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11.17 汚い言葉は自分を守るためだけに使うんだよ。 (ぱきぱきダイアリー)

街でピースボートの貼り紙を見た。

約100日間の船旅で、約100万円。学生時代からピースボートの貼り紙はよく目にしてみたけど、このコスパについてふと気になったので考えてみた。

答えはすぐに出た。高くはない。

私は20代の時に、1ヶ月半かけて船と電車とバスなどを乗り継いで大阪の港からインドまで行ったことがある。泊まった宿は全て行き当たりばったりで選んだ安宿で、食事も何を食べたのか今となっては思い出せないほど簡素で適当なものがほとんどだった。それで、全部でだいたい30万ほどかかった。(はっきりは思い出せないけど、その時の全財産が40万円だったので、それよりは安かったはず)

45日間で30万円、行き先自由、予定は未定。でも安全の保証はない行き当たりばったり貧乏旅行と、

100日間で100万円。行き先は決まっているけど、だいたいの安全が保証されているほぼ世界一周の船旅。

どっちが好きか、というのはとりあえず置いといて、こうやって比べてみれば、ピースボートは高くない。私はそう思った。

学生街のあちこちの飲み屋のトイレで、めちゃくちゃに酔っ払った頭の中で「ピースボート?100万円?高っ。なんだこんなの、青春ぶりやがって」みたいな妙なつっかかり方をしていたな。

あの反発心は、モラトリアムをぐだぐだと生きている時に「100万円でこんなことができる」という例を唐突に見せつけられることに対する怯えだったのかもしれない。

そんなふうに思ったことを、札幌の繁華街を歩きながら8歳の娘に話してみた。

娘はいつもそうするように、私の話を聞いているような聞いていないような曖昧な表情で斜め下を見て、道路の敷石を選んで踏んで歩いていた。

そしてこう言った。

「私も、100万円って書いてるのを見て、『たっけ!!!』って思ったよ」

念のために説明するが、『たっけ!!!』とは、「高い!!!」という意味である。

あー話したいことと別のことが今ここに放り込まれたぞ。と私は思った。

小学2年生になる娘は、最近こういう言葉をよく使うようになってきたのだ。たっけ!くっさ!まっず!うっせ!

子供に対して、汚い言葉づかいを諌めたくなるのはなんだか不快だからだ。自分だって汚い言葉は使うのに、子供が使うとなんだか変な背伸びを見てしまったような気持ちになって、いたたまれなくなる。

でもそんな理由だとぱっとしないので、えてして大人は説得力を高めるためにいろんな理由をくっつける。

女の子なんだから綺麗な言葉を使いなさい。
そんな言葉遣いだと嫌われるよ。
とかなんとか、そんな感じ。

でも女の子だから綺麗な言葉を使わなきゃいけない理由などない。そこに性別くっつけるなよ、ってむしろ私は主張したいタイプ。だから私が娘にこれを言ったことはない。

そんな言葉遣いだと嫌われるよ、というのも、罵倒したわけではないのなら、言葉遣い程度で嫌うような友達だったらいらないよな…なんて思っちゃう。だからこれも、罵倒語以外の時は使わない。

だから今回は、私はこう言ってみた。

「あなた、今日はせっかくすごいおしゃれして街に出てきたでしょ。それでそういう言葉を使うと、なんか台無しだよ。ファッションと言葉がちぐはぐなんだもん」

ちょうど乗り込んだエレベーターに鏡があった。娘は鏡を見て、赤いコートとベージュのカチューシャをさわり、笑顔を作った。

ここでこの話は終わったように感じられた。でも私はなんだか足りないなと思っていた。そして少し考えて、こう続けた。

「でもね、汚い言葉を使わないといけない時っていうのはあるんだよね」

「そうなの?」

「お母さん、若い頃に東京に住んでいたでしょ。東京は人が多いから、夜とか歩いてると酔っ払いがぶつかってきたりするの。で、向こうからぶつかってきたのに、じゃまだコラァ!とか言ってきたりするんだよ。そういう時、お母さんは…若くて血の気が多かったからね、ぶつかってきたのそっちだろコラァ!とか言い返したりしていたわけ」

「えー!すごいね」

「でも、今思うと、そうやって言い返したら殴られたりする可能性もあるわけで、危ないことしていたなって思う。」

「私だったら逃げる」

「うん、それがいいかもしれない。でも…たとえば、まあ道でぶつかってくる酔っ払いじゃなくて…学校でだれかにいやなことを言われたらさ、バーカ!とか言われたらさ、バカはお前だろバーカ!って言い返したっていい、ってお母さんは思うわけ」

「汚い言葉で言ってきたから、汚い言葉で返すっていうこと?」

「うん、そう。まあ、きれいな言葉で言い返せたらそっちのほうがいいけどね。それって難しいでしょ。バーカって言われたら、バーカって言い返すのは、お母さん的にはアリ。言われてただ泣くよりは、ずっといいと思うんだ。」

「そっかあ」

「そんなふうにね、汚い言葉は、自分を守るためだけに使うといいと思う。何かいやなことを言われたりされたりして、心の中からその言葉が出てくることってある。それを言うのは、アリだと思う。すごくいいことではないけどね、アリ」

ここまで話したところで家に着いた。我ながら、いい答えが出たなと思った。

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漫画を描いたりエッセイ書いたり。noteでは『毎日、いい気分。自分の機嫌を自分でとるためのカンタンTips』「ショッキング・ブルーデイ』販売中。

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ぱきぱきダイアリー
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