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■第2回 理念経営って何がいいのですか?(2)

1 理念経営のメリットは経営全体に及ぶ

 前回より始まった新シリーズ『武田斉紀の「理念経営 ホンネの疑問」』。これまで私が多くの講演や執筆、企業向けコンサルティングを進めてきた中で、みなさんからいただくことの多かったホンネの疑問に対して、毎回具体的かつ実践的に回答していきます。

 第1回では、ホンネの疑問にお答えしていくに当たり、まず改めて「経営理念(企業理念)とは何か、理念経営とは何か」について私の考えをお話しさせていただきました。

 理念経営とは文字面ほど難しいものではなく、初めにトップである経営者がこの会社を通して「何を大切にしながら、何を目指したいのか」(経営理念≒企業理念)をはっきりとさせること。

 その中身はどうあるべしと人に言われるものではなく、経営者が本気で本物なら人それぞれでいいこと。そして明確になった理念を提示し、共感できる従業員と共に目指していくことなのです。

 「理念経営って何がいいのですか?」の答えとして、一旦、経営トップ“ならでは”の良い点(メリット)をまとめておくと以下のようになります。

■経営トップ“ならでは”の理念経営のメリット

〇「自分がこの会社を通して何を大切にしながら、何を目指したいのか」が明確になって迷いがなくなり、まい進していける
〇経営者や人生を終えるときに、自分がやりたかったことがやれたと思えて満足感が違う

 第2回も引き続き「理念経営って何がいいのですか?」の疑問に対して、会社全体としての5大メリット、今の時代ならではの局面によるメリット、そして特に働く側(従業員)の視点で見た場合のメリットについてご紹介します。

 またメリットだけでなく、理念経営の課題についても取り上げてみたいと思います。


2 迷いがなくなり、一人ひとりが自律的に行動できるようになる

 まずは会社全体としての5大メリットから。

■理念経営の会社全体としての5大メリット

 (1).経営が意思決定で迷わない
 (2).上司が部下の指導で迷わない
 (3).従業員が自律的に行動し、生き生きと働く
 (4).社内の意思が1つになり、とてつもないパワーを発揮する
 (5).顧客や社会に理解され支持され、お得意様が増えてブランド化する

 順番に説明していきましょう。

 「(1).経営が意思決定で迷わない」については、先ほどまとめた「経営トップならではの経営理念のメリット」にもありますが、同時に会社全体としても大きなプラスといえるでしょう。

 私はよく“振り子”に例えるのですが、振り子の上の部分=支点には経営者がいます。ここが少しブレて振れると、その下はどうなるでしょう。幹部は経営者よりも大きく振れます。さらに下の管理職や末端にいる現場の従業員の振れ方といったら想像以上です。

 社長が「昨日はお客様を大事にしろと言ったのに、今日はもうけるためにはお客様は後回しにしろと言っている」とブレたら、振り子の下にいる人たちは何を信じればいいのか、どちらに動けばいいのか分かりません。

 経営者には、言葉の裏に経営者なりの考えがあるのかもしれませんが、従業員には、経営者の考えを完璧に理解するのは困難です。昨日は右に、今日は左にと大きく振られ、走り続けるだけで疲れ果てる。現場は混乱するばかりで判断規準がもてなくなる。結果、具体的に指示されるまで動くことができなくなってしまうのです。

 片や、「最も重要なこと(経営理念=目的や価値観)はこれこれで、これらは絶対にブレないけれど、それ以下のことは世の中の変化や市場環境、その日の状況によって判断は変わるよ」ということであれば、下の人間は納得がいきます。

 経営者と同じレベルで考えることができなくても、経営理念が明確でブレなければ、「(2).上司が部下の指導で迷わない」。幹部は理念の判断規準に沿って、自分の担当する部署では目の前の課題をどう捉えてどう対処すればいいのかを考え、判断し、指導することができるのです。

 さらに現場ではどうでしょう。現場の日常は判断の連続ですが、上司がメンバー全員に四六時中付いているわけにはいきません。そもそも1人でやるべき仕事をいつまでも上司がついて2人でやっていては生産性も上がらないでしょう。

