末梢神経障害による慢性疼痛など過敏な状態では表皮内神経線維密度が減少する

北海道のDNMコンプリーター、理学療法士の竹沢です。

今回の記事は

末梢神経障害による慢性疼痛など過敏な状態では表皮内神経線維密度が減少する

といった内容です。


DNMで行うスキンストレッチだけでなく、
様々な徒手療法で触れるであろう皮膚。


痛みを抱えている方の皮膚でどのようなことが起きているのか

なぜ優しく触れなければならないのか?

なぜ強く押してはいけないのか?


色々な理由はありますが、その一つの要素としてこの記事を参考にしていただければと思います。

身体に触れる職業であれば
これらの知識を知っていて損はないかと思います。


報告1 感覚神経障害における密度

パンチ皮膚生検によって得られた皮膚の切片における表皮内神経線維(IENFD)密度を定量化し、年齢を一致させた対照被験者と比較して、痛みを伴う感覚神経障害の患者で有意に減少することを発見しました。
Intraepidermal nerve fiber density in patients with painful sensory neuropathy.Neurology.March 01, 1997


報告2 外側大腿皮神経の圧迫における密度

感覚異常性大腿痛は、外側大腿皮神経(LFCN)の圧迫によって引き起こされる限局性神経障害です。この病気は、神経生理学的または画像検査で評価するのが難しい場合があります。
感覚異常性大腿痛の臨床的疑いで神経筋クリニックに来院し、表皮内神経線維密度(IENFD)評価による皮膚生検を受けた5人の患者を調査しました。

発症時の平均年齢は37.2(範囲21-59)歳でした。4人の女性と1人の男性がいました。2人は肥満、2人はタイトなジーンズを着用し、1人は軽度の糖尿病でした。IENFDは、5人の患者すべての症候性近位大腿部で減少し、2人の患者の無症候性大腿部でも減少しました。4人の患者の遠位脚では正常でした。

感覚異常性大腿痛は、小さな表皮内神経線維の喪失に関連しています。
Skin biopsy in assessing meralgia paresthetica.Arada Wongmek , Susan Shin,Lan Zhou.Muscle Nerve.21 January 2016


報告3 敏感肌における密度

敏感肌は、うずき、灼熱感、緊張感、かゆみ、痛みなどの不快な感覚の発生によって定義されます。
敏感肌の患者が説明する痛みとそう痒症は、神経障害性の要素に対応します。

敏感肌の病態生理学に関するある研究では、特にペプチド作動性C線維の表皮内神経線維密度が、敏感肌群で低かったことが示されました。
最近の研究では、敏感肌の患者の熱痛検出しきい値の変更が示されました。これらすべての結果は、C線維の損傷が敏感肌の説明に役立つ可能性があることを示しています。

この仮説は、ケラチノサイトの役割、一過性受容器電位チャネル、血管系または環境要因のような他の説明を排除するものではありません。それにもかかわらず、敏感肌の発達における神経系の役割は重要であり、増大する証拠がこの仮説を支持しています。
Sensitive skin is a neuropathic disorder.Flavien Huet,Laurent Misery.26 June 2019. 


報告4 複合性局所疼痛症候群I型における密度

目的は、複合性局所疼痛症候群I型(CRPS-I)患者と性別および年齢を一致させた健康な対照群の同じ皮膚領域の熱感受性に関連して表皮内神経線維密度(IENFD)を評価することでした。

IENFDは、8人のCRPS-I患者のCRPSの影響を受けた四肢と対側の肢、および8人の性別と年齢が一致する健康な対照(HC)の同等の部位からの皮膚生検で調査されました。

熱閾値(冷/温検出、冷痛および熱痛検出)を、影響を受けた四肢、対応する対側四肢、およびHCの同等の四肢で評価し、参加者は、静的熱に対する冷/熱および痛みの強度を評価しました。刺激(5°Cおよび40°C)。

IENFDは、CRPS-I患者の罹患肢と対側肢の両方でHCよりも有意に低かったが、IENFDは患者の罹患肢と対側肢の間で差がなかった。影響を受けたCRPS-I肢の熱痛閾値は、HCよりも低かったが、他のすべての熱閾値は両方のグループで類似していた。CRPS-I患者は、冷刺激を患肢でより冷たく、より痛みを伴うと評価し、温かい刺激をHCよりも両側でより熱く評価しました。
Bilaterally Reduced Intraepidermal Nerve Fiber Density in Unilateral CRPS-I. 22 November 2017


報告5 線維筋痛症患者における密度

線維筋痛症(FM)は、最も一般的な慢性疼痛症候群の1つです。さまざまな発病メカニズムが関係しているが、証明されているものはありません。

私たちの範囲は、痛みを伴う小繊維感覚神経障害(SFSN)の患者で観察されたように、FM患者の皮膚で表皮内神経線維密度(IENFD)が低下しているかどうかを判断することでした。

