イングランド対ニュージーランド~白い壁の前に崩れ落ちた黒い王者

盾と矛、どちらが強いか

ニュージーランド・オールブラックス。W杯を2大会連続制し、W杯では敵なしの王者。サッカーのスペインも王者として一時代を築いたが、そんな比ではない。何をやらせても最強なのだから。

そんなオールブラックスを倒すために、恐らくイングランド代表監督に就任した直後から、鉛筆をなめ、虎視眈々と計画を立ててきたエディー・ジョーンズ。強靭なフィジカルという最強の盾ばかりを使っていたイングランドに攻撃という矛を植え付けた。W杯という1ヶ月半という長い間でもそのパフォーマンスを維持できるのか。

物理的圧力を全面に出して圧倒

前半の立ち上がり、キックオフ・マイボールで敵陣に蹴りこんだイングランド。タッチキックでボールを蹴り出されマイボールラインアウトからの攻撃。

この中で見せたイングランドの戦いかたは、とにかく圧倒的な圧力でゲインラインを切り続けることだった。エンジン全開、絶対、この攻撃でトライを取って帰る。全員がその意思をNZにぶつけていた。

NZのディフェンスの特徴は、前にラッシュをかけずにゾーンで守る。1人1人の守備力の高さをベースに、少しでも孤立したらターンオーバーからのカウンターで一気にトライをとる。

しかし、イングランドはそれを利用して前にで続けた。相手が1人ならこっちは2人、というようにNZにターンオーバーされる前にボールを確保、すぐに次のランナーなボールを持たせ、またゲイン。気がついたら、薄い盾に強靭な矛が突き刺さり、2分も立たずにトライを取ったのだ。

圧巻だった。

いつかは返せるオールブラックス

ボールを持てない時間が続き、守備を強いられる時間が長くなったNZ。自陣でのペナルティは命取り。反則なしで守り続ける。

ワイドな攻撃を摘んだ的確なラッシュディフェンスに耐え続け、いつかはターンオーバー出来る、と信じ続けていた。しかし、なかなかミスがでない上に、ゴール前でのディフェンスなので結局、キックで逃れ、またイングランドボールでのリスタート。

蓋をされ続けたNZは無得点のまま後半を迎えることになる。

緊張感がNZの焦りを生む

後半もイングランドペースは変わらない。それどころか、積極的にボールを維持して展開するNZに対し、ピッタリのタイミングでイングランドがビッグヒットを連発する。ブレイクダウンでは圧力をかける。キックを蹴ってもイングランドのカバーリングが早い。

結局、NZは敵陣ゴール前のラインアウトミスをトライに繋げた、ただその1本しかトライがとれなかった。

ペナルティゴールを決めて着々と点差を広げるイングランドに対し、何もできなくなったNZ。こんなオールブラックスを見たのは始めてだった。

セットピースが勝敗を分ける今大会

この試合を観ながら、日本vs南アの試合を思い出さずにはいられなかった。スクラム、ラインアウトでのマイボールのキープが出来ないと、最終的に色んな意味で不利になる。

鍵がかかったドアを、鍵で開けるNZや日本、ハンマーでぶち破る南アやイングランド。特徴的なのが、ラッシュディフェンスでその後も圧力をかけることで外に展開させない、時間を使わせる、という点が共通している。唯一、そんなプレッシャーの中でもポンポンとパスを繋げるのはフィジーくらいかもしれない。

あの圧力に屈しない別の攻撃戦術が必要になるということだろう。NZや日本は、より切れ味の鋭い攻撃方法を模索する必要がありそうだ。

決勝はイングランドvs南アフリカ。最強で最大の地上戦が繰り広げられることは間違いない。

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