 特にサービス業など接する相手が人間で、都度さまざまな要望がある業種では、従業員一人ひとりの現場での判断と行動(対応)がそのままお客様の満足となり、逆に不満にもなる。

 かといって判断をいちいち上に仰いでいたら、目の前のお客様の不満は増すばかりでしょう。待たされるくらいなら他に行くよと言って、二度と来店してはくれません。

 いくら会社として立派な経営理念を掲げていても、接する従業員の対応がそれと異なれば、「この会社は言っていることとやっていることが違う。信用できない」と思われてしまいます。

 従業員一人ひとりの基本教育とともに、経営理念を現場の一人ひとりがその場で判断できるレベルにかみくだいた判断規準(=行動規準)が必要です。

 行動規準を基に従業員一人ひとりが考え、判断して行動できればどうでしょうか。目の前のお客様は待たされることなく、会社が掲げる経営理念に書かれた期待通りの対応を約束されます。

 「この会社は自分の期待やニーズにしっかりと応えてくれる。だからもう他には行かない」とならないでしょうか。

 直接お客様に接することのない現場でも同じことです。

 マニュアル化できないような判断場面は日々生まれます。都度上司の判断を仰ぐべしという会社もあるでしょうが、現場でも考えられる判断規準があらかじめ示せていたらどうでしょう。その日の状況は現場の従業員のほうがわかっています。

 ブレない判断規準に従って彼らが判断できれば、時間も短縮できて生産性も上がるでしょう。自ら判断した本人は自信もついて、仕事のやりがいも増していくのではないでしょうか。「(3).従業員が自律的に行動し、生き生きと働く」ようになるのです。

 直接的、あるいは間接的にでもお客様の反応が加われば、ますます手応えを感じながら仕事に取り組むことができます。

 ちなみに上司は現場の従業員が自ら判断できない、解決できない場合にだけ関わるべきです。あとは事後報告でいいのです。

 上司はむしろ、担当部署の商品サービスのレベルをさらに一段上げたり、現場の判断事例を共有して対応レベルを上げる、人材を育成することなどに時間を割くべきでしょう。


3 会社全体が1つになって大きな力となり、顧客や社会から支持される

 経営の大方針としての経営理念が明確でブレないと、幹部から現場の従業員に至るまで、働く人たち全員にとって安心と信頼感が生まれます。

 同時に同じ目的に向かい、大切にしたい価値観を共有しているという一体感が生まれます。

 一人ひとりがそれぞれの持ち場で理念の実現に向けて働き掛けながら、同じ職場の仲間同士、あるいは関連するセクション同士で連携し、力を合わせるようになる。「(4).社内の意思が1つになり、とてつもないパワーを発揮する」のです。

 真に理念経営が浸透している会社においては、理念の実現において上も下もなくなります。社長も幹部も管理職も一般社員も、理念を実現していく上ではただ立場が異なるだけであって、同じ一員なのです。

 ある日、ディズニーランドの園内に社長がやって来て、たまたまごみが落ちているのを見つけたとしましょう。社長はどうするでしょうか。近くにいるキャスト(従業員)を呼びつけてゲスト(来園者)の前で叱り、すぐに片付けさせるでしょうか。

 いえいえ、きっと自らそっとごみを拾ってポケットに入れるはずです。なぜなら「夢の王国」という理念実現の前では、社長も現場のキャストも同じ一員だからです。

 経営理念は経営者が打ち出したものであっても、打ち出した瞬間から社長以下全員がその実現者として同じ立場であるべきです。今日入ってきた新入社員が、「うちの理念の精神からすると現状のこのやり方はおかしいと思います」と社長に進言して大いに構わないのです。

 最近の社長は元気がないと思ったら、「私はこの会社の掲げる理念の実現に向けて頑張っています。社長ももっと頑張ってください」と言っていいのです。

 それを頼もしいと思える社長こそが、自身の掲げた経営理念の実現を“本気で”目指しているといえるのではないでしょうか。

 全員がより高いレベルでの理念の実現を目指して切磋琢磨(せっさたくま)することで、事業もサービスもより磨かれていきます。

 すると自社の目指す理念が自然と世の中に伝わっていきます。ネットやSNSの時代にあって、そのスピードはかつて想像もできないほど速くなっています。「この会社の商品やサービスが好きだ、自分に合っている」というお客様が増え、彼らは次第にファンになっていきます。

