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こんなに不気味でいいのかよ!黒木あるじ推薦、気鋭の怪談作家初単著『暗獄怪談 憑かれた話』(鷲羽大介)試し読み、著者コメント

黒木あるじ大推薦!
「こんなに不気味でいいのかよ。この怪談は劇薬だ!」

あらすじ・内容

体験者の壮絶な恐怖を刻みこんだ実話怪談集

あれはいったいなんだったのか――思いもよらぬ不可思議なことは、突然身に降りかかってくるのだ!
黒木あるじ氏推薦のもと登場した気鋭の怪談作家が紡ぐ怪異譚の数々。
・婚約者の両親に見せられたのは自分そっくりの顔をした誰かの写真「永遠の魔女
・幼少の家の玄関には生首がぶら下がっていて、それは…「僕だけの生首
・ナビの案内でたどり着いた場所は…「早く来てよ
・今もなお進行中の怪異、友人の家で皆が見る悪夢の行方…「リアルタイム
――など怒涛の80話を収録。
恐怖に囚われ、暗い監獄の奥へといざなわれ…。

著者コメント

 この本を書き始めて間もなく、私は持病の腰痛が悪化し、入院を余儀なくされた。これまで二度の手術を受け、昨年にはズレていた腰椎をロッドで補強し、ボルトで固定していたが、またしても再発したのである。
 レントゲンを撮ってみて、驚いた。
 背骨を固定する金属のロッドが、ぽっきりと折れていたのである。
 主治医も「あり得ないことではないが、実例は見たことない」と言う始末であった。
 とりあえず埋め込んだ部品はそのまま温存し、炎症を起こした関節に薬を注射することで、なんとか痛みを和らげて退院した。知人の医師が「これ緩和ケアですよ」と驚くほどの鎮痛剤を服用しつつ、ようやく書き上げたのがこの本である。
 怪談を書くというのは、そういうことなのかもしれない。

試し読み1話

タロウちゃん

 ヒサシさんが小学生の頃である。
 同じクラスのジロウくんと仲良くなり、彼の家へ遊びにいった。ジロウくんの家は広い平屋の和風建築で、ふすまで仕切られたたくさんの部屋があり、おもちゃや漫画も豊富で、とても楽しかったそうだ。
 ただ、床の間に飾られている大きな五月人形は、どう見ても歯が生えた赤ちゃんのミイラに鎧よろいかぶと兜を着けたものだった。
 ヒサシさんはそれがとても怖かったが、ジロウくんはまったく気にしていなかったので、「あれ何?」と聞くのもためらわれ、無視することにした。
 帰り際に、ヒサシさんはジロウくんのママに挨拶した。女優さんみたいな美人だったという。

 今日はうちのジロウちゃんと遊んでくれて、ありがとうね。今度はタロウちゃんとも遊んであげてね。ちょっとだけかじるかもしれないけど、怪我は絶対させないから。

 ジロウくんのママにそう言われて、ヒサシさんは自分の家へ全力で走って帰った。お母さんには、友達の家で遊んできたとだけ言って、ミイラ人形のことも、ママの不気味な発言のことも、いっさい言わなかったそうだ。

 それから間もなく、ジロウくんは学校へ来なくなり、しばらくすると先生から「ジロウくんは家庭の都合で転校しました」と聞かされた。
 ただ、ジロウくんが学校へ来なくなる少し前に、同じクラスの男の子が、指を切断する大怪我をしたことがあった気がする、とヒサシさんは言う。怪我をした児童の名前など、くわしいことはまったく記憶に残っていないそうだ。

—了―

◎著者紹介

鷲羽大介 (わしゅう・だいすけ)

174センチ89キロ。右投げ右打ち。「せんだい文学塾」代表。
共著に「江戸怪談を読む」シリーズ『猫の怪』『皿屋敷 幽霊お菊と皿と井戸』、「奥羽怪談」「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズなど。

シリーズ好評既刊

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