朱が呼ぶ 第一章“故郷”
「おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなったから、帰ってきてほしいのよ」
上京し憧れだったライターとしての仕事も軌道にのってきたと思っていたとき、有紗(ありさ)のもとへ母から信じがたい連絡が入る。実家を出てから一度も連絡したこともなければ、番号を教えているわけでもないというのに一体どこから私の電話番号なんて手に入れたのだろうか。
長年にわたって自分を縛り続けた母に嫌気がさし、有紗はもう一生帰らないという想いで実家を出てきた。しかし、それを手助けしてくれた祖父母の訃報にはショックを