 “この会社ならではの価値”が広く認められるようになれば、「ブランド」化の兆しです。「(5).顧客や社会に理解され支持され、お得意様が増えてブランド化する」。

 「この会社の商品やサービスは〇〇という点(価値)において絶対に裏切らない」という信用がブランドとなり、さらに価値が高まっていくことで強力なブランドへと育っていくのです。

 「理念経営の会社全体としての5大メリット」には加えませんでしたが、間接的にもう1つ目に見えないメリットがあります。それは、「(6).理念の実現という高い理想を目指していれば、コンプライアンス(法令順守)についてしつこく語る必要がなくなる」ということです。

 コンプライアンス教育を否定するわけではありませんが、新たな法律ができた場合や専門的な業界ルールなどを除けば、多くは「人として当たり前」の内容です。

 「これはやっちゃダメ、あれもダメ」と分かりきった「ダメなこと」を、毎年時間をかけて繰り返されても人は元気になりません。小さな子どもに「これはやっちゃダメ、あれもダメ」と話していると、萎縮して何もできなくなるのと同じです。

 翻って経営理念の多くは、「やっちゃダメ」ではなく、「もっとやろう」という内容です。

 「もっとやろう」「さらにもっと上を目指そう」と全員が前向きに取り組み続けていたら、コンプライアンスにひっかかるような悪いことを考えている暇などないはずです。

 人間は暇だから悪いことを考えてしまうという一面がないでしょうか。100人いたら1人くらいは悪いことを考える人はいるもので、なかなかゼロにはなりません。

 しかしそのために残りの99人に必要以上のコンプライアンス教育を受けさせるより、「もっとやろう」の理念の実現に向かわせたほうが生産的です。結果的には悪い人も居づらくなって去っていくのではないでしょうか。


4 今の時代ならではの局面によるメリット

 「理念経営の会社全体としての5大メリット」以外にも、今の時代ならではとも言える局面によるメリットもあります。

■理念経営の局面におけるメリット

 (7).変化に強い
 (8).逆境に強い

 ビジネスの環境は刻々と変化しており、そのスピードは一昔前とは比較にならないほどです。世の中も、市場も、競合も、顧客も変化し続けているのです。

 変化に応えていくためには、日本企業は従来の組織の在り方を見直す必要があります。

 上意下達では、いちいち上に判断を仰がなければなりません。それでは変化のスピードに対応できなくなります。日常の判断は基本的に現場に委ねるのです。経営理念を明確にして、現場の一人ひとりがその場で判断できるレベルの行動規準を用意すれば可能です。

 変化が激しいということは、さまざまな要因によって経営上の危機に直面する可能性も高くなってきます。例えば国内の競合だけを見ていればよかったものが、思いがけない外資企業が大量の資金を携えて一気に参入してくるかもしれないのです。

 あるいは東日本大震災のような自然災害に、突然襲われるかもしれません。実際、震災によって長年成長してきた企業が社屋、工場もろとも失ったケースもたくさんあったようです。

 そうした中にあっても復活を遂げた企業には、無骨に理念経営を推進してきた企業が多かったようです。

 会社が危ないとなったら、船が沈まないうちに脱出しようと考えるのがふつうです。でも今の会社が自分に合っていて、本気で目指している経営理念に共感して、これまでやりがいを感じながら、共に楽しく働けていたらどうでしょう。

 社長から「今は苦しいけれど、必ず立て直してみせる。力を貸してほしい」と言われたら、去ることをちゅうちょする従業員も多いはず。

 会社は社長1人が頑張ったところで立て直せるものではありません。逆境のときこそ、それまで経営者がどれだけ従業員とともに歩んできたかが試されるのです。


5 理念経営を追求した結果としてのメリット

 先にご紹介した5大メリットの中にも、ブランディングなど長期的なメリットもありますが、理念経営を追求しレベルアップしていけばいくほど高まっていくことがあります。

■理念経営の長期的視点でのメリット

 (9).会社や自分の仕事に誇りを感じられる
 (10).理念に共感する誰もが幸せになり、会社も永続する

 会社が実現を目指す理念に従業員一人ひとりが共感し、ブレることなく社外に向けて体現しながら追求していく。すると理念に共感して支持してくれるお客様が次第に広がって、日々手応えややりがいを感じられるはずです。

