品」を、
面白いと感じられない
自分の能力、アンテナの低さを恥じなさい。

一番しっくりきました。

「好きな作品をどう売るか、みんなに知ってもらうか」を考えるのが編集者だ。という意見は多く耳にしますし、僕もそのぐらいのことは考えていました。
しかし逆に市場に自分があっていない(合わせられない)ことを能力の低さといわれたのは初めてでかなり衝撃的でした。

それまで自分は「みんなが好きな作品をそんなに面白いと思わない自分」を人とは違った感性を持っていていいことだとおも思っていました。
「村上春樹の良さがわかるやつ同年代にいないんだよなー」
って自慢気に。。。
恥ずかしい限りなのですが。

でもそうじゃなかった。

「人と違う好み」「異なる視点」「変わった趣味」
どれもあって困るものじゃないけど、それだけじゃだめだった。

大切なのは
「関心の幅」「視野の広さ」「趣味の多さ」
なのだと気づかされました。

みんなと面白いを共有できて初めて自分だけの視点や価値観が役に立つ。
面接の逆質問とは思えないぐらい厳しい言葉をかけていただいて、本当によかったと思っています。(空気自体はいたって和やかで、僕のこれからの成長を本気で考えておっしゃてくださったことはよく伝わっていました。)


まとめ 売れる本ってなんだ?

多くの方の話を聞き、売れる本、好きな本、作りたい本について自分なりに考えてきました。考えて答えが出るものでもないし、考え続けて誰かが褒めてくれるわけでもないけど、考えることを放棄はできなかった。

僕なりに考えてみた「自分が作るべき本」は「想いが乗っている本」だと、今は思います。
「こんな話を書きたい」
「こんな人たちを助けたい」
「このテーマについて知ってもらいたい」
そのための手段としての本。
本はあくまでメディア。届けるべき想いがなければどんなに売れても意味がないと思います。信念や矜持といってもいいかもしれません。

僕は4月から営業部で働きます。
もちろん編集者を目指し続けることは変わりませんが。
そんな時「売れそうなポイント」ももちろん大切だし、おろそかにするつもりはありませんが、
「担当編集がどんな想いでその本を作ったのか」
という視点を常に忘れずに持ち続けていたいと思います。

この記事は多くの方の意見を集約して僕なりにかみ砕いた僕個人の見解です。これらの引用から全く違う答えを導き出す人もいるかと思います。
半分は自分の頭の整理のために書きました。
あとは今就活真っ最中の学生の考え方の一助になればと思います。

僕の記事を読んでく出さった現役編集者、出版社で働く皆様、もしくは内定者の皆様、「自分はこう思う」という意見がございましたらどんどん教えてください。

たくさんの方の意見が聞きたいです。

質問箱でもTwitterでも、noteへのコメントでもなんでも構いません。
ぜひ皆様の考えも聞かせてください!

ではまた、学びがあれば書きます!

ありがとうございました!

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