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練馬区立図書館の問題は委託が本質ではない

  練馬区が最後に残ったとも言える分館を委託に回すのは、実務経験者でもあり司書でもある私から言えばついに来たか…というもの。現状の流れではこれは必然の結末であって、雇用する・されるというところしか見てないなー、というのが率直な感想。 

  いずれの方も私から言わせれば間違っていて、だからこそ噛み合わない。周囲は様々な思惑もあるのだし、同床異夢ということもあるでしょう。 

  私が推測する自治体=雇用側のホンネは、 

コストカットしたい

他部署で応用の効かない事務内容だからどうしても人事上、斜陽部署になる 

民間の活力を活かして…と言えば聞こえがいい 内部の職員も図書館の部署は忌避したいから同意は得られている 

でもそのホンネを出しちゃうと図書館に思い入れのある人達の神経逆撫でするよな 

…ということが、まずあるでしょう。 

  これは実際に自治体の職員の反応を見ているので、容易に想像がつく。やりがいをもってあえてとどまりたい(とは言ってもかなり変人扱いされてしまうようだが)人も、通常の人事体系から逃れられない。結果的にどちらも図書館という部署について、前向きな気持ちになれないでいる。こういう感じに見えました。 

  このことについては基本的に大学でもあまり変わりないでしょうが、大学の場合は学生の利用が一定数見込めるし、有名大学であれば学生が来館する可能性が高くなるので、利用者が多い分、ヤル気も維持しやすいく経験値も得られやすい。 

  こういう状況だと、図書館のありようについて従来の路線から一歩も出ていない中で予算という問題だけが先行し、私から見ると切りやすい部署としての槍玉になっている。現状維持だと、一部のコアな業務以外は素人でも出来るレベル(あるいはそこまでしか委託内容としてしない)なのでどうしても委託という名のコストカットをしたがる。これが、実務経験者からみた委託の本質だと思っています。 

  だから、今回の練馬の問題は非正規に対する扱いというのはあくまで図書館行政という観点からするとあくまで一局面で、今更そこで騒いでも、どうにもならないよ?とも思う。 

  そもそも、申し訳ないがレファレンスの蓄積という部分はアーカイブ化をというシステムにキチンと投資すれば一時的な出費で済む事。私はそのように思うので、そもそもレファレンスと言うものが人間じゃなければダメ、と言う考えにはならない。厳しい言い方をすると、人にやってもらった方が安心できるとか、スマホとか扱えない人達が代行してもらうとか、そういう世代の背景なども絡んでくる。だから、この問題点はあくまでカネに尽きるのです。 

  レファレンスの部分については、実は国レベルや多少譲っても都道府県レベルで蓄積を集約させていく事でもっと省力化できる。だから非正規が雇用の危機と叫んだところで、自分たちの正当性については現状を前提にした価値判断だけではなく、かかっているコスト=人件費を区民が容認できるかどうか、次第でもある。だから正当性と言う点については、あくまでどの選択を区民が支持するかどうか、だ。従ってこの内容についても正しい正しくないではなく、私の視点を述べている、と言うことにとどめてもらいたい。 

 では、どうしたらいいのか?と言うなら私は 

図書館の運営業務を完全に切り離し、財務の扱える図書館用の人材を作り、運営させる 

ことを提案したい。なぜなら、現時点で深刻な問題になっているのは 

図書館で働きたい人の中に財務や経営能力を持つ人はほぼ皆無 

だからだ。経営やカネの事がわからないから、立場が弱くなる。 

 今の館長のポストについている人にしても、 

名ばかり管理職 

と言えるもの。責任者という肩書きであって、かなりその権限は限定的な場合が多い。まず、図書館の業界において私は人事と財務を握って運営する形態を一度も見たことはない。これでは、図書館の環境や意義に通じた人物がいても、肝心の意志決定に参加できないので影響力がどうしても限りが出てくる。 

 ですので、今騒いでいる人達に共感することが全面的とはいかないし、かといって現在の区側の路線についてもビジョンが感じられないので反対。どちらからも恨まれる考え方しかできません。(笑) 

  本当に図書館を万人に利用してもらいたいなら、テクノロジーの進化を見てもこれまで通りな全国共通ということはできないと思います。そして何より重要なのは、 

著作権料を支払わないで先進国と言えない事実 

に多くの人に気づいてもらいたい。非常勤だろうが常勤だろうが、作家さんの権利を軽視している事実を知らないままに権利を主張することに恥ずかしいと思わないの?と言いたいから。無知は怖いですよ。私も含めて。

18.12.20作成 

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