 さらには地域や社会からもその存在価値を認めてもらえるようになれば、この会社の一員として働く人全員にとって、会社や自分の仕事に誇りを感じられるようになるのです。

 こうした循環がうまく回り、関わる全員がさらに理念の実現に向けて上を目指していけば、自ずと業績にもつながり、物心両面で豊かになれることでしょう。「ずっと存在してさらによい会社になってね」と関わる人や社会から期待され、会社は永続していくのです。

 なんだかんだで、5大メリットに加えて全部で10のメリットを挙げることになりましたが、他にもまだあるのかもしれません。


6 働く側から見た理念経営のメリットを整理すると

 前回と今回の冒頭で「経営トップならではの理念経営のメリット」についてまとめましたので、ここで「働く側(従業員)から見た理念経営のメリット」についてもまとめておきましょう。

■働く側(従業員)から見た理念経営のメリット

 1. 多様な考え方の会社の中から選べる
 2. 目的や価値観が近いので働いていてストレスが少ない
 3. 自分で判断、行動できて、手ごたえとなって返ってくる
 4. 仲間と共に同じ方向性に向かって切磋琢磨できる
 5. やるべきことが明確で、やれば褒めてもらえる(待遇も上がる)
 6. 結果、仕事にやりがいや誇りを感じられる
 7. 仕事で成長を感じられる
 8. 合わない大手企業に入るより出世もできる

 「1. 多様な考え方の会社の中から選べる」は、各社が“本気で”目指す理念を明確に掲げるという前提が必要なのですが、自分に合った会社を選べるという選択肢があるのは幸せなことです。

 次の「2. 目的や価値観が近いので働いていてストレスが少ない」は、毎日長い時間を職場で過ごすことを思えば、かなり重要なポイントかもしれません。

 根本的な価値観において合わないことを会社や上司から要求されることがありません。職場の仲間も根本的な価値観で近い人ばかり。要求されるのは合う方向でのことなので、前向きに頑張れます。

 理念の実現に向けた行動規準が明確だと、「3. 自分で判断、行動できて、手ごたえとなって返ってくる」「4. 仲間と共に同じ方向性に向かって切磋琢磨できる」。

 最初は面倒臭いと感じるかもしれませんが、自分の考えと合う方向でトライした結果が返ってくると、良い結果なら次も頑張ろうと思えるし、悪ければやり方を変えてもう一度やってみようと前向きに思えるものです。

 「5. やるべきことが明確で、やれば褒めてもらえる」のであれば、さらにやる気も増すでしょう。評価の仕組みも整っていて「待遇も上がる」ならなおさらです。以上の「6. 結果、仕事にやりがいや誇りを感じられる」「7. 仕事で成長を感じられる」ことでしょう。

 目先の待遇に釣られて自分に合わない大手企業に入るよりも、合う会社に入ったほうが評価もされやすく、「8. 合わない大手企業に入るより出世もできる」かもしれないのです。


7 一方、理念経営にとっての大いなる課題とは

 これまで私のコラムを読んできて、「理念経営は本当にそんなにいいことずくめなのか。逆にデメリットや課題はないのか」と思われていたみなさん。デメリットと呼ぶべきかどうか分かりませんが、理念経営の実現には大いなる課題があります。

 一言で言えば、「理念経営にはパワーと時間が掛かる」ということです。パワーは「強い意志」、時間は「地道な努力」と言い換えてもいいかもしれません。

 他にも実現していくにはそれなりのノウハウや制度・仕組みづくりが必要ですが、本で勉強するなり、外部のコンサルティング会社に支援してもらうこともできます。

 「強い意志」とはまずトップである経営者の「強い意志」です。理念経営を“本気で”推進したいのか、し続けたいのかどうか。

 第1回の冒頭でも取り上げたように、理念経営という言葉に違和感があるのであれば、この会社を通して「何を大切にしながら、何を目指したいのか」で構いません。やりたいことを明確にして迷いをなくし、まい進していきたいのかどうか。人生を終えるときに、自分がやりたかったことがやれたと思いたいのかどうか。

