見出し画像

セレンディピティ・イン・ウメダ

ニューヨークを舞台にした映画には名作が多い。
中学時代に憧れに憧れて、主人公に似たメガネを着け、ジャン・レノの出ていたタバコの広告を部屋中に貼っていた「レオン」。あれも舞台はニューヨークだった。
恋愛映画でいえば、「セレンディピティ」。有名な映画ではないが、好きで何度も観た。偶然出会った男女が甘い夜を過ごすが、女が男に「運命だったらまた会えるよね」と言い、別れる。主人公の男はもう一度彼女に会いたいと探し、やがて再会を果たす。その映画に出てきたセントラルパークが衝撃的だった。冬のセントラルパーク、世界一の大都会の中にありながら、聖域のように静かでロマンチックな公園で二人はアイススケートをする。
当時は今ほど日本に都心に魅力的な公園はなかったと思う。まだ学生だった僕は、都会の中にこんな公園があるんだ、アイススケートが公園で出来るんだ、とショックを受けた。
あれから二十年くらい経つ。
今日、娘にせがまれて、うめきた広場にあるつるんつるんというアイススケートで遊んだ。「大阪駅」とこれでもかと太いフォントで書かれた看板の下、大阪を代表する世界的建築家安藤忠雄が設計監修した階段や建物に囲まれた広場にアイススケートのリンクが今冬設置されている。子どもから外国人、謎にうますぎる老人まで、上手い下手はあれど思い思いに滑って楽しんでいる。僕も三十年ぶりのスケートで、けして上手には滑れなかったけど、2時間たっぷりと子どもたちの相手をして、ふくらはぎはパンパンになった。
セントラルパークほどの大きさではないが、世界有数の乗降客数を誇る梅田(大阪)駅のすぐ前で、セレンディピティばりにスケートを楽しむ。すぐそばには、駅前で世界一ともいわれる公園を抱えるグラングリーンが工事中、その先には世界的な人気を誇る梅田スカイビル。
ロマンチックなデートではなかったけど、可愛い子どもたちの手を取り、スッテン転び、笑い、楽しんだ思い出は何にも代えがたい。夜にはイルミネーションがキラキラと輝きを放っていた。東京にもこんな駅前広場、ないんじゃないだろうか。
日本中に、世界に誇れる街になってきた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?