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京都に彷徨う怪異が詰まったご当地怪談集第2弾『京都怪談 猿の聲』試し読み

最恐心霊都市
京都裏ガイド

あらすじ・内容

ミヤコに彷徨う怪異が詰まった京都だけのご当地怪談集!

豊臣秀次の霊が、木屋町の飲食店に…

怪奇現象が絶えないK大学

幼い霊が棲む右京区の団地

西陣に開いた異空間への入り口

石清水八幡に出没する謎の鯉女

物の怪が潜む南禅寺

妖し蠢く〈京都〉を舞台にした実話怪談を京都に所縁ある五人の作家が書き下ろす。
・観劇の帰り夜の西陣で見かけた神社で起きた怪異とその後「夜の西陣」(三輪チサ)
・木屋町で見かけた綺麗な女性は…「肖像権」(緑川聖司)
・御所内を夜の散歩中、聞こえた声に誘われたのだが…「京都御所の怪異」(Coco)
・南禅寺で遭遇した奇妙な出来事とは「金地院の亀」(舘松妙)
・元教授に聞いたキャンパス怪異譚「K大学にまつわる話」(田辺青蛙)
――など51話を収録。
ねっとり纏わりつくのは魑魅魍魎、あなたを暗黒の京都へお連れします。

試し読み1話

K大学にまつわる話  田辺青蛙

 京都市内にキャンパスのあるK大学で、以前工学部の教授を務めていたというH先生から聞いた話。

「大学におった頃ね、怖い話好きや言う子がおってね、幾つか聞いたのがあるよ。
 僕はね、お化けは見たことはあるけど、おるかどうかはどっちでもいいというか、考えたくないってタイプかな。
 昔、住んどった下宿がね、元々置屋おきややったとかで、夜になんべんか、三味線と女のするせきの声が聞こえてきたことがあってね、たまらんなあと思ったことあるけど、もうその時点で考えるん止めたもん。

 深夜にね、吉田神社のクスノキの近くで、人間業とは思えないような金切り声が聞こえてくるって聞いたことがある。教養が一緒やったブント(六十年代の安保闘争時にあった、学生達による共産主義者同盟)に入っていた奴がそう言っててね、あれも嘘を言うてるようには思えんかったかな。

 他に学内の怪談ねえ……えーっと、教え子から聞いた話で、二十四時間の実験明けの夜中にちょっと外に出たら、学内を誰も乗ってない自転車がシャーッと走っとったとか。 
 農学部の校舎の辺りで、ウサギをメスでさばいているやばそうな人がおって、警備員呼んで戻ったらそこには青い液体の水溜りだけがあったとか。

 えーっと他に……あとはねえ、時々『ギャー!!』って大きな悲鳴が聞こえるみたいな話があって、噂だと、うちの学校のOBが中央玄関で母親の脳みそをえぐり出して殺した事件が昔あったとかで、その声は犯行時の雄叫おたけびと、母親の断末魔だとか。
 なんか本当に、戦後まもない昭和の頃に、うちの大学の心理学科の卒業生で、就職浪人やった人がね、母親の頭を仏像でガンガン何べんも殴打して殺害してから、長い竹串を何本も目玉から刺して脳を抉った上に、構内で死体を引きずった事件があったんやってね。犯人は小説家になろうと思とったけれど、成果を出せんで、思い詰めるあまり心を病んでしまったそうで。就職先を教授が世話してくれることになったとかいう理由で母親を呼び出して殺害したらしいですよ。逮捕されてから、犯人は拘置所内で自殺しはったらしいね。

 他にも学生運動時代にリンチされた学徒の幽霊が立っとったとか、そういう噂は昔っからあったけどね。僕はそういうのは見たことないけどね。

 そもそも、文学部とかの生徒さんの方が、この手の話は詳しいんと違うかなあ? あっでも、もう一つ思い出した話というか、体験がありました。

――続きは書籍にて

著者紹介

三輪チサ (みわ・ちさ)

福岡県生まれ。大阪府枚方市在住。「ひらかた怪談サークル」主宰。2009年「黒四」で第一回『幽』怪談実話コンテスト大賞を受賞。2010年「捻じれた手」で第五回『幽』怪談文学賞長編部門を受賞、『死者はバスに乗って』と改題しデビュー。

緑川聖司 (みどりかわ・せいじ)

大阪府在住。児童文学作家。2003年『晴れた日は図書館へいこう』でデビュー。主な作品に「本の怪談」「怪談収集家 山岸良介」「絶対に見ぬけない!!」各シリーズ、「炎炎ノ消防隊」ノベライズシリーズなど。

Coco (ここ)

京都府出身。「お化け屋敷 京都怨霊館」「怪談専門のお店 京都怪談商店」代表。怪談師兼ホラープランナー。TikTokのフォロワー数は21万人。SNSの総フォロワー数は30万人を超える。怪談最恐戦2019大阪予選に出場。

舘松 妙 (たてまつ・たえ)

京都市生まれ。京都検定1級合格。複数の大学で仕事をこなし、宗教・歴史を幅広く調査研究。共著に『京都怪談 神隠し』『稲川淳二の怪談冬フェス~幽宴二〇一八』など。

田辺青蛙 (たなべ・せいあ)

京田辺市出身。『生き屏風』で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。著書に『関西怪談』『大阪怪談』『大阪怪談 人斬り』『モルテンおいしいです^q^』など。共著に『京都怪談 神隠し』『読書で離婚を考えた』など。

『京都怪談』第1弾はコチラ▼

『京都怪談 神隠し』

京都に所縁のある作家たちが書き下ろす〈京都〉が舞台の実話怪談集。花房観音、田辺青蛙、朱雀門出の実力派とともに、怪談師として活動する深津さくら、新進気鋭の舘松妙の五名がそれぞれの〈京都の怪〉を披露する。たびたび出没する鬼の目撃例をまとめた怪異譚「鬼の話」、心霊スポットで異形に追いすがられる戦慄「深泥池」、著者自身も巻き込んだ死の連鎖「死神」など洛中洛外の恐怖譚を収録。京都は怨念の土地――令和も続く古都の念は魅惑的に貴方に取り憑くに違いない。

京都を含めた『関西怪談』もあります▼

『関西怪談』田辺青蛙

大阪怪談もどうぞ▼

『大阪怪談』田辺青蛙
第2弾『大阪怪談 人斬り』田辺青蛙


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