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財政危機から10年、ギリシャの医療はどうなったか

2009年のギリシャ財政危機から、10年が経つ。契機は、2009年10月4日に行われたギリシャ総選挙である。第1党が、中道右派の新民主主義党から左派の全ギリシャ社会主義運動党に変わって政権交代し、パパンドレウ政権が誕生した。パパンドレウ政権は、前政権が財政赤字を過少に公表していたことを暴露したが、これでギリシャ国債の信用を失い、財政危機に陥った。

財政危機後、金融支援を受けたギリシャは、債権者の求めに応じて緊縮財政策を講じざるを得なくなった。付加価値税の増税、公務員給与の削減、年金給付の削減などが講じられる中、医療への政府支出も削減された。

緊縮財政策によって、ギリシャの医療はどうなったか。

高価な医薬品を使えず、治る病気も治せなくなったり、ベッド不足で入院待ちをする患者が列をなす、というようにギリシャの医療はすさんでしまったのかというと、そう単純ではなかった。

筆者は、10月初旬に、ギリシャの医療について現地調査に赴いた。財政危機から10年経つが、ストやデモは相変わらずである。滞在中にも、冒頭の写真のように、国会議事堂前でのデモに遭遇したし、ストが実施された公共交通機関が全面運休になることにも直面した。

ただ、ギリシャの医療は、予算の制約によるシワ寄せを食い止めようと、日本では試みるも実行できていない医療改革が、実行されていた。

財政危機後に、入院医療の包括払い化や電子処方箋などのIT化を進めた。これらは、日本でも試みられるも、まだ貫徹できていない改革である。医療のIT化は、ギリシャの方が進んでいる面があるといってよい。また、過剰投薬を防ぐ処方制限や製薬会社の超過利潤の圧縮といった薬剤費の改革にも着手していた。

日本も、財政危機後のギリシャの医療を他山の石として、今後の医療を考えてみるべきではないか。


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