日経181230

「エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10」公表

 本日の日本経済新聞読書面に「経済図書ベスト10」が掲載されました。この1年(厳密にいえば2017年12月~2018年11月)に刊行された経済図書の中から選ばれた良書。私も選者の1人として順位をつけました。

 毎年末恒例のこのランキング。今年は上位に、著者の長年にわたる研究や経験の集大成ともいえる力作が並ぶのが特徴といえるでしょう。
 私がベスト10に推した書では、1位、5位、6位、8位と4作がベスト10に入りました。
 8位に入った伊神満著『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』には、拙評が掲載されました(冒頭の画像を参照)。ちなみに、それ以外に私が推した書の拙評は下記の通りです。

ジャン・ティロール著『良き社会のための経済学』日本経済新聞出版社
 著者は、市場と経済学者に対する不信を払拭すべく、経済学を正しく活用して共通善を実現するかに腐心している。政治的意見を表明する学者は、何かとレッテルを貼られる。聴衆は、議論の内容をのべつ忘れてしまい、自分の政治的傾向から結論を下すことが多いから、自分と同じ側の学者ならその意見を好ましく感じ、反対の側なら嫌いだと感じる。学者の仕事は、既に存在する知識を疑って、新たな知識を想像することだが、レッテル貼りによって、学者の真意は伝わらなくなってしまう。レッテル貼りは、経済学はコンセンサスを形成できない学問との印象を与えるが、実のところ、優秀な経済学者の意見は多くの点で一致している、と著者が強調している点で、経済学の真意を伝えている。

竹中平蔵・大竹文雄著『経済学は役に立ちますか?』東京書籍
 経済学が役立つ場面が、本書にはちりばめられている。その真骨頂が、価格メカニズムである。「価格」を用いて、ある資源を誰が利用すべきかを決めることで望ましい配分が実現する。もしそうならないなら、それは価格調整を機能させない阻害要因が存在するからである。タクシー業界などの例を交えて、日本において、価格競争に対する忌避感が強いことをあぶり出している。

 ちなみに、昨年私が推した書は1位、2位、4位、6位、8位に入りました。


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