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怪談マンスリーコンテスト・5月結果発表

最恐賞「タケウチさん」井川林檎
佳作 「いれんちが開いたら」丸太町小川
   「かぜにあう」卯月若苗
   「閃光の街」望月擁

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総評コメント

 今回のお題は「土地に纏わる怖い話」。全国的な外出自粛の影響か、先月の2倍近い、過去最高の応募数となり嬉しい悲鳴でした。皆様、たくさんのご投稿をありがとうございました。
 「土地」という範囲の広いお題だったせいもあり、やはり読後にこの話のテーマは?と聞かれると、「土地」というより別の何かのほうがしっくりくるな、というような作品が正直多かったです。もっとも掠っていないわけでもないので、応募の基準は満たしています。しかし全体に良作揃いだったこともあり、今回はより「土地」の色濃い作品を選ばせて頂きました。

 最恐賞井川林檎「タケウチさん」。老人ホームの、同じ集落出身の入居者に共通する奇異な特徴から始まる怪談。因果をかなりはっきり想像できるまで書ききっているので、読み手の好みを選ぶ、賛否両論ある作品かと思いますが、タイトルにもなっている「タケウチさん」という妙な具体性が不気味さを醸し、インパクト、迫力、怪談としての読み応えを評価し最恐賞といたしました。
 佳作は、「いれんちが開いたら」丸太町小川「かぜにあう」卯月若苗「閃光の町」望月擁の3作を選出。1作目「いれんちが開いたら」はある集落の秋祭りでの怪事。神社のある山の頂上付近を土地の言葉で「いれんち」と言い、「普段は閉じているが、開くときがある」という。風土色の濃い話と、ある意味救いのない結びが怖い正統派怪談。2作目「かぜにあう」は民俗学的な考察の中に、怪異をそっと忍ばせた異色の作品。長野県と鹿児島県という離れた土地にそれぞれ伝わる「かぜにあう」という言葉。しかしながら言葉の意味と伝承はまるで異なっている。だが、やはり共通点があり…という最後の肝が恐怖になっている。これもまた「読ませる」怪談でした。3作目「閃光の街」は土地に残留する死者の思念に纏わる怖い話。明示はしていないものの、原爆の犠牲者の残留思念であることがわかります。最恐賞佳作4作の中でももっとも細やかに体験者の心情が表現しており、そこに深いリアリティと読後感が生まれ、生きた怪談となっていました。
 最終選考には、「駐車場の音」ふうらい牡丹、「安すぎる土地」天堂朱雀、「墓になった実家」と「がんでらぼうでら」影絵草子、「大都会の空地」鬼志仁、「自慢の庭」松本エムザ、「熱と埃」藤井博之、「何もない場所。」音隣宗二、「フルーツ盛り」緒方あきら、「沼の上に建つ社宅の話」綾乃 灯伽の10作。どの作品も佳作と遜色ない内容で、それぞれの持ち味を生かせていたと思います。

 今回の作品傾向としては、①土着の風習、土地神に絡む怪談、②戦争などの歴史の爪痕が残る土地の怪談、その場で亡くなった方がいる土地の話、③そこで亡くなったわけではないが、ある土地や場所に対し強い思い入れのある死者が、生者へ強く訴えかけてくる怪談、の3パターンがもっとも多く、地縛(ときに自縛)と言える怪異の数々が寄せられました。死者の無念さや痛みが残る土地は忌み地となり、そのタブーに触れるものに障り、祟りを齎す。それはとても怖ろしいことですが、土地に縛られて動けない、消滅できない魂の哀しみもまた伝わってくる。両方を描くことは難しいですが、恐怖を薄めずにほんのりとセンチメンタルな味わいを出すことに成功している作品もいくつかあり、筆者の意欲を感じました。勿論、怪談としてどう仕上げるか正解はありません。焦点を絞って描き切るのもまたスタイルであり、徹して成功しているお話もあります。聞いた(取材した)話の着地点をどこに持っていくか、読者にどういう後味を残したいかをはっきりと決めて書いていくことが大切です。
 土地と因果は切り離せない要素であるだけに、必要以上に怪異の原因を推察・考察し、披露しすぎるきらいがあります。1000字の怪談ですから、そうした筆者の見解は最後にそっと置く、もしくは読者に委ねるだけでいい場合もあります。原稿の半分以上が考察になってしまうと、怪異は霞み、想像して感じる恐怖が薄くなってしまいます。1000字の中でのバランスも意識するといいでしょう。

 さて、次回のお題は「ペットに纏わる怖い話」。どんな種類のペットでも構いません、ただし現実的な怖い話ではなく、霊的な怪異・解明できない現象という意味での怪談をお寄せください。皆様の力作、お待ちしております!

6月期・募集概要

お題:ペットに纏わる怖い話

原稿:1,000字以内の、未発表の実話怪談。
締切:2020年6月20日24時
結果発表:2020年6月29日

☆最恐賞1名:Amazonギフト3000円を贈呈。※後日、文庫化のチャンスあり!
佳作3名:ご希望の弊社恐怖文庫1冊、贈呈。

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