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【読書感想】熊谷達也『邂逅の森』

竹竿

2018/10/13 初めて読む本、読了。

熊谷達也『邂逅の森』

時代は大正。秋田マタギの富治の生き様を描いた作品。秋田にもマタギにも縁がない上に、かなりの長編なので集中力が持つか不安だったけど、物凄い勢いで貪るように読んだ。

まるで自分も雪山に居るかのように錯覚を起こすほどに卓越した描写力。富治が山にいる時は息を潜め、富治が里に下りて女を抱けば解き放たれたような興奮を覚えた。

狩猟シーンと同量かそれ以上に、性や性慣習について描かれている。昔、日本が性に寛容だった時代、もちろん搾取された女性は多いと思うが、ある意味では正常だったのではないだろうか。現代は性情報が溢れ、避妊具を使って快楽としての性交を行える時代になったのに、変に清潔で、間違いは許されない。 

『邂逅の森』で、富治が孕ませた子供を他の男が育てるシーンがある。その何年後、今度は富治がどこの男の種か分からない子供を育てることになる。ここの富治の逡巡が本当によかった。富治が妻としたイクも快楽に溺れた訳ありの女だが、彼女が富治と出会って変わっていくところと、変わらないところが同じ女として読んでいて小気味よかった。

性のことばかり書いているので、ここからは山の神様について。

山には神様がいる。だからマタギ達は山に入る前は女を断って、水垢離して、欲から意識を離す。山の獣を狩って生きさせてもらう。その敬意と感謝の現れが山の神様なのだと私は思う。

最後の一行を読み終えたら、涙が零れてきて焦った。感動とは違う。でも確実に心は揺さぶられた。大切な人が居るから帰りたい。毎日帰り続けた場所が先祖代々の土地になる。土着文化も捨てたもんじゃない。

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