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怪奇事件を占いで読み解く「幽木武彦の算命学で怪を斬る!」~大久保清連続殺人事件【中編】~

算命学とは、古代中国で生まれ、王家秘伝の軍略として伝承されてきた占術。恐ろしいほどの的中率をもつその占いは、生年月日から導く命式で霊感の有無、時には寿命までわかってしまうという。

本企画は、算命学の占い師・幽木武彦が怪奇な事件・事象・人物を宿命という観点から読み解いていく。

今回の題材は、1971年の大事件「大久保清連続殺人事件」。算命学で紐解いていく大久保清の宿命と、当日の運勢。

先週の「前編」に引き続き、今週は「中編」をお送りする。

「ボクちゃん」の深い闇~1971年、大久保清連続殺人事件【中編】

 今回(連載第三回)のテーマは、稀代の連続強姦魔・大久保清である。

 時は1971年
 最初の殺人を手はじめに、血も涙もない殺人鬼と化した大久保は、わずか41日の間に8人もの女性の尊い命を強奪した。
 前編では、そんな大久保が持って生まれた宿命(命式、人体図)をご紹介した。つづいては、事件の舞台となった1971年の彼の運勢の不思議さを紐解いていこうと思っている。

 だがその前に、どうしても気になる人物がいる。

 西川正勝

 大久保清の事件から20年後。1991年の暮れ、西日本各地で発生した「スナックママ連続殺人事件」の犯人である。

女性落語家まで巻きこんだ凶行

 連続殺人事件の発生は1991年12月24日、クリスマスイブだった。

 当時の世相を見てみよう。
 事件発生翌日の12月25日には、ソビエト社会主義共和国連邦(当時)のゴルバチョフ大統領が辞任をし、米国と長いこと冷戦をくり広げたソビエト連邦が崩壊するという歴史的な大事件が起きている。
 また、ひと月ほど前の11月23日には英国の人気ロックバンド、クイーンのボーカルであるフレディ・マーキュリーがエイズと闘っていることを公表。
 相撲界では通算1045勝という大記録を達成した横綱、千代の富士が現役を引退し、のちに平成の大横綱・貴乃花となる貴花田が史上最年少で関脇に昇進。相撲界の世代交代を印象づけ、俗に言う「若貴ブーム」がはじまった。

 事件は、そんな時代に起きた。
 凄惨な連続殺人がはじまったのは年の暮れ。島根県松江市のスナックで、最初の犠牲者となる経営者の女性(55歳)が殺される。西川は現金を奪って逃走した。
 翌25日には、兵庫県姫路市のスナックで二人目の女性経営者(45歳)が犠牲に。
 さらに27日には、京都市中京区の女性スナック経営者(55歳)。つづく28日には同じ京都市内のスナックで51歳の女性経営者があえなく惨殺されている。
 京都市内の二つの現場は、300メートルほどしか離れていなかったという。

 犯人逮捕の決め手となったのは、それぞれの現場に残されていた指紋だった。
 西川は4人の女性に殺戮行為を働く以前、殺人や強盗の罪で二回も刑務所に服役している。年の瀬の連続殺人事件で世間を震撼させたのは、二度目に刑務所を出てからわずか二か月後のことであった。

 凶行後、逃亡をはかった西川は1992年1月5日、大阪市内に住む女性落語家Aの自宅にも現れ、現金を強奪した。
 1月7日に逮捕された西川は、女性落語家Aやその後に潜伏した大阪市内のマンションの女性Xさんについて「自分の生い立ちを真剣に聞き、彼女たちが同情までしてくれたことも、これ以上の逃亡をあきらめることにつながった」という意味の供述をしている。

 当時の西川は35歳。
 手にかけた被害者の女性たちはみな、年上の中年女性ばかりだった。

 興味の対象は、つねに中年女性――。
 そこには幼いころ死別した母親への屈折した憧憬が関係していたのではないかと言われている。

亡き母への鬱屈した想い

 西川正勝は1956年(昭和31年)1月14日、鳥取県に四女一男の末っ子として生まれた。
 土木作業員をしていた父親は、冬になると出稼ぎのため山陰を離れるような暮らしだったという。

 つまり、いつもそばにいるのは母親と四人の姉。
 女。女、女、女、女。
 文字どおり西川は、女ばかりの「女系家族」の中で成長したのである。

 そんな西川の心象風景の中に色濃くあったのは、暴力だ。
 父親は母親に暴力をふるい、母親もまた、姉たちに対して体罰も辞さないしつけをした。
 だが母親は、西川がわずか9歳のとき、病気で亡くなってしまう。
 成長途上のそんな大事な時期に、唯一の保護者ともいえる母親を亡くした西川の心の内はいかばかりだったろう。
 そして彼は、中学生のころには早くも窃盗事件などを起こす問題児となり、以後、坂道を転げ落ちるかのようにして無軌道な暮らしへと堕していくのだった。

