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定年退職後の私の日々(仕事編4:70歳超まで働く人達)

 暇なので現役サラリーマン時代に担当顧客だった元大手自動車メーカーの偉いさんに久しぶりに”御機嫌伺い”的に連絡をした。現役当時、この人物には納品物の品質問題で結構な迷惑をかけたのだが、どういうわけだか妙に気が合いお互いが定年退職した今でもたまに会って意見交換しているという間柄だ。

 彼は私より5歳年上だが、現在も古巣の関係会社でバリバリとフルタイムで仕事をしている。本人は「会社が不要って言うなら直ぐ辞めるよ。給料もアホみたいに安いし・・・」と当初から宣言していたのだが、会社からは「できるだけ長く働いて欲しい」言われているらしく、「いつでも辞める」と言ってる割には既に9年目に突入しているのだ。

 会社にとって価値のある定年退職者っていうのは彼みたいな人物(極めて安い人件費で高いパフォーマンスを出す人物)の事をいうのである。大して仕事も出来ないくせに、低レベルな”承認欲求”を持て余しているような、どこぞのオッサンとは大違いだ。

1.60歳から70歳超をしっかりと働くということについて

 私が60歳で定年退職して古巣での雇用延長はせずに無職になる・・・という選択をしたことに彼は断固反対した。

 「僕は仕事が無くなる生活なんて全く想像がつかない。そして、あんたは僕と同じタイプだと思う。多分、直ぐに無職になった事を心底後悔すると思うよ。なあ、悪いことは言わないからさ・・・。雇用延長を会社にお願いした方が良いよ」ってな感じで説教された。

 ・・・それから結局3年半が経過して、無職になった事を余り後悔しない私を「意外だなあ・・・」という感じで見ているようだ。まあ、人間は色々と複雑なのだ。

 彼が現在のような立場を維持できている理由の一つは、彼がこれまで長年担当し続けて最も得意としている分野の仕事を今でも担当しているから・・・である。仕事の性格上、現役当時から彼の見識は業界でも超一流であったと思うが、今でもそれは色褪せていないだろう。そればかりか、定年退職後は煩雑なマネージメント業務からは解放されるから(これが給料が激減する大きな要因だが・・・)、本質的な課題に向き合う時間やある種の楽しさも増えているのだろう。

 そのような立場になると、「仕事が趣味」型のオッサンは強い。私には何人かこのような立場でバリバリ仕事をしている知人がいる。最高齢は78歳のバンド仲間だが、「同じ人間なんだろうか?」と思う事があるくらい凄いパワーだ。

2.65歳までは何とかなるだろう。しかし、その先は・・・・

 古巣で雇用延長した先輩、同期等の意見を聞くと、概ねそこそこ有意義に仕事をこなしているようだ。一方で、やり甲斐を感じられない・・等で数年で雇用契約を打ち切った人もそれなりにいる。今や同調圧力的に当たり前となった古巣での雇用延長だが、やはりそれなりに個々の人生が展開されてしまうのだ。

 そして、そこそこ有意義に仕事をこなしている人も、現状では65歳で古巣を去らねばならない。”承認欲求どうする?”、”生きがいどうする?”等々で語られる定年退職者の直面する課題は、今は”60歳問題”ではなく”65歳問題”になったと言える。しかし、この5年間のシフトは実に微妙だ。

 経済的な理由により、65歳以後も何らかの仕事を続ける必要のある人もいるだろう。これは結構大変だ。古巣での雇用延長とは全く違った世界が待っている。どうするのか?

 これにビビっていよいよ無職を選択する人もいるだろう。しかし、お馴染みの”承認欲求どうする?”、”生きがいどうする?”問題が大きく立ちはだかるかも知れない。さて、どうするのか?

 多分、皆さん「何も考えていない」と思う。定年退職後の人生とはそういものなのだ。