ACR 2010基準に従って診断された29〜76歳(平均:52.5)の46人のFM患者(男性5人と女性41人)、および34人の対照(女性18人と男性16人)を前向きに調査しました。 19〜84歳(平均:31.7)。
IENFDは公開されたガイドラインを使用して測定され、免疫マーカーは免疫細胞化学的に求められました。30人のFM患者において、痛みの強さは、神経因性疼痛について検証された尺度である神経因性疼痛症状インベントリー(NPSI)で評価されました。

46人中15人(32.6%)のFM患者は、健康な対照[2.8-11.5繊維/ mm(平均:7.35、SD)と比較してIENFD が減少しました[0.6-12.5繊維/ mm(平均:4.83 SD:2.5)]。
NPSIスコアとIENFDの間に有意な相関は見られませんでした。FMとコントロールの間で、ランゲルハンス細胞、表皮の主要な抗原提示細胞(APC)、またはIL-6染色に違いは見られませんでした。IENFDは、別の自己免疫疾患も患っているFM患者のサブセットでも同様に減少しました。
Reduction of Intraepidermal Nerve Fiber Density (IENFD) in the skin biopsies of patients with fibromyalgia: a controlled study.September 27, 2014


報告6 線維筋痛症の重症度と密度の関連について

FMSの女性117人が、神経学的検査、質問票評価、神経生理学的評価、および小繊維検査を受けました。
皮膚パンチ生検、角膜共焦点顕微鏡、マイクロニューログラフィー、C触覚求心路を含む定量的感覚検査、および痛みに関連する誘発電位。
データは、大うつ病性障害と慢性の広範囲にわたる痛み(MD-P)の女性および健康な女性のデータと比較されました。

表皮内神経線維密度(IENFD)は、FMS患者の63%の異なる生検部位で減少しました。
FMSでは、皮膚神経支配の4つのパターンが見つかりました。
正常、遠位で減少、近位で減少、および遠位と近位の両方で減少(それぞれコントロールと比較して)。

マイクロニューログラフィーは、FMS患者における1B線維の自発的活動および機械的感作に加えて、1A線維における低周波刺激時の伝導速度の初期活動依存性加速を明らかにした。
FMS患者は、コントロールと比較して温かさの検出閾値が高く、C触覚求心性障害があり、疼痛関連誘発電位の振幅が減少していました。

正常な皮膚神経支配を伴うFMS患者と比較して、一般的なIENFDの低下を伴う患者は、痛みによる痛みの強度と障害が高く、病気の負担が大きく、刺すような痛みと知覚異常が多く、不安が多かった。一般化されたIENFD減少を伴うFMS患者は、角膜神経線維密度および長さも低かった。
Reduction of skin innervation is associated with a severe fibromyalgia phenotype.03 August 2019.


◯結論

上記のことから痛みとIENFDの密度には関連性があり、
症状の程度が大きければ密度はその分減少する可能性があります。


しかし報告5では、線維筋痛症患者46人中15人でしかIENFDの減少は確認されていません。
報告6も117人の線維筋痛症患者のうち63%で減少するという結果でした。


線維筋痛症では末梢神経の障害だけでなく、
精神的ストレスによる中枢性感作の影響もあるためそれが結果として出たのだと考えられます。


ということはIENFDは末梢神経障害があると減少するのか?


調べてみると上記の報告もそうですが、
末梢神経障害を対象にした報告では「◯人中◯人で減少した」といった報告が少ないため、絶対にそうとは言い切れない状態です。

「密度は減少した」と言い切ってしまう報告が多いため
私の予想の範疇を出ないですが、

報告2では「肥満、タイトなデニムを履いている、軽度な糖尿病の5人中5人でIENFDの減少が確認」されており、比較的軽めの末梢神経障害でも減少するようです。
そのため、可能性としては考えられないことではないのかなとも思います。




他にも、報告2の

「タイトなデニム程度の軽い圧迫でも密度が減少する」ということから、

強いマッサージや筋◯マニピュレーションなどの強刺激による手技でも
IENFDの密度が減ってしまい痛みを感じやすくなってしまうなど可能性としてはありそうです。



なぜ優しく触れなければならないのか?

なぜ強い刺激はいけないのか?



これらを大切にしなければいけない一つの要素になるかと思います。



では、どうすればその密度が向上するのか。

密度が減少することで痛みの程度が強くなるのであれば、逆に密度を向上させることで痛みを弱くすることも可能な気がします。

これについては次回の記事で投稿できればと思います。


◯最後に

痛みや過敏性とIENFDの関連が高いとはいえ、
先ほども書いた通り痛みは末梢神経による影響だけではありません。

痛みは相手の個人的で主観的なものです。あらゆるコンテキストが影響します。

痛みについてはDNMのPVレッスンにて詳しく説明しておりますので、
以下のページを確認いただければと思います。

きっと皆さんの悩み、期待に応えてくれるかと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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