 そんな西川という男は、いったいどんな宿命のもとに生まれてきたのだろう。

西川正勝の命式

命式西川

 いろいろと特徴のある命式だ。
 だが、そのすべてを紹介することはとてもできない。
 しかしひと言で言うならば、もしも環境さえしっかりとしたものであったなら、まったく違った人生になっていただろう、とても強運なものがある。

 たとえば西川は「印綬格一点破格」という力強い命式だ。

干支

 右から年干支、月干支、日干支。狭義では西川自身は日干「庚」だが、これら宿命6干支を五行に直すと次のようになる。

干支五行

 自分自身が金性で、年干の木性をのぞけば、あとはすべて土性。そして日干の金性と土性の関係は「土生金(どしょうきん。金は土から生まれる)」。年干をのぞくすべての干支から自分が「生じられて」いる。

 こういう命式は「印綬格一点破格」という。周囲の人々から助けられやすくなる宿命だ。
 逆に言うと、自分を助けてくれる者がいなくなるような環境だと、宿命からはずれてしまう。運勢が伸びにくい。
 つまり「両親」の存在はことのほか大事になり、幼い時分に母親を亡くし、父親からの愛情も十分にもらえないまま成長することになった西川の不幸は想像にあまりある。

 間違いなく、持って生まれた宿命のマイナス面を強調してしまうような環境のもとで、西川は育った。
 いろいろと持っている、命式のよい部分を生かせないまま破滅の坂を転がることになった。

 ちなみにそんな西川の命式には、大久保清とよく似ている部分がある
 年柱、月柱、日柱のすべてに金性の自分(庚)を生みだす土性(戊、己)、つまり母親がいる

命式2

 前編でも紹介したが、これは「全支集印(全地生母)」といい、母親の影響がとても大きくなる。自由になれない。どこにいても、なにをしていても母親の存在と無縁ではいられない人生になりやすく、場合によってはマザコン的な気質になることもあるだろう。

 大久保という男はこの命式を持っていた。
 西川もまったく同じだ。

 これだけのことでなにか結論じみたことをみちびこうとするのは危険だし、そのつもりもないが、少なくとも見逃すことはできない共通点であろう。

 そしてもうひとつ。
 くわしくは前編をご覧いただきたいが、西川もまた大久保と同様、瞬間的な狂気におちいりやすい「推逆局」を持っている。

命式3

 さらに西川の場合は「水火の激突(水性の玉堂星と火性の調舒星)」となる「推逆局」だけではない。
 人体図の横線に、攻撃本能をつかさどる牽牛星(金性)を調舒星(火性)が「火剋金」と押さえつけようとする「殺局」も発生している。
 そのため、持って生まれた闘争心を十二分に発揮できなくなりやすい。精神的にいっそう危なっかしく(不安定に)なりやすくもなっている。

命式4

 大久保清にも西川正勝にも「推逆局」と「全支集印(全地生母)」があるのは、もちろん偶然だ。
 こうした特徴を持つ宿命(命式、人体図)だから似たような事件を起こしたのだなどと断言しているわけでは決してない。誤解のないようにお願いしたい。

 だが両者の命式と人体図を比較した私は、なんとも形容しようのない重くるしい気持ちになり、算命学の奇妙さ、不気味さをあらためて感じるのだった。

☞後編へつづく

参考文献:
『昭和四十六年、群馬の春―大久保清の犯罪/筑波昭』(草思社)
『完全自供 殺人魔大久保清vs.捜査官/飯塚訓』(講談社)
『日本凶悪犯罪大全217/犯罪事件研究倶楽部』(イースト・プレス)
『死刑囚200人 最後の言葉/別冊宝島編集部』(宝島社)

(ご注意)
本連載は実際に起きた犯罪事件を扱っており、様々な命式や人体図が出てきますが、それらの命式や人体図を持つ人がすなわち犯罪傾向にあるという意味では全くございません。持って生まれた宿命以上に取り巻く環境が重要であり、運勢は流動的なものです。逆にどんなに立派な宿命を持って生まれたとしても環境が悪ければ宿命は歪んでしまいます。持って生まれた宿命を生かすも殺すもその人次第(環境、生き方)であり、運命は変えられることを教えてくれるのもまた算命学であります。宿命から危機と傾向を知り、よりよく生きるための占術と捉えていただければ幸いです。

著者プロフィール

幽木武彦 Takehiko Yuuki

占術家、怪異蒐集家。算命学、九星気学などを使い、広大なネットのあちこちに占い師として出没。朝から夜中まで占い漬けになりつつ、お客様など、怖い話と縁が深そうな語り部を発掘しては奇妙な怪談に耳を傾ける日々を送る。トラウマ的な恐怖体験は23歳の冬。ある朝起きたら難病患者になっており、24時間で全身が麻痺して絶命しそうになったこと。退院までに、怖い病院で一年半を費やすホラーな青春を送る。中の人、結城武彦が運営しているのは「結城武彦/幽木武彦公式サイト」。







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