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■第6回 「高プロ」を選べる人だけがロボット・AIに勝てる!?

1 「高度プロフェッショナル制度」の思想は“時間”ではなく“成果”

「働き方改革」の一環として「裁量労働制」と「高度プロフェッショナル制度」が注目されています。

 ここで両制度についての詳しい経緯を書くとそれだけで数ページになりますし、ご存じの方には冗長でしょうから割愛します。振り返りたい方はニュースサイトで検索してみてください。

 とはいうものの、「裁量労働制」と「高度プロフェッショナル制度」(以下、高プロ)の違いについてだけは整理しておきましょう。

 「裁量労働制」は【みなし時間を定めてそこまでは時間で縛らないものの、超えればその分は残業代として一般と同じように支払い、休日休暇や休憩の規定も労働基準法にのっとる】という制度です。

 片や「高プロ」は同じ裁量労働制ながら、【 】でくくった部分の縛りがありません。簡単に言えば「あなたに担当してもらう業務の報酬はいくらです。時間も縛りませんが、残業代や休日出勤代もありません」という仕組みなのです。

 読者のみなさんの多くはこう考えているでしょうか。「施行はもう避けられないだろうけれど、当面対象となるのは平均よりかなり高収入の人だし、対象業務も限られている。自分にはしばらく関係ないだろう」と。本当にそうでしょうか。

 私は「高プロ」が読者のみなさん全員にとって、近い将来に確実に関わってくると予測しています。ということで、「武田斉紀の『組織や仕事のあるある問題、こうして解決』の第6回のテーマは「高プロ」です。

 タイトルにした『「高プロ」を選べる人だけがロボットやAIに勝てる!?』の意味は、後半で明らかにしていきます。

 そもそも、なぜ野党がかみついたのか。理由は2つでしょう。1つは私も今予測したようにいずれ年収制限がなし崩しに下げられていき、労働者の多くが対象になるのではないかという懸念です。

 もう1つは報酬に対する根本的な考え方が覆されることへの危惧です。後者については労使問題の歴史を思えば、野党にとってどうしても譲ることのできない大きなとりでだったのです。

 従来の考え方は、労働者とは雇用者によって働かされ搾取される存在であり、せめて「報酬は労働者が提供した“時間”に対して払われるべきだ」という思想です。対して「高プロ」の思想は、「報酬は契約した“成果(業務の完成や完成度)”をもって支払われるべきだ」です。

 労働時間に応じた報酬という従来の根本ルールを無視した「高プロ」が導入されれば、雇用者は労働者を決まった報酬で限りなく働かせようとするだろう。そうなれば労働時間は青天井となってしまうに違いないと。「残業代ゼロ法案」と呼ぶゆえんです。

 それでも「報酬は“時間”ではなく“成果”に対して」という流れは、日本企業がグローバル競争を強いられるようになった今となっては、もはや避けられないでしょう。野党も分かっていながら対案を示せないまま先延ばしを図っているように見えます。

 問題の先延ばしは、解決を遅らせて競争力を失うだけです。

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