 理念経営を推進したいのだと決まれば、その中身「何を大切にしながら、何を目指したいのか」を毎日しつこく従業員に語り続けることです。

 彼らに伝わるようにさまざまな角度から例示することも必要ですが、最も大切なのは語り続けることです。

 毎日同じ話でもいいのです。話をしなくなると、従業員は「あれ、社長はそれほど本気じゃなかったのかな」「今日はまた違う話をしている。方針が変わったのかな」と本気にしなくなってしまうからです。

 例えば公共交通機関を担う会社の社長が、「安全も時間厳守も両方大事だぞ。ただし最後の最後は安全だぞ」と毎日口酸っぱく言っていたらどうでしょう。聞いていた運転手は「また社長が同じ話をしてる。耳にタコだ」と思うかもしれません。

 でも、耳にタコができるくらいでいいのです。そこでようやくある日自ら運転中に突然ぎりぎりの選択を迫られたときに、彼は迷わずにブレーキを踏めるのです。社長は自分でブレーキを踏めませんから。

 「地道な努力」とは目指す理念を全社で共有し、実現に向けて行動し続けていくこと。継続するだけでなく、さらに実現レベルを高めていくことです。

 理念とは永遠の理想、理念の追求に終わりなどありません。とにもかくにも続けることです。

 読者のみなさんは、プライベートで1年以上続けている習慣があるでしょうか。私は講演のたびに参加者の方に聞くのですが、なかなか思いつかないようです。継続は力なりと分かっていても、続けられないのが人間です。

 続けていることがあるという人に「ではなぜ続けられていると思いますか」と質問すると、だいたい「楽しいから」という答えが返ってきます。トレーニングやダイエットなどもプロセスは苦しくても、その先にある世界が楽しいから続くのだと。

 そう、人はプライベートでさえも楽しくないと続けられないのです。ましてや仕事となると継続するのはなかなか大変なのです。

 仕事を楽しくして続けるための一番の方法は、「周りが認めてあげる、褒めてあげること」です。

 「愛の反対は無関心である」という言葉がありますが、何かに取り組んでも周りが反応してくれないと、二度とやりたいと思わないでしょう。いいなと思ったら心から褒めてあげる。

 問題があっても(それは本人もよく分かっていることが多いので)取り組んだことを褒めてあげた上で、次も頑張ろうと声を掛けてあげる。これだけでも仕事は少し楽しくなります。

 認めてくれる相手が、赤の他人のお客様だったらなおさらでしょうが、お客様に直接接しない部署なら、仲間や上司が積極的に認めてあげるのです。

 まずは一人ひとりが自ら考え、判断して行動することと、互いが認め合う風土づくりが必要です。表彰制度などもうまく導入すれば浸透しやすくなるでしょう。

 こうして継続できたとして、次は実現レベルを高めていくのです。しかし人間は何事にも飽きてしまうもの。理念実現への取り組みも、始めた当初は盛り上がっていたはずなのに、やがてマンネリが訪れる。

 飽きさせない、マンネリにさせないためには、常に上向きにベクトルを保つ必要があります。ある程度上向きのベクトルを維持して、ようやく継続しながら少しずつ高みを目指していけるという感じです。

 これには定期的に成功・失敗体験を共有したり、もっと良い方法をみんなで考えるといった場が助けになります。理念の実現への取り組みを正式に評価する人事評価制度の見直しなども必要でしょう。

 今回も最後までお読みいただきありがとうございました。2回にわたって「理念経営って何がいいのですか?」というホンネの疑問に答えてきました。

 理念経営の良い点(メリット)について、全体として、経営者の視点、働く側(従業員)の視点から整理してみました。また最後に理念経営を推進していく上での大いなる課題についても触れました。次回は新たなるホンネの疑問にお答えします。


(著作:ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田 斉紀)
※上記は、某金融機関の法人会員向けに執筆した内容を一部改編したものです。本文中に特別なことわりがない限り、2020年6月時点のものであり、将来変更される可能性があります。※転載される場合は著者名とコラムタイトルを必ず明記ください。

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