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いたいのとんでけ

友人が「抑うつ」と診断された。

彼とはよく会い、ご飯を食べては語らうとても近い仲だ。

そんな彼は仕事を休み、いまも人知れず静かに戦っている。予兆はあったのかもしれないけど、僕にはそうなることがわからなかった。やり場のない想いが僕の中でぐるぐるしている。

振り返れば、この数年で8人。僕のまわりで心身の不調から休養に入った人がいる。すこし遠い関係の人も含めて、「すこしのあいだ仕事を休む」と聞いた人だと、それくらいになる。

何もできない自分はせめて、「うつ」についてちゃんと知らなくてはと、『ツレがうつになりまして。』を観て、『ストレス脳』を読んだ。恥ずかしながら「うつ」について、初めていろんなことを知った。

「心の風邪」と呼ばれるけど、メンタルの話ではなく脳がうまく働かない状態だということ。つよいストレスが関係しているということ。人は長いあいだストレスを感じつづけると、記憶や学習を司る脳の海馬の働きが鈍くなり、ときに脳自体が萎縮するということ(参考になるYouTube)。知れば知るほど思ったのは、これはけっして他人事ではなく、自分も関係する話だということだ。

いつかの僕自身も、たぶん危うかった。

僕はフリーランスと経営者のハーフ&ハーフみたいなワークスタイルを生きて9年目。思うような結果が出ないことはつらいけど、何より孤独がつらいことを知った8年だった。最近でこそメンバーが増えたけど、一人で起業をした僕に、長らく同じ目的に向かって一緒に走る仲間はいなかった(この辺の話はこの長いnoteに書いた)。

当たり前だけど、孤独は、つらい。

医者に何かの診断をされたことはないのだけど、僕も過去に記憶や学習能力が下がる感覚は覚えたことがある。息がしにくくなって、声が出づらくなって、目の前のことにやる気が起きず、何をやってもうまくいくイメージがわかない状態もセットでついてくる。人からポジティブで明るいと言われる自分でも、継続的なストレスはそういった状態に人をおいやる。

そんな僕が8年の歳月をかけて知ったことは、「周りに人がいるのに孤独」という状態があること。そして、ときに本人はそのことに気づかないということだ。

僕の場合、約束が何もない日中でもカフェに行けばバリスタの友人がいたし、夜ご飯を食べにいこうと気軽に誘える友人がいた。でも、楽しい時間を経て、さよならまたねをした次の瞬間、僕はまた一人に戻るのだった。

喜びも束の間、また一人の現実に戻るのだ。

いや、正確には一人じゃない。『キャスト・アウェイ』のトム・ハンクスみたいな一人ぼっちではない。周りには話せる人がいるし、すぐ近くに友人もいる。でも、だからこそ孤独だという自覚がなかったのかもしれない。「周りに人がいるのに孤独」なのだ。

『イントゥ・ザ・ワイルド』で主人公は「Happiness is only real when shared.(幸せは誰かと分かち合ってはじめて現実になる)」と悟る。好きな言葉なんだけど、僕なりにすこし言葉を変えると、「同じ目的に向かって一緒に走る仲間がいると人生はより豊かになる」だ。

いま思えば、僕がつよいストレスを感じていたのは、「同じ目的に向かって一緒に走る仲間」がいなかったからだ。同じ目線で会社の未来を考え、苦しい局面を共に乗り切ってくれる仲間。あるいは志を共にして、一緒に歩んでくれる仲間。起業家もフリーランスも、そんな仲間がいるだけで孤独からくるストレスはかるくなるだろう。

「当たり前のことを声高に言うなよ」。そう言う人もいるかもしれない。

でも、この孤独を自覚していない人もいると思う。人によるかもしれないけど、自覚がなくて「なんとなくつらい」よりも、孤独を認めてしまった方が気が楽になる。もし、それを恥ずかしいことだと思う人がいたら伝えたい。孤独であることや仲間がいないことは何も恥ずかしくないし、これから状況を変えていけばいいだけの話だ(僕は8年ものあいだ、そんな日々だったよ)。

ちなみに僕もまだまだ孤独を感じることが多い。誰かと共同創業したわけじゃないから、これからも出会う人を口説き、VannやAunaという会社・ブランドにjoinしてもらわないとならない。「同じ目線で」なんて、かんたんな話じゃないから、まずは同じ方向を向く時間を一緒に増やしていきたい。

さて、例の友人とは何度か会って話したあと、「いつでも電話してね」と伝えた(どうすればベストなのかをさんざん考えたものの、いまだになにが正解なのかわからない)。世間は気にせず、彼のペースで、できるだけゆっくりでいいと思っている。

ただ、心から思うのは、また会いたい。

会って、いろんなことを話したい。

それまで僕は僕の人生を全力で歩む。そして、ときどき祈る。


いたいの いたいのとんでけ。


picture source:https://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA000082D3I

ありがとうございます!好きな本を買うか、旅に出ます。