絵日記: 8月19日 マリモ編
休みを取ったら、絶対に温泉に行ってやると決めていた。
本当は、札幌函館方面の虎杖浜温泉に行きたかったが、アレが収束しきっていないため、反対方面の温泉を選ぶことにした。今回は阿寒に決めた。何度も阿寒には行っているが久々に行くのも良い。
どうせ車は空調が効き快適ドライブが約束されているので、ウキウキで出かけたものの、阿寒湖に到着してドアを開けた瞬間後悔した。空は青く晴れ渡り太陽がサンサンサンサンと降り注ぎ頭皮をあぶり焼きにした。
阿寒に着いたらあと15分で遊覧船が出るところだったので、乗ることにする。それにしても暑い。こういう時はアイスだ。ちょっと歩いたところにあるローソンでアイスの実(梨)を購入し、船の中に持ち込んだ。
アイスの実、旨…!
アイスの実の良い所は溶けてしまっても袋の中にアイスの残骸が溜まるだけで、最悪ぬるいジュースだと割り切ってススればいい所だ。棒アイスやソフト系だと手から足元からビタビタに汚すことになる。
遊覧船の客は平常時であれば中国や韓国、ロシア方面のお客さんが多いと思われるが、今回は他国籍の客は1家族しかいなかった。そもそも11名しか乗っていない。2階建ての遊覧船の1階客室には客は乗っておらず、端的に言えばガラガラだった。デッキも席も選び放題・立ち歩き放題なので客的には最高だが、経営的には困るだろうな。
水だ、これは良い水だ・・・。
さて、私は、マリモを見に行く。
マリモとは丸くなっている藻である。阿寒に着くと土産屋で瓶に入ったマリモを店先で売っているのがすぐ目に入り、強めのネタバレを浴びた気になるが、あれらは本物ではなくて手で丸めたものである。
マリモは地味だが日本の特別天然記念物であり、あの華があるイリオモテヤマネコや屋久島スギ原生林などと肩を張っているのだという。がんばれマリモ。さらにまん丸くなるマリモの群生地は世界でもここだけらしい。すごいぞマリモ。これからも元気に生き続けて欲しい。
阿寒湖には湖上にいくつか島があり、その中で「チュウルイ島」という島に唯一天然マリモが観察できる展示観察センターがある。このセンターへは湖上からしか行けないので、大体の場合は今回のように遊覧船に乗るかモーターボートなどをチャーターするしかない。
チュウルイ島に近づけば近づくほど湖水が翡翠色になる。
島に着くと、そうだな!という風貌のゆるキャラが導いてくれる。かわいいね。
観察センターでの滞在は15分と決まっているのでゆっくりもできないが、そもそもそこまで展示は多くない。「ハ イ!これがマリモです」という展示内容でかなりシンプルではあるが、船でしか行けない湖上のひっそりした島に行き、丸い藻のためだけに建てられた建造物で丸い藻を観る、ということが非日常的で良い。
神秘的な雰囲気すらある。
もしも急に文明が滅び、建物とマリモだけがそこに残された際には、長い時を超え新文明の人間がそこを発見し貴重な神殿だと思う可能性もある。
旧文明では丸い藻に祈りをささげ崇め奉っていたのではないか、と唱える学者も現れるかもしれない。「旧文明を守る会の人」たちはこぞって丸い藻と旧文明人の関わりを研究し、藻を模した絵やプラスチックで出来た偶像が出土するごとに、丸い藻の信仰についての確信を得ていく。
そして、とうとう人の形を得た藻のオブジェが出土された時にはもう祭壇などを作り、新たな伝説として新文明で語り継がれることだろう。
そういうことを思いながら、帰りの船で湖を観ていた。
船を降りると売店のおじさんの「マリモソフト!マリモソフトはどうですか!あなたが夢に見たマリモソフト!」という売り込みの声を聞いた。売れたかどうかは見ていない。
アイスの実のようなマリモアイスだったら買ってた。メロンソーダ味とか爽やかで良